10 翁草ー2
簡易登場人物紹介
◆アルバート=ケイランゼ=アルセイド
公爵家嫡男(19)
一人称:私。金色の髪に紫の瞳。
ベアトリーチェの婚約者候補。
◆ティオル=ルーンセイ=ウェザリア
第一王子(17)攻略対象(2年)
一人称:僕。血色の髪に金色の瞳。
ベアトリーチェの婚約者候補。炎の精霊と契約している。
ゲオルグ・エメリアの異母兄。
◆ゲオルグ=オーウェン=ウェザリア
第二王子(15)攻略対象(1年)
一人称:ボク。金色の髪に金色の瞳。
ベアトリーチェの婚約者候補。
ティオルの異母弟・エメリアの異母兄。
ほどなくして王宮の馬車寄せに到着するとメイドと侍従が会場になるサロンに案内をしてくれる。
公爵家である我が家は他の家より遅れて到着するしきたりなので、会場入りは最後のほうだ。
すでに多数の馬車があったことから本当に大規模なお茶会のようだ。
「お茶会の趣旨と照らし合わせてまだ到着していない家は、公爵家でも王族の血が濃い家のようですよ」
「数代王族と交わっていない我が家は、序列はそこそこ高いものの危険時の優先順位は低いですわね」
「この国では優先順位と序列が時と場合によって扱いが変わるのが厄介です」
「それが血統主義というものですわ」
「確かに貴族は王族の血を守るためにありますからね」
歩きながらする話ではないが、サロンに到着するまで長い通路を歩かなければいけないので話を続ける。
メイドと侍従に聞かれているのは承知の上だ。この会話内容は後ほど王妃様に報告がいくだろう。
わたくしたちは個人的に招待を受けているとはいえ成人し社交界デビューも果たしている一家の代表にもなれる存在。
こればかりは継承権のない義兄には出来ない役目だ。
家の者以外の前では常に気を張り続けなければいけない。
「グレビール、王妃様にお会いするのは何度目でして?」
「ご挨拶させていただくのは5度目になります」
「思ったより少ないですわね」
「姉上、王家主催の社交行事に参加できる機会なんてデビュタントしたばかりの身にはめったにない事なんですよ。ましてやぼくは男ですからね」
「王妃様のお茶会に誘われることはめったにありませんものね」
「その代わり王家主催の狩猟があります」
「貴方にはまだ早いのではなくて?」
「わかっています。招待状だってぼくじゃなく父上や兄上宛に来ますからね」
「魔術学院を卒業したころにはお兄様に負けない成績を残せるようになりますわ」
元気づけるようににっこりと微笑んで言う。
「家名に恥じぬよう努力します」
「無理をしてはいけませんわよ」
「はい」
などと話しているとやっと目的のサロンに到着したようで、扉が明けられる。
「シャルトレッド公爵家ご嫡子グレビール様、並びにベアトリーチェ様ご到着です」
サロンに入るとほとんどの席が埋まっており、侍従とメイドが空いている席に淀みなく案内してくれた。
席に座って待っていると王族の血が濃い公爵家の子女が到着し、近くの席に座った。
なるほど、大体は爵位順に席は決まっているのか。
ではこのテーブルの空いている席に座るのは……。
「アルセイド公爵家ご嫡子アルバート様ご到着です」
その声と共にメイドが案内したのはわたくしたちのテーブル席。
「ごきげんようアルバート様」
「お久しぶりです、アルバート様」
「久しぶりだね、ベアトリーチェ嬢、グレビール君」
王家の方を除く婚約者のいない高位貴族の子女が既に入場しているのなら、残りの3席は王妃様ほか二人の王子殿下用かな。
もっとも他のテーブルにも同様に空きがあるから、ある程度の移動は織り込み済みか。
なんせ今日は簡易的な集団お見合いなのだから。
「残るは王家の方々のみ。初期の席配置としては妥当だね」
「王家は余程姉上を得たいらしいですね。これでは姉上と婚約した人を王太子にすると言われても驚きませんよ」
「否定できないかな。ティオルは優秀だけどね……」
契約している精霊はわたくしの方が上。
望ましいのはきっとわたくしとティオル殿下の婚約なのだろうけれども、わたくし側が頷いていない。
「王家、王妃ミルティア様、ティオル殿下、ゲオルグ殿下、エメリア殿下ご到着です」
その言葉にざわついていたサロンが静かになり全員が立ち上がりそれぞれ礼を取る。
「皆さん、楽にしていただいて結構ですよ」
朗らかな声が広いサロンに響き渡り、全員が頭を上げる。
「本日はわたくしのお茶会に参加してくれてありがとう。席は移動可能としていますので、最初の挨拶が終了後は自由に移動して構いません」
そうだとわかっていても、正式に王妃様から許可が下りるのとでは意識が変わってくる。
こう考えると、第一王女様が早々に婚約者を決めてしまったのはこういった面倒ごとを避けたかったからかもしれない。
一応王太子になる可能性があるからまだ婚姻はしていないけれど、王太子が決まり次第婚姻をしそうなほど仲睦まじいと聞いている。
ただ、お相手が侯爵家の嫡男のため王太子になるかどうかで、その家の継承問題が発生する。
魔術学院時代の恋人をそのまま婚約者にしたそうで、以前お茶会で聞いた話では最初は恋人になる予定はなかったが、気が付けば惹かれあって恋人になっていたらしい。
ナニソレコワイ。前世喪女寄りのおひとり様だったわたくしにはハードルの高いお話だ。
「よろしく、3人とも」
「アルバート兄さん、ベアトリーチェ嬢、グレビール。よろしく」
「「ティオル殿下、ゲオルグ殿下ごきげんよう」」
「ティオル、ゲオルグ今日はお互いにがんばろうな」
王子殿下2人がテーブル席に座るが、やっぱりこのテーブルの女性はわたくしだけ?
まあ初期配置だし仕方がないのかも? 王妃様はエメリア殿下と別のテーブルか。
あっちは男子比率高いのか。しかも公爵家と侯爵家の中でも特に優秀と評判の子息ばかりだ。
そういえば今日のお茶会に他国の留学生は招待されていない。
外交目的で王太子になった人と血統保存用に一人か二人残して後は他国に嫁入り婿入りしたりすることもあるのに、やっぱり王太子になる人が決まってないから簡単に他国と繋げられないのかもしれない。
この国に残すのは誰かも決めないといけないし、王家・王族も大変だな。
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