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砂浜沿いの道路を真っ赤なスポーツカーが走っていた。
「休日のドライブは最高ですな、ぺこ太郎。」
「ワンワン!」
ぺこ太郎が上を見上げていたのでその視線の先を追った。
そこには一羽の鳥がいた。
「あー、よその家に産み付ける卵は格別だよなー。ぶりぶり~。」
「あ、伝電ちゃんだー。」
「元からあった卵は外に落として、と。」
巣から卵が落ちてきたのをキャッチした。
「伝電ちゃんってたくあん女子だったんだねー。」
ピキピキと罅割れ、中から赤ん坊が飛び出してきた。
「おぎゃあ!」
「友隣ちゃんおあよー。」
「おぎゃあ!」
「何言ってるかわかんねーし座れよ。」
ぺこ太郎を後ろの座席に押し退けて友隣を助手席に置いた。
「あ!鮫さん!見て見て!」
海の方を指差すので見てみると、浜からすぐ近くの海上に巨大な鮫が浮遊し、泳いでいた。
「ワ~オ!しろくじらだ!しろくじら!」
「違うよ!シャークタイラントだよ!」
「シャークタイラントか~。ん?」
砂浜を駆ける一人の娘に気が付いた。
「おんしゃー!取っ捕まえて市場に売りに行くぜー!」
「あ、惚莇ちゃんだ。」
一瞬でシバいて鮫を陸に引き摺ってきた。
「大漁大漁。」
満足気にしていると、
「密漁者だ!逮捕だ!」
警官姿の夏霧がパトカーで砂浜を爆進してきた。
「げ!ポリス!撤収じゃー!」
人力飛行機をキコキコと漕いで空へと羽ばたく惚莇。
「ヘリ来てヘリ!うん、犯人飛んでったー!」
海を遠目で眺める夏霧。
それを横目にスポーツカーは前進する。
「友隣ちゃんは行きたい場所とかあるの?」
「お魚さん食べたい!」
「じゃあ市場行こうか。」
「わーい!市場に一番乗りー!」
「わー!お魚さんだー!」
「えなになに?お魚サンダー?必殺技?」
「ピチピチ!ピチピチ!」
何者かが急に会話に入ってきたので振り返ると。
「私は新鮮なワニ。お買い得だよ。」
「茶黄ちゃんおあよー。」
「挨拶なんかいいから!見ての通り捕まって売られてんだよ!助けろよ!」
「いくら~。」
「五百円だって。高いね。」
「値踏みしてんじゃねぇ!さっさと買え!」
「しょーがないなー。貸し一つだからね。」
「まいどありー!あんがとさん!」
勢いよく走り出した茶黄の後を追うと、海に飛び込んでいった。
「私はこれからマンボウを食べに行くぜ!あば」
「あわわわわわ!」
それは空から落ちてきた。
惚莇の人力飛行機は着水と同時に大破した。
「あ~。私のぽんぽこ丸が~。ん。」
下敷きになった茶黄に気付き、尻尾を掴んで持ち上げた。
「こんなところに手頃なワニがいるな。よし。これを市場に持ってくか。」
そして。
「値踏みしてんじゃねぇ!五百円だぞ!おめぇら買えよ!」
買った。