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ネオン街を逆立ちで駆け抜ける二人がいた。
「なあ夏霧、お前習い事とかやってた?子供の頃。」
「あたし?バリバリやってましたよー。」
「何やってたの?」
「分厚い雑誌をパラパラーって噛み合わせてから左右に引っ張る奴。」
「あー、あれね。」
(そんなのがあるのか。よくわかんねーや。へへっ。)
「二段までいったんすよ。」
(二段!?段とかあんの!?面接の時にアピール出来るのかな?)
「茶黄さんこそ、何やってたんすか?」
「私?私は机の上の消しゴムを定規で弾いて落とす感じのあれよ。」
「あー!あれね!いやー、親が習わせてくれなかったわー。」
(え?あれって子供の遊びだよね?習い事ってことは誰か師範とかいたのかな?)
二人は早くこの話題を切り上げたかったが、急に話題を変えたら実は何もわかっていないことがバレるかも知れないので終わるに終われなかった。
「ほ、他に何かやってた?」
「あたしは台風の後の海岸で掘り出し物を漁る奴やってましたよ。」
「へぇ、チャキッてんね。何級までいった?」
「三級までっすね。流石に先生の足元にも及ばずじまいで。」
「やるやん。」
「え?」
「んお?ああ、先生の話ね。先生やるやんって。」
「あーね。いや、話聞いてないんじゃないかって思っちゃった。めんごめんご。」
「もー、うっかりさんだな。め!だぞ。」
「じゃあ次、茶黄さんの番~。」
「あー、冷凍庫の中で濡らしたタオル振り回してカチンコチンにするのあるじゃん?あれやってたわ。」
「何級何級ぅ?」
「これはね、初段までいったんだなこれが!」
「お!免許皆伝じゃん!やってやって!」
「え。」
「はい、濡れたタオル。」
「おぉん。」
茶黄は濡れたタオルを振り回しながら思った。
(嘘は吐くもんじゃねーな。)