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101 蒲桃ー14(ロクサーナ視点)

 休憩がてら、お兄様が挨拶回りをするのに付き合ってあたしも挨拶をする。

 事前に聞いていたように、今日デビュタントする子には優しく接してくれるみたいで、皆が笑顔を向けて社交界デビューおめでとうって言ってくれる。

 ただ、同じ年ごろのご令嬢と話そうと思っても、相手が簡単な挨拶だけして離れて行ってしまうのが残念。

 お兄様は相手が高位貴族だから、代替わりしたばかりの伯爵家にばかりかまっていられないから仕方がないっていうけど、そっか、これがお父様が言っていた代替わりのリスクなのね。

 それに、バスキ伯爵家はしばらくの間女性の社交が出来ていなかったから、最初は遠巻きに様子を見られるかもしれないって言われたもの、このぐらいで落ち込んじゃいけないわ。

 今後バスキ伯爵家は今まで通り何の問題もなく、後継ぎにも恵まれて将来に不安はないってあたしが社交をして広めていけばいいのよね。

 そう考えながらニコニコしていると、お兄様が挨拶をした人がこのあと陛下から発表があるって言ったので首をかしげる。

 王太子選抜の途中だっていうのは聞いているけど、もう決まったのかしら。

 メイドの話しでは、男性が王太子になったらあのベアトリーチェ様が王太子の婚約者になるそうだから、楽しみだわ。

 噂だと精霊使いで優秀で、淑女の鑑のような人で、誰もが憧れる素敵なご令嬢なんですって。

 王子様たちを見たことはないけど、きっとかっこいい人だろうから、美人だって聞くベアトリーチェ様と並んだら一枚の絵のように美しいに決まってるわ。

 メイド達が話していたベアトリーチェ様が経営しているっていう喫茶店。

 貴族や裕福な平民向けだから、伯爵家に勤めているメイドでも滅多に行くことは出来ないそうなんだけど、やっぱり憧れちゃうって聞いて、それなら平民向けに改良してお店を出してみたらどうかってお父様に言ったのよね。

 そうしたらしばらくしてお父様があたしが言ったような喫茶店を始めたの。

 もちろんその頃はお父様は領地にいる事が多かったから、経営は代理人がしていたし、ロベルト兄様も経営に関わっていた。

 でも、今までは貴族や裕福な平民しか食べられなかった料理が、これからは裕福じゃない人も味わえるようになったのは、とってもいい事よね。

 コストとか品質とか、お兄様達は難しいことを言っていたけど、お金を持っている人基準の品物をお金を持っていない人が手にできるわけないもの。

 多少劣化品になってしまうのは仕方がないと思うわ。

 あたしだって男爵家にいた時は伯爵家で与えられるものよりもずっと粗悪なものを使っていたもの。

 でも文句なんかなかったわ。

 それが身分差とかお金を持っているかの差なんだもの。

 上の人の真似をするのはいいけど、何もかも一緒なんて無理なんだから、どこかで妥協しなくちゃだめよね。

 そんなことを考えながらお兄様の挨拶に付き合っていると、高位貴族の人は忙しそうに立ち去っていくけど、下位貴族の人はお兄様の当主就任をちゃんとお祝いしてくれる。

 あたしの事もおめでとうって言ってくれるし、自分の息子だって言って子息を紹介してくれもする。

 学院でもお世話になるかもしれないから、一生懸命笑顔で挨拶をして印象を良くしようと思って声をかければ、相手の子息も笑顔を向けてくれる。

 うん、やっぱり笑顔って大事よね。皆が相応に幸せな事が一番だわ。

 そうしているうちにいつの間にか流れていた音楽が無くなって、周囲の皆が王家の人が居るほうを見ていたから、お兄様と一緒にそちらを見るけど、ここからじゃ遠くて顔は見えない。

 かろうじて声は聞こえたけど、ふーん、なんか皆王太子選抜を抜けるんだ。

 そんなに簡単に抜けるって言っちゃって大丈夫なのかしら。

 この国の将来を決める大切な事なんでしょう? よくわからないけど、色々な人が関わって何度も会議とかして慎重に決めるって聞いたことがあるのに……。

 でも、えっと残ったのはティオル殿下、よね?

 精霊使いで最初から王太子になる可能性が一番高いって言われてる人。

 うーん、なら大丈夫かな。

 あたしでも知ってるぐらいなんだし、きっと優秀に違いないわ。

 ベアトリーチェ様も精霊使いだし、2人が夫婦になれば精霊使い同士の夫婦になるんでしょう?

 それってすごくいい事だわ!

 魔力が多い2人の子供ならきっと魔力が多いに違いないもの。

 思わず目を輝かせて王家の人が居るほうを凝視するけど、やっぱり遠くて顔が分からない。


「お兄様、早く王家の方に挨拶に行きましょう?」

「そうだな、ほとんどの貴族は発表前に陛下達に挨拶をしていたようだし、今ならさして待たずにお目通り出来るだろう」

「楽しみです。きっと皆様素敵な人なんでしょうね」


 あたしの言葉にお兄様が頷いてくれる。

 お母様とお義姉様が社交界から離れてしまった時も、王妃様が挨拶に行った時に声をかけて心配してくれたってお兄様が話してくれた。

 すごい、王家の人なのに伯爵家の人間を気にしてくれるなんて、優しいのね。

 やっぱり人の上に立つのって、そのぐらい優しくて多くの事を把握しなくちゃだめなんだろうな。

 あたしには無理。

 バスキ伯爵家の事で手いっぱいだもん。

 これからは魔術学院での学業も加わってくるし、とてもじゃないけど関わりのない下の人間の事にまで気を回すなんて出来ないわ。

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こんな展開が見たい、こんなキャラが見たい、ここが気になる、表現がおかしい・誤字等々もお待ちしております。

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