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135 洛神珠ー16

 リャンシュ様達の用事は我が家に訪問することを伝えるだけだったようで、すぐに立ち去って同級生のところに行ってしまったし、それに合わせてディバル様も友人のところに行ってしまったが、ロクサーナ様とミンシア様はいまだにわたくし達の傍から離れない。

 いつまでいるのだろうかと思っているのだが、これは離れてくれるのを待つよりも、わたくし達が場所を移動したほうがいいのかもしれない。


「エメリア殿下、わたくし少し喉が渇いてしまいましたわ。ご一緒に飲み物をいただきにまいりません?」

「そうですわね。あたくしも喉が渇いた気がしますわ」


 わたくしの意図を察したのか、エメリア殿下が頷いてくれたので一緒に移動を開始すると、なぜかロクサーナ様とミンシア様も付いてこようとしたため、わたくしの友人とエメリア殿下の友人数人が残って牽制してくれるようだ。


「お2人はもう選択授業の内容は提出しましたか?」

「え? いえ、まだですけど……」

「あたしもまだです」

「何を選択するかはお決めになりまして?」

「えっと―――」


 離れた位置からそのような会話が聞こえてくる中、軽食コーナーに辿り着いて飲み物を給仕から受け取って一息つく。

 一緒に来た友人達もそれぞれ飲み物を手にして息をついているところを見るに、あの2人に絡まれるのはストレスに繋がっていそうだ。


「あの様子では今後もエメリア殿下に何かと絡みそうですわね」

「考えたくもありませんわ。こちらが迷惑がっているのを全く理解なさらないなんて、貴族として勉強不足ですわね」

「ミンシア様はロクサーナ様が残っていたからなようにも感じましたが……」

「非常識と常識外れ、いっそのこと2人だけで仲良く過ごしてほしいものですわ」


 しみじみと言うエメリア殿下に周囲が同意するように頷いた。


「それにしても、ロクサーナ様はディバル様だけでなくリャンシュ様にまで親しげに声をかけて……。まるで友人のように振舞っていましたわね」

「お話ししたことがあるようですし、ロクサーナ様は友人感覚なのかもしれませんわ」

「まあ! お話ししただけで友人と思うだなんて、彼女は随分と幸せ者ですわね」

「エメリア殿下ともお話をしましたし、今後は友人のように振舞ってくるかもしれませんわ」

「いやですわ、ベアトリーチェお義姉様。恐ろしいことをおっしゃらないでください」


 エメリア殿下が心底嫌そうに眉をひそめて言うが、わたくしの予想が当たりそうな予感がする。


「ベティ、ここにいたのか」

「まあオル様。皆様とのお話はもうよろしいのですか?」

「ああ、少し時間がかかったが問題はない。待たせてすまなかったな」

「エメリア殿下や皆様と一緒にいたので大丈夫ですわ」

「そうか」


 わたくしの横に並んだティオル殿下が給仕から飲み物を受け取り一気に飲むと一息つく。

 ゲオルグ殿下やジョセフ様達と何の話をしていたのかは知らないが、随分と喉が渇いていたようだ。


「ベアトリーチェお義姉様、あたくし達はクラスメイトのところに行ってきますわ」

「ええ、楽しんでいらしてくださいませ」


 エメリア殿下達がそう言って離れて行くと、わたくしの友人達も理由をつけて離れて行き、ティオル殿下と2人で残される。

 もちろん離れたと言ってもほど近い距離に友人達はいるし、ティオル殿下の側近候補も何かあればすぐ来られる位置にいる。


「僕達もいよいよ最終学年になったな」

「そうですわね」


 そしてついに『誘惑のサイケデリック』の舞台が幕を開ける。


「僕が王太子に選ばれたせいもあるのだろうが、ゲオルグの周囲に集まる令嬢の顔ぶれに変化が出たし、ジョセフの周囲には今まで以上に令嬢が集まるようになったみたいだ」

「大変ですわね。けれどもゲオルグ殿下の婚約者は王家の意向が強く関係しますし、その条件に当てはまる家の令嬢は逆に適切な距離を取ると思いますので、集まっていく方々は愛人狙いかもしれませんわ」

「そうだろうな。しかし、叔父上は婿入りして愛人を作ってはいないのだが、それを鑑みて望みが薄いとは考えないのだろうか?」

「本気でゲオルグ殿下に恋をしている令嬢もいるかもしれませんし、本妻が子供を産んだ後は自分が寵愛を受けようと狙っている人もいるかもしれませんわ」

「王の外戚になったところで口出しは出来ないのだがな」


 そう、それはこの国の法律がそのように定めているため、本当に自分の家の子供が王の正室(側室)になったというのはステータスでしかない。

 それと同じように自分の子供が王になる可能性があるというのもまた、親にとって重要な意味を持つのだろう。

 正直なところ、公爵家ぐらいになると少なからず王族の血が流れているため、そこまで躍起になって自分の血を王族に混ぜようとは思わないのだが、他の爵位の人々はそうでもないらしい。

 けれども、王位継承権を子供に与えるにも色々と条件があるのだが、純粋に贅沢をしたいという欲求で愛人の座を狙っている令嬢もいるのかもしれない。

 人が選ぶ未来の選択肢は無限だと言う人もいるが、わたくし達貴族の令嬢が選べる未来の選択肢は意外と少なかったりするのだ。

よろしければ、感想やブックマーク、★の評価をお願いします。m(_ _)m

こんな展開が見たい、こんなキャラが見たい、ここが気になる、表現がおかしい・誤字等々もお待ちしております。

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