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「お仕事ご苦労様。はい、芋焼酎。」
遮音は楽阿弥から一升瓶を受け取った。
「ありがとー。これが無いと仕事にならんのよ。」
「仕事って街の警備か?酒飲んでたらいざという時動けないだろ。」
「ロボットのあんたにはわからんでしょうね、警備の醍醐味が。」
「警備の醍醐味?」
「見なー。」
「何を?」
遮音の指差す先には、買い物帰りの伝電と友隣がいた。
「伝友てぇてぇが最高の酒の肴なんだよなぁ!」
「前は楽邪てぇてぇが最高て言ってたよね!」
「最推しのカップリングなんて変わるもんだろ!」
「火のよーじんっ!」
「何だ。何か来たぞ!」
「火のよーじんっ!」
街道の中央を癒論が電子ドラムを叩きながら行進していた。
「ああ、あれは不審者よ。最近公式の活動を装って勝手にやってる面倒な奴よ。」
「止めろよ!それが仕事だろ!」
「あいつてぇてぇくないもん。」
「趣味か!」
「それに、警備員のバイトは私だけじゃないし。」
ズザザザザ!と激しい水の音が聞こえてきた。
「何だ何だ!」
見ると、癒論の正面から超巨大な竹の流し台が直進してきていた。
「流しそーめんっ!」
激流の上をビート板に跨がって突き進む茶黄がいた。
「火のよーじんっ!」
「流しそーめんっ!」
割り箸を割って左右の手で一本ずつ構えた茶黄だったが、対する癒論の臨戦態勢に戦慄した。
癒論が大きく開いた口の中は洗濯機になっていたのだ。
「ぎゃー!洗濯機!あたしが素麺なのを知ってての狼藉か!糞がふざけんな!おわー!」
足を広げてブレーキをかけようとするも虚しく、洗濯機の中に吸い込まれていった。
「この人でなし!」
コンビニで立ち読みしていたラミィが飛び出してきた。
が。
「万引きだー!捕まえろー!」
コンビニ店員の夏霧がラミィを羽交い締めにした。
「違うんですー!こんなクソみてぇな雑誌知りません!」
「障子に耳あり雑誌に口ありだよ。」
「こいつ万引きしました。」
と、雑誌が喋った。
「ほら。」
「チクショー!二度と読まねーわこんなクソ漫画!」
癒論は取っ組み合いの二人も洗濯機にぶちこんだ。
そのまま何事も無かったかの様に練り歩く。
「止めなくていいんですか?」
「うん!私の仕事はてぇてぇを守ることだから!」
伝電と友隣の帰宅を確認して遮音はタイムカードを押した。