128 洛神珠ー9
簡易登場人物紹介
◆ディバル=バーレンチ=エーオワゼ
隣国バーレンチの第一王子(17)攻略対象(2年)
一人称:私。薄紫色の髪に青色の瞳。
集団で集まって話をしていながらも、やってくる貴族と挨拶を交わしたり、軽く話しをしていると着替えが終わったのか、ミンシア様が会場に戻ってきたのが見えた。
その隣にはなぜか叔父が居る。
いや、本当になんで?
驚いて凝視していると、それに気が付いたティオル殿下も視線を向けて驚いたように目を細めた。
「リゼンが家族以外をエスコートするとはな」
「ええ、わたくしも驚きましたわ」
「それもあの令嬢とは……、何を考えている?」
ティオル殿下と同じことを考えながら観察していると、叔父はそのまま会場を進んでいき、ファルク様の前に立った。
ファルク様にとって叔父は直属の上司だ。
綺麗に頭を下げるファルク様に、叔父が機嫌よさそうに笑って何かを話すと、ファルク様が驚いた顔をした後にミンシア様を見て、にっこりと笑い手を差し出した。
恥ずかしそうにミンシア様が自分の手を重ねると、そのまま2人はダンスホールに向かっていく。
何が起きている?
あの叔父が部下に女性を紹介するだろうか?
一万歩譲ってそれが独身で女っ気がない人ならわかるが、ファルク様だ。
遊び人とまで言われているファルク様にわざわざ女性を紹介する必要はないだろう。
実際先ほどまで数人の女性に囲まれていてダンスや会話を楽しんでいたはずだ。
叔父が個人的にミンシア様と知り合いで、憧れているファルク様に紹介して欲しいと頼んだ可能性は限りなく0に近いがないわけではない。
ただ、ミンシア様は微妙ではあるが先日社交界デビューしたばかりだ。
カーロイア辺境伯と叔父が旧知と言う話も聞いたことが無い。
正直言って、叔父の行動が怪しすぎる。
「ファルクも大変だな。先日の婚約披露では噂の令嬢とダンスを踊り、今夜はあの令嬢とダンスを踊るのか」
「なんといいますか、ファルク様は女性にモテますから、色々な意味で心配ですわね」
「まあ、花の間を飛び回っているとはいえ、ちゃんと選んでいるからな。今までは大きな問題になったことはないが、あれは大丈夫なのか?」
ティオル殿下が心配そうにシャルル様に問いかけると、シャルル様が溜息を吐く。
「ファルク兄さんの女性好きはいつもの事ですが、あの令嬢はファルク兄さんの好みではないでしょうね。ああ見えてファルク兄さんは頭のいい常識的な女性が好みですから」
かなり直接的にミンシア様に常識がないって言ったな。
まあ、先日と今日の行動を見れば誰だってそう判断するだろう。
叔父が何を考えているか悩んでいると、ファルク様とミンシア様が踊っている横で、ディバル様とロクサーナ様が踊っているのが目に入る。
はぁ? どうなっているんだ?
ロクサーナ様は青いドレスに黒紫の刺繍が入ったドレスであって、白いドレスではない。
ルートに入る際のスチルもあのように会場内ではなく、中庭で2人きりでダンスを踊るのだ。
しかしながら、ファルク様ルートが一番可能性が高いと思っていたが、これはディバル様ルートもあるのだろうか?
その場合の悪役令嬢はエメリア殿下になる。
うーん、この場合、誰のルートに入ると考えたらいいのだろうか?
「ディバル殿まで……噂は聞いているだろうに、何を考えているんだ?」
ティオル殿下が「ゲオルグは止めなかったのか?」と戸惑ったような声を出す。
そのまま戸惑いを多分に含んだ空気のまま2組を眺めていると曲が終わり、何事もなく戻ってくるのかと思ったのだが、そうはいかなかった。
「……あの2人は何をしているんだ?」
「さあ?」
ダンスホールの端の方で次の曲がかかるまでの移動時間とはいえ、あそこは立ち話をする場所ではない。
しかも仲良く話しているというよりは、揉めているような雰囲気だ。
実際にファルク様とディバル様が困ったように眉を寄せている。
ティオル殿下が精霊を動かした気配がしたので、わたくしも精霊魔法で音を集める事にした。
「どうしてわざわざわたしの隣で踊るんですか?」
「偶然ですよ?」
「だって、さっきドレスがぶつかりそうになって……。いえ、申し訳ありません、わたしの気のせいですよね……。先ほどの事をまだ怒っていらっしゃるのかと思って……」
「そんなことありませんよ。だってもう終わった事じゃないですか」
ロクサーナ様の発言に驚いてしまう。
不注意であれ事故であれ、ロクサーナ様がミンシア様のドレスを汚したのだから、そのお詫びをするのは常識だ。
それを終わった事とは、お詫びをするつもりがないと言っているようなものだ。
「……あのドレス、社交界デビュー用に特別に作らせたものなんです。デザインから考えて……すごく思い入れがあるんです」
「わかります。あたしもデビュタントのドレスには思い入れがありますから」
「ロクサーナ様にドレスを汚されて、すごく傷つきました」
「はい。だからあたしちゃんと謝りましたよね? もしかして、あたしの謝罪なんて受け入れたくないとか、そう言う事ですか?」
「なっ……ひどいですロクサーナ様。そんな上辺だけの適当な対応だなんて……。わたしなんてその程度のあしらいで事足りると思ってるんですね」
顔をうつ向かせるミンシア様だが、ロクサーナ様も悲しそうに眉を寄せる。
「言ってることがよくわからないんですけど、ミンシア様はあたしの謝罪を受け入れないってことでいいんでしょうか? それってすごく……悲しいです」
心底そう思っているというように声を出すロクサーナ様。
「あたし、まだ社交界経験は少ないですけど、ドレスを汚してしまったことはちゃんと謝ったのに、それを受け入れないのっていくらなんでもひどいと思います。ドレスが汚れたぐらいでそんなにあたしを許さないとか、貴族として心が狭いんじゃないですか?」
「そんなっ……ひどい、ロクサーナ様……。やっぱりわたしが言ったことを怒ってるんですね? だからそんな酷いことを言うんですね……」
「よくわからないけど、確かにあたしの家の事について、他人のミンシア様が何か言うのはおかしいと思います。家族の問題なんですから、家族で解決するのが普通ですよ」
ロクサーナ様はそう言うと、ディバル様を促してその場を離れて行った。
残されたミンシア様にはファルク様が声をかけてその場から誘導してダンスホールから離れて行った。
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