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120 洛神珠ー1

簡易登場人物紹介

◆ミンシア=リンベル=カーロイア

辺境伯令嬢(15)(未入学):実家が不正に税金を上げているという噂が?

一人称:わたし。薄桃色の髪に薄緑色の瞳。

 王太子の婚約披露の夜会では、他の貴族子女が自分達の婚約発表をするというか、既に結ばれている婚約を大々的に発表することは咎められないのだが、王家主催の夜会とはいえ、暗黙の了解でデビュタントに使用することは禁止とされている。

 なぜなら、主役はあくまでも婚約するわたくし達であり、優先され、守られるべきなのもわたくし達。

 ある意味注目を集めるデビュタント子女が居るのは好ましくないとされているのだ。

 そのはずなのだが……。


「カーロイア辺境伯がご挨拶を申し上げます」


 そう言って挨拶に訪れたカーロイア辺境伯の隣には、真っ白なドレスに身を包んだ初めて見る(・・・・・)令嬢が居る。

 通常ではありえない状況に、ティオル殿下も挨拶を受け入れるべきか悩んでいるようだ。


「……遠いところから婚約祝い(・・・・)にわざわざ駆けつけてくれたこと、嬉しく思う。カーロイア辺境伯」

「もちろん、ティオル王太子殿下と精霊姫とも呼ばれるベアトリーチェ様の婚約披露なのですから、何を置いてでも(・・・・・・・)駆けつけるのは当然(・・)でございます」


 それは、諸事情があってこの夜会に参加出来ない家への嫌味か?

 もっとも、婚約披露の夜会で自分の娘をデビューさせようとしているので、常識的とはいいがたい。

 そんな人に何をおいても駆けつけると言われても、うさん臭いとしか思えない。


「カーロイア辺境伯夫人は領地に残っているのか?」

「はい、アレは王都のような華やかな場所は似合いませんし、田舎暮らしをしている方が心が落ち着くようです」

「そうか。しかしながら辺境伯はその土地において守りを固める事が勤めだ。夫人だけでは心もとないだろうから貴殿は夫人が安心できるように努める義務(・・)があるな」

「はは、まったくですな。しかし領地には息子夫婦もおりますので、ご心配いただくほど不安に思ってはおりますまい」


 ティオル殿下の嫌味にカーロイア辺境伯はにこやかに返事をしたが、口元が若干引きつっている。

 その隣では自分が紹介されるのを待っている令嬢がいるが、ティオル殿下から紹介するよう言う事はないだろう。


「しかしながら本日は妻の代わりに娘を連れてまいりました。来年度から魔術学院に通う事になりますので、見かけた際はよろしくお願いいたします。ミンシア、ティオル王太子殿下とベアトリーチェ様にご挨拶をさせていただきなさい」


 カーロイア辺境伯の言葉に、深く頭を下げたままだった令嬢が声を発した。


「お初にお目にかかります。カーロイア辺境伯が長女、ミンシア=リンベル=カーロイアと申します」


 一目でお金をかけているデビュタント用のドレスに身を包んだ令嬢が、鈴が鳴るような可憐な声で言うが、ティオル殿下はそちらに目を向けない。


「カーロイア辺境伯は、その役目上王都に来ることがほとんどないのだったな」

「え? はあ、そうでございますね」

「長く王都を離れていると、わからない事(・・・・・・)も多く発生して苦労する(・・・・)だろうが、良識ある貴族として、家名に恥じないように(・・・・・・・・・・)過ごしてくれ」

「もちろんでございます」


 カーロイア辺境伯の口元がさらに引きつる。


「そうだな、久方ぶりに王都に来ているのなら、挨拶をすべき貴族も多いだろう?」

「そ、そうでございますね。お言葉に甘えて御前を失礼させていただきます」


 深々と頭を下げたカーロイア辺境伯が令嬢の手を引いて去っていった。

 十分に下がった後に令嬢が頭を上げたが、去り際にわたくしに対して悔しそうな眼を向けてきたことが気になる。

 最近はあのような視線を向けられることがほとんどないから、なんだか新鮮な気分だ。

 それにしても、アレが以前話に出ていたカーロイア辺境伯とその娘か。

 所領の税金を上げるほど資金繰りに苦労している可能性があるのに、令嬢のドレスにはお金がかかっていそうだった。

 どちらにせよ、王太子になったティオル殿下の婚約披露の夜会で娘を社交界デビューさせるという常識外れな事をした以上、令嬢は今後厳しい視線を向けられることになる。


「例の令嬢といい、あの令嬢といい、来年度の新入生は何かと大変そうだ」

「そうですわね。同学年になるエメリア殿下やジョセフ様も気苦労が多そうですわ」

「学年の違う僕達との関わり合いはほとんどないだろうが、魔術学院に問題児が増えるのはよろしくないな」

「しかたがありませんわ。どのような状況でも失敗は発生してしまいますもの。学院生活を送っていくうちに、周囲の意見に耳を傾けてくださることを祈るしかございませんわ。わたくし共が下手に関わってしまったら、そのほうが事を大きくしてしまいますもの」

「そうだな」


 ティオル殿下とそんな話をしていると、次の貴族が挨拶に来た。


「ティオル王太子殿下とベアトリーチェ様に、マルグレア伯爵がご挨拶を申し上げます」

「ああ、マルグレア伯爵。元気そうで何よりだ。カノン嬢は先日魔術学院で挨拶をして以来だな」

「ご機嫌麗しく存じ上げます、ティオル王太子殿下。改めましてベアトリーチェ様とのご婚約、大変喜ばしく、心よりお祝い申し上げます」

「ありがとう」

「娘には王家より身に余るお話をいただきまして、誠にありがとうございます。まだまだ未熟な娘ではございますが、微力ながらもお2人のお力になれると思いますので、遠慮なく御用をお申し付けいただければと思います」

「ご安心くださいませマルグレア伯爵。カノン様には既に学院でとても良くしていただいておりますわ」

「そうでございますか。そのように言っていただけますと親として嬉しく思います」


 先日、正式に側妃候補になったカノン様達は準備が整い次第側妃教育が行われることになっている。

 わたくしが推薦した4人はもちろんそのまま側妃候補になったが、最低5人と言われている状態ではあるものの、後の1人はもう少し様子を見て選ぶようだ。

よろしければ、感想やブックマーク、★の評価をお願いします。m(_ _)m

こんな展開が見たい、こんなキャラが見たい、ここが気になる、表現がおかしい・誤字等々もお待ちしております。

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