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123 洛神珠ー4

「でも、バスキ伯爵の計画では平民になった次男と結婚させるのでしょう?」

「神殿からの報告ではそうだな。実質妻の入れ替えを行う前提で騎士団を辞めた次男を伯爵家で雇い、敷地内に別邸を用意して住まわせるのだからな」

「バスキ伯爵夫人の尊厳や意思は綺麗に無視しているようですわ。神殿で保護しようにも、本人が無気力な上に妊娠中で強引な行動に出ることが出来ないそうですの」

「子供が無事に産まれたとして、その子供の処遇も夫人を神殿で引き取った場合考えないといけないわね」

「現状ではバスキ伯爵夫人の実家と交渉して、バスキ伯爵家の正式な嫡子(・・・・・)として届けを出す予定だそうですが、神殿がバスキ伯爵夫人を保護して夫の承諾を必要としない、神殿申請による王命での離縁が成立したら、実家がバスキ伯爵夫人について口を出せるようになりますので、まだわかりませんわね」

「バスキ伯爵家としては既に2人子供がいるとはいえ、正しくバスキ伯爵家(・・・・・・・・・)の血を引く子供(・・・・・・・)だからな、簡単に手放さない可能性が高い。女児が生まれたとしたら尚更だろう」


 女児は政略に使いやすいから、とは口に出さなくともわかる。

 男児も政略に使えるが、男女どちらが使いやすいかと聞かれたら誰もが女性だと答えるだろう。

 これは長い歴史を持つルーンセイであっても変わらなかったというか、様々な変動があった結果、この意見に落ち着いたようだ。

 どちらにせよ、バスキ伯爵夫人の実家が孫に関して強く意見を出せるのは離縁後になる。

 離縁したとしても、子供に対する虐待行為が認められなければ、親権をとる場合優先されるのは嫡子として届出をだしたバスキ伯爵家になるのだ。

 ちなみに、既にいる子供を本邸で育て、新しく産まれてくる子供を別邸で育てるだけでは虐待行為とはなかなか認められない。

 特に、母親が同じ別邸で暮らしており、父親代わりの次男(・・・・・・・・)が共に暮らし愛情を注ぎ、教育をきちんと受けさせ、生活が問題なく保障されていれば余計に虐待行為と認められにくい。

 例えバスキ伯爵が産まれてくる子供と交流をほぼ持たなくても、子育て(・・・)はちゃんとしていると判断される可能性が高い。

 例え子育てに失敗(・・)したとしても、それは虐待行為とはまた別の問題だ。

 ヒロインと推測されるロクサーナ様は、なんというか本当にヒロインなのかと疑いたくなる状況にある。

 この状況で攻略される人がいるのだろうか?

 ダンスを踊ったという条件だけで言えばファルク様が対象になったと考えられるが、いくらファルク様でも問題だらけのロクサーナ様に簡単に接触し心を開くとは考えにくい。

 まぁ、ありえない展開のオンパレードがあってこその『誘惑のサイケデリック』なのかもしれないが、ファルク様ルートでの悪役令嬢はアーシェン様だ。

 ゲーム内では悪役令嬢になると、今の性格から想像ができないような犯罪まがいの陰湿ないじめを行うようになるが、いじめを誘導する役目のジョセフ様が悪役令嬢を守ると言っているので、実際はどうなるのかは分からない。


「ロクサーナ様が伯爵令嬢でいる限り、あたくしとは同じクラスだから気が滅入りますわ。存在を気にしないにしても、あちらから接触してきたらそれも難しいですもの」

「先日の新年祭で随分常識外れな行動をしていましたからね。こちらが挨拶を返していなくとも、彼女の中では挨拶を交わした(・・・・・・・)ことになっているかもしれません」

「こちらとしては、姉上があの令嬢を見てバスキ伯爵に嫌味を言っただけ(・・)なんだがな」

「あたくしは口を開いてもいませんでしたわ」


 エメリア殿下がそう言うが、ロクサーナ様がヒロインであるのなら、思い込みによる暴走というスキルが備わっていてもおかしくはない。

 いや、バスキ伯爵家での行動や思考を鑑みるに、確実に備わっていそうだ。


「エメリアの学院生活は気苦労が多そうだな」


 他人事のようにティオル殿下は言うが、まだ確実にルートが決定していない以上、安易に油断はできない。


「あの令嬢はお兄様達とダンスを踊りたいと寝言を言っていましたわ。お兄様達だって油断はできませんわよ」

「学年が違うから接点はほぼ皆無だぞ」

「普通はそうですが、あの令嬢はまともな思考回路をしているとは思えませんわ」

「リャンシュ殿曰く、素晴らしく貴族らしい思考回路だそうですよ」

「手順と順番さえ間違っていなければ、確かに素晴らしく貴族らしいですわ。家のことを何よりも優先し、繁栄させようと思考し実行していますもの。彼女の中では貴族の具体的な姿があるかもしれませんわ。そして、その姿から外れた者の事は、全て自分に都合よく変換されるのでしょうね。当人の思考など全く考慮していないのだと思いますわ」


 エメリア殿下が考えていることがあっているのかもしれない。

 主張していることが一見間違っていないように思えるのは、貴族として思考的には間違っていないから。

 それでも違和感を覚えるのは、そこに異なる行動を取った者の思考を排除していると感じるから。

 もしくは、他人からしたら違和感としか見えない行動であっても、本人が正しいと思っていればそこに迷いが無さすぎるからかもしれない。

よろしければ、感想やブックマーク、★の評価をお願いします。m(_ _)m

こんな展開が見たい、こんなキャラが見たい、ここが気になる、表現がおかしい・誤字等々もお待ちしております。

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