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168 花笠石楠花ー1

 バスキ伯爵家の葬儀などが落ち着いたころには大分時が過ぎており、ロクサーナ様がミンシア様に対して酷い行いをしているという噂は随分と鳴りを潜めているように感じる。

 もちろんロクサーナ様が学院に来ていなかったからと言うのもあるし、ミンシア様自体が空気を読んで自重していたという事もある。

 乗っ取り系ヒロインを目指すミンシア様はシャルル様に狙いを絞ったので、相変わらずアーシェン様やファルク様への接触は続けているようだけれど、シャルル様本人への接触はまだ行っていない。

 もっとも、シャルル様からしても下級生がいきなり接触してきても困るだろうし、むしろ不審人物と警戒する可能性が高い。

 そんな中、アーシェン様がお茶会を開催したいと企画したらしく、男女問わずクラスメイトの何人かを招待する予定だという。

 引っ込み思案なアーシェン様にしては珍しいと思ったが、どうやら友人が少ない事を心配したシャルル様の提案らしく、セッティングはシャルル様が行ってくれるそうなのだが、招待客はアーシェン様が選ぶように言われているらしい。


「ジョセフとあたくしも招待されておりますの」


 機嫌がよさそうに話すエメリア殿下にジョセフ様も頷く。


「アーシェン様の人見知りが少しでも治ればいいのですが、お茶会一回でどうにかなるものなのでしょうか?」


 ゲームでのアーシェン様の人見知りは筋金入りだ。

 だからこそ心を許しているシャルル様とファルク様を取られた時の変貌がすごかったのだが、ロクサーナ様がこうなってしまった以上ゲームはもう破綻していると考えていいだろう。

 そうなるとわたくしのバッドエンドは回避出来ていると考えてもいいのかもしれないのだが、如何せんわたくしには叔父という地雷が存在している。

 あの叔父は何を考えているのかわからない。

 流石にティオル殿下との婚約を破談させるような真似は出来ないだろうが、わたくしを攫って監禁する未来がないとは言い切れない。

 わたくしの代わりになるような誰かがいればいいのだが、今のところは思いつかないのが難点だ。

 ミンシア様が愛人の座を狙っていたのだから、わたくしの代わりに叔父の相手をしてもらうのもいいかもしれない。

 でも彼女はシャルル様の愛人狙いに決めたようだし、今から路線変更は可能だろうか?

 叔父はわたくしが生まれた時から執着しているようだし、それを変えるにはどうしたらいいのだろう。

 ミンシア様は『誘惑のサイケデリック』を熟知していそうだし、叔父の弱み、もしくはなにかしらのルートを変えるための起点を知っているのかもしれない。

 それが何なのかはわからないが、それが叶うのであればあの叔父の興味を移すことができるかもしれない。


「アーシェン様の人見知りは確かに強固なものですが、シャルル様の思惑は別なところにある様ですのよ」

「と、いいますと?」

「今回のお茶会は男女問わず招待されておりますでしょう?」

「ええ」

「だから、シャルル様は今回のお茶会でアーシェン様のお相手候補を探すのではないかと考えておりますの」

「なるほど」


 引っ込み思案で人見知りなアーシェン様が学園で恋人を見つけてその人と婚約するとは考えられないので、シャルル様的には今から候補を探しておきたいと言うところなのだろう。


「けれど、あたくしとしてはそれは無用な心配だと思いますのよ」

「どういうことでして?」


 エメリア殿下はにっこりと笑ってジョセフ様を見る。

 見られたジョセフ様は素知らぬ顔をしているが、わずかに耳が赤くなっているので何かあるのだろう。


「なんといってもジョセフはアーシェン様と仲がいいですものねぇ」


 意味深に微笑むエメリア殿下にジョセフ様は何でもないような顔をして食後の紅茶を一口飲む。


「それは初耳だな。ジョセフはアーシェン嬢と仲がいいのか?」

「たまたま接する機会が多いだけですよ」


 ティオル殿下の言葉にジョセフ様がそっけなく答えたが、エメリア殿下はニコニコとしている。


「そんな事を言って、アーシェン様が困っている時は率先して助けに入ったり、ダンスの授業では真っ先に誘ったりしているではございませんの」

「それはたまたまそうなっているだけです」

「たまたまでそうなるでしょうか?」


 ならないな、と内心で思いつつもシャルル様が以前悪役令嬢の事を天使と言っていたことを思い出した。

 それがアーシェン様の事を言っていたのであれば、シャルル様は初めからアーシェン様に好意を向けていたという事になる。

 わたくしが言うのもなんだが、悪役令嬢候補の中で一番天使っぽいのはアーシェン様だしな。

 わたくしの知らないところで恋物語が始まっていたという事なのだろうか?

 そうなのであればジョセフ様が悪役令嬢になるのを阻止することに協力するのも納得できる。

 しかしジョセフ様の狙いがアーシェン様とは意外だ。

 ブラコンが行き過ぎて闇落ちするキャラなのに好意を寄せるとは、もしやジョセフ様はMなのではないだろうか?

 そんな事を考えているとジョセフ様にジト目で見られて咄嗟に視線をそらした。

 別に疚しい事を考えているわけでは……あるのだが、ジョセフ様とアーシェン様がうまくいくのであればそれは応援したいと思う。

 けれどもあのブラコンなアーシェン様を落とすのは難しいのではないだろか?

 そこはジョセフ様の頑張りに期待するしかない……のだろうか?

 うーん、ブラコンのアーシェン様かぁ、難易度は高そうだな。

 まずはシャルル様とファルク様よりもジョセフ様に興味を持たせるようにしなければならないし、それには乙女ゲームでも難易度が高いんじゃないかと、苦情が出るようなイベントをこなさないといけないきがする。

 ふむ……応援はするが、ジョセフ様、なんとか自力で頑張ってくれ。

 そう言う意思を込めて視線を合わせると、ジョセフ様は何とも言えない表情をした後に小さくため息を吐き出した。

よろしければ、感想やブックマーク、★の評価をお願いします。m(_ _)m

こんな展開が見たい、こんなキャラが見たい、ここが気になる、表現がおかしい・誤字等々もお待ちしております。

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