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159 紅花翁草ー20(ロクサーナ視点)

 その日、あたしは早速行動を起こした。

 執務室にいるお父様に考えた事を提案(・・)する。


「お父様、このままではバスキ伯爵家の将来が心配(・・)でなりません」

「まだ2人は若い。そこまで焦る必要はないだろう」

「何を言っているんですか。もしお義姉様が不妊症(・・・)だったらどうするんですか? このままお兄様の子供が生まれなかったら、バスキ伯爵家は終わってしまいます」

「ダリオンが結婚してその子供を作り、その子供を養子にするという手もある」

それは無理です(・・・・・・・)

「なぜそう言い切れる?」

「だって、ダリオン兄様はお義姉様を愛してる(・・・・)んですよ。そもそも騎士団に入ったのだって家を出るためでしょう? 家のため(・・・・)に何かをしてくれるなんて無理に決まってます(・・・・・・・・)


 お父様は少し考えるようにした後、お兄様を呼ぶから少し待つように言った。

 しばらくしてお兄様が執務室にやってくると、お父様はあたしの提案をお兄様に話した。


「そこまで急いで子供を作る必要はないでしょう。もう数年しても子供が出来ないなら愛人を持つことも考えますが……」

「それでは遅いと思います!」

「……なぜ?」

「あたしはもうすぐ15歳です」

「そうだな。ロクサーナの社交界デビューについて母上が張り切っていた」

「社交界デビューとかどうでもいい(・・・・・・)です。重要なのは、15歳になったら社交界デビューしてなくても成人扱いされるってことですよね?」

「まあ、平民なら(・・・・)そもそも社交界デビューなどないしそのまま成人と認められるな。だが、貴族なら一般的に(・・・・)社交界デビューしてから成人したとみなされるぞ」

「でも、何事にも例外ってあるんですよね?」


 本で読んだ(・・・・・)もの。家のために養子になった娘が当主の愛人になって子供を産むこともあるって。


だから(・・・)あたしがお兄様の子供を産めば、全部解決するじゃないですか」


 あたしの言葉にお父様とお兄様が絶句したように目を大きく見開いた。


「何を言い出すかと思ったら……社交界デビューもしていない養女に次期跡取りの子供を産ませるなんて、世間体が悪すぎる(・・・・・・・・)

「誰にも言わなければ分からない(・・・・・)ですよ。家族さえ黙って(・・・)れば社交界デビューしていないあたしが少し(・・)デビュタントが遅れても問題ない(・・・・)ですよね」

「だが、ロクサーナは義理とはいえ兄に抱かれることになるんだぞ」

それがなにか(・・・・・・)問題がある(・・・・・)んですか?(・・・・・)


 きょとんと首を傾げると、お兄様が困ったように眉を寄せた。


「いくら貴族令嬢とはいえ、無理に義兄と肉体関係を持つ必要はない」

「え? 無理じゃない(・・・・・・)ですけど?」


 お兄様とお父様がじっとあたしを見てくる。


「あたしはお兄様を愛して(・・・)いますよ。だから何も問題ない(・・・・・・)です。でも、お兄様の子供を産むのはやっぱりお父様達の許可(・・)が居ると思うから、こうして聞いたんです」

「……ロクサーナ」

「なんですか、お父様」

「確かにバスキ伯爵家の血を引く子供(・・・・・・)は必要だ。だが、お前が産む必要はない」

「だからって、子供を産めない(・・・・・・・)お義姉様に無駄に期待(・・・・・)するなんて可哀相(・・・)じゃないですか。あたしなら大丈夫(・・・)です。ちゃんとお兄様の子供を産んでみせます」


 にっこりと微笑んで宣言すると、お父様とお兄様が思いつめたように顔を顰める。


「確かに、社交界デビューをしていないロクサーナがこのまま(・・・・)家に籠って出産をしても、社交界デビューが遅くなるだけだ」

「そうですよね」

「だが、お前の年代で社交界デビューが遅れれば、それだけで周囲の心象はよくない」

体調不良(・・・・)なら多少(・・)社交界デビューが遅れても問題ない(・・・・)ですよ」

「…………ロベルト」

「はい」

「お前は、どうしたい?」

「わたしは……」


 お兄様はあたしをじっと見てくる。

 そのまま無言で長い時間考えこんだお兄様は、一度だけ深くため息を吐き出した。


「構いません」


 静かにそう言ったお兄様はあたしに向かって優しく(・・・)微笑んでくれる。


ロクサーナが(・・・・・・)望むなら(・・・・)わたしはバスキ伯爵家のため(・・・・・・・・・)に手を尽くします」


 その言葉にやっぱり(・・・・)お兄様はあたしの考えに同意してくれる(・・・・・・・)んだって嬉しくなった。


「シルビアには教えない方がいいだろう。あれはアナシアを気に入っている」

「お母様はどうして役立たず(・・・・)なお義姉様を大切にするんでしょうか?」

当然(・・)だろう。アナシアは正当な伯爵令嬢(・・・・・・・)出身だ。能力的にも伯爵家の夫人として申し分ない(・・・・・)


 お父様の言葉に、子供も産めないくせに、と内心で苛立ってしまう。

 お義姉様がちゃんと嫁として子供を産んでいれば、あたしはこんなに悩まなくて(・・・・・)よかった(・・・・)のよ。

 その日から、あたしはお兄様と2人きりで過ごす時間を作るようになった。

 でも、なかなか思い通りにならなかったからお父様にまた相談した。

 あたしはどんな事をしても(・・・・・・・・)バスキ伯爵家の(・・・・・・・)役に立たなくちゃ(・・・・・・・・)いけない(・・・・)んだから、手段は選ばない(・・・・)のはおかしくない(・・・・・・)んだもの。


「そこまでしてバスキ伯爵家の子供を産みたいのか?」

「はい。だって、お義姉様が産めない(・・・・)んだから仕方ない(・・・・)じゃないですか。あたしが産むしかない(・・・・・・)んですよ」


 だから子供を産むいい方法がないかお父様に相談した。


「ロベルトに子種がない可能性もあるだろう」

「何を言ってるんですか! お兄様に子種がないわけがないじゃないですか!」

「……わかった、このことについてはロベルトと相談してから結果を伝えよう。それまではお前は大人しく(・・・・)していなさい」

「はい」


 それから一ヶ月、お父様とお兄様は何度も話し合って、何度も険悪になって、それでも結局は納得して(・・・・)2人であたしの相手をすることになった。

 どちらの子供でも(・・・・・・・・)バスキ伯爵家の子供(・・・・・・・・・)だからあたしはかまわない。

 だって、どっちも愛してる(・・・・)もの。

 子供を産んで、お義姉様よりもあたしの方がバスキ伯爵家のためになるって証明しないと(・・・・・・)

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こんな展開が見たい、こんなキャラが見たい、ここが気になる、表現がおかしい・誤字等々もお待ちしております。

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