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129 洛神珠ー10

 なんというか、ロクサーナ様とミンシア様の会話は聞いていて頭が痛くなるような気分だ。

 悪意を乗せた会話であれば何もおかしなところはないが、特にロクサーナ様の言葉は無意識に言っているのだとしたら、今後あちらこちらで敵を作るだろう。

 そしてミンシア様の、相手を陥れようとする意志を感じる言葉も微妙だ。

 あくまでも自分は常識的な行動と照らし合わせておかしなことを言っているようにはせず、相手がミンシア様をけなしていると感じ取れる(・・・・・)ような言葉を選んでいるように思える。

 もっとも、実際にロクサーナ様がとっている行動はミンシア様を蔑ろにするようなものだが、それをこのような場所であのように非難するのはまた別問題だ。


「あの2人は魔術学院に入ったら同じクラスになるんだったな」

「そうですわね。どちらも高位貴族のクラスになりますわ」

「エメリアと同じクラスか……。恐らく出来る限り関わらないようにするだろうが、苦労するだろうな」

「そうですわね」


 それぞれに監視用の精霊をつけた後、音を拾うのをやめてティオル殿下の言葉に頷く。

 ロクサーナ様だけでも厄介なのに、ミンシア様はいったい何なのだろうか。

 考えても今は答えが出ない。

 その後は花祭の舞踏会が終わるまで大きな問題はなく、わたくしは王太子妃の部屋でドレスを着替えてからタウンハウスに帰宅した。


 帰宅後、それぞれにつけていた精霊から情報を貰い、わたくしは思わず頭を抱える事になる。

 ロクサーナ様はまだ予想の範囲内だ。

 今夜の騒ぎは一切伝えず、楽しい舞踏会だった、離れて行動する時間が思ったよりも多くて緊張したし、寂しかったと養父と義兄に甘えているそうだ。

 あの後も数人の子息と踊ったようだが、その中に高位貴族はおらず、ディバル様を除けば全員が下位貴族の子息、それも嫡子から外されている人だったようだ。

 問題はミンシア様。


「愛人狙い……」


 アンナ達はまだ部屋に残っているが、思わず声に出してしまう。

 別に愛人狙いであることは悪くはない。

 うまく調整して同時に複数人の貴族の愛人になっている事を職業にしている人だっているのだ。

 ではミンシア様の何が問題なのかと言うと、彼女が日記というか、手記というか、とにかく花祭から帰宅して着替え終わってから開いた本の内容がやばい。

 そこに名前が書き記してあるのが、『誘惑のサイケデリック』の登場人物ばかりなのだ。

 人物名の他にも詳細なキャラデータ(・・・・・・)が記入されていた。

 そう、それは『誘惑のサイケデリック』を知っている(・・・・・)人間でなければ分からない事ばかりだ。

 もっとも、現時点でそれに記載されているデータとは異なっているのだが、それはそれとして、ミンシア様がわたくしやジョセフ様と同じように『誘惑のサイケデリック』の記憶があると考えていいだろう。

 これはジョセフ様に報告すべき内容だ。

 それにしても、ミンシア様は攻略対象者の愛人狙いなのは確かなようで、魔術学院で被る攻略対象者は恋人の後に愛人に、そうでない面子は最初から愛人狙いで攻略(・・)すると心に決めているようだ。

 愛人狙いとはいえ、魔術学院への留学が終わったら祖国に戻る予定になっている、ディバル様とリャンシュ様に関しては、期間限定と割り切っているようだが、攻略対象者以外にも、なぜか叔父の愛人の座も狙っているらしい。

 あの叔父を引き取ってくれるのなら、のしをつけて差し上げたいが、妙な化学反応を起こしてわたくしが厄介ごとに巻き込まれる可能性もあるので慎重に対処したほうがいいだろう。

 わたくしとジョセフ様という存在がいるのだから、他にも記憶持ちが居てもおかしなことはない。

 だが、ミンシア様が行おうとしていることはヒロインの立場の乗っ取りというものではないだろうか?

 容姿や境遇がヒロインの物と合致しているロクサーナ様が、社交界での評判がよくないからこそ、自分がヒロインになれると思って(・・・)行動を開始したのかもしれない。

 それならば、ロクサーナ様を陥れようとする発言をしていた事も納得がいく。

 強制力でヒロインと攻略対象者が結ばれないように、今以上に悪評を流すつもりなのかもしれない。

 わたくしから見れば諸刃の剣だとしか思えないが、ミンシア様的には問題はないのかもしれない。

 しかし、このパターンは全く考えていなかった。

 良くも悪くも『誘惑のサイケデリック』という世界観に囚われているせいだろう。

 いや、けれどもまさか記憶持ちの令嬢が居たとしても、ヒロインの立場を乗っ取ろうとしているとは、なかなか考えないのではないだろうか?

 暫定ヒロイン(おそらく確定?)のロクサーナ様の評判も悪いが、ミンシア様も社交界では既に悪評が流れているのに、高位貴族の愛人になれると本当に思っているんだろうか?

 確かに容姿はそれなりに整っているが、高位貴族の中で見れば(好みはあるだろうが)失礼だがそこそこ(・・・・)でしかない。

 魔力量も家柄もそれなり。

 確かに辺境伯という地位は重要ではあるが、カーロイア辺境伯領は担当領主が交代したら困るという地域ではない。

 バスキ伯爵家もそうなのだが、あまりにも失態が続いてしまえば、王命により爵位名と領地だけ残って、管理する一家が入れ替えられるという可能性がある事を、理解していないのだろうか?

 うーん、カーロイア辺境伯家にも探りを入れておいたほうがいいかもしれない。

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こんな展開が見たい、こんなキャラが見たい、ここが気になる、表現がおかしい・誤字等々もお待ちしております。

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