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「まいどありー。」
最近ネオン街ではペットとしてメダカが流行っている。ブームの火付け役となったのは邪布。ブームの裏側には血の滲むような努力があったが、それはまた別のお話。
「夏霧警察だー!」
入口を蹴り破って警察が押し入った。
「ほぎゃー!」
「無許可でメダカの養殖をしてるらしいな!責任者はお前か!」
「きょえーっ!」
邪布は店の奥へ逃亡した。
「あ!コラ待てー!」
追い掛けた夏霧の目に飛び込んできたのは、養殖場と呼ぶにはあまりにもゴミが散乱する劣悪な環境だった。
大量の水槽がそれを上回るスクラップで囲まれている。
「こんなゴミを何に使うんだ?」
何やら音が聞こえるのでそこを目指すと。
畳の上で茶黄が寝転がってテレビを観ていた。手元に消しカスが大量に入った袋がある。まさかあれがメダカの餌かと見ていると、
「あ~、バイトだり~。」
と、消しカスを貪った。どうやらこいつのおやつだったらしい。
「あいつは後回しだ。」
更に奥へと進み、扉を開いた。
「うわぁ。」
そこは、さっき以上のゴミ屋敷だった。足の踏み場が無いし、破いた封筒やお菓子の袋が山の様に積まれている。その一角で、邪布は布団にくるまって震えていた。
「何だこのゴミ屋敷は。」
「これはゴミじゃないもん!いつか使う物しか置いてないもん!」
「縄文式土器とかいつ使うんだよ。」
「それは...餌やりとか?」
その時、別の扉が開いて茶黄が入ってきた。
「店長ー、休憩入ります。って、おわ!警察だ!あーあ、遂にバレたか。捕まるんだろ俺ら。いいよ、罪悪感あったし。」
よく知らん間に観念した。
(こいつ諦めが早いな。)
「あーあ、皆死ねばいいのに!」
自暴自棄になった茶黄が両手を上げて叫んだ。
(態度悪いなこいつ。)
「さあ、お前も罪を認めろ !」
邪布の顔が悪人面に変貌した。
「しょーがねーなー。そうだよ。メダカを養殖して闇市で売り捌いてたよ。」
「何故メダカなんだ!」
「メダカはなあ、儲かるんだよ!」
「はい逮捕ー!ピピー!」
こうして悪徳メダカ販売業者はお縄についた。しかし、これはまだ氷山の一角。夏霧警察の夜はまだ明けない。
ピッ。
スタッフロールが流れたところでモニターを切った。
「どう?今回のPVは。」
「師匠全然駄目です!私が急ぎ作り直します!」
癒論がデータを持って走り去った。
「うーん、何が駄目だったんだろ?ねえ、茶黄さん。」
茶黄は縄文式土器に入った消しカスを食べながら答えた。
「メダカは儲からんやろ!」