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「それでさー、癒論先輩がチョコレートを海に放流したのよ。」
「あっはっはっはっはっ!何でチョコレートを海に捨てたんだよ。」
「あの娘はたまに物質を生き物として扱う癖があるから。変わった娘よねー、前は水槽で鉛筆飼ってたし。」
「...。」
「ちゃんと聞きなー。あれ?楽阿弥?」
そこにはもう誰もいなかった。
「ふむふむ。これがセクサロイドか。」
自動販売機の中に閉じ込めた楽阿弥を惚莇はまじまじと眺めていた。
「くそー!出せー!」
「ポチッとな。」
惚莇がボタンを押すと、自販機の口から伝電が転がり落ちた。
「初めましてご主人様。」
「よし、成功だ。」
「お前!何やってんだよ!」
楽阿弥が自販機の内側から叩くが、びくともしない。
「セクサロイドの量産にはどうしても本物が必要だったんだよ。よーし、早速売りに行くぞー。」
「セクサロイドは闇市でしか売買出来ないのが面倒だよなー。」
「仕方無いよ。社会を回すには階級は必要だからね。」
「ま、何でもいいか。勝てば官軍ってね。」
「はあ。売れますかね。」
「大丈夫!そのおっぱいと母性があれば飛びついてくるよ!ほら、早速誰か来たよ!」
やって来たのは周囲をキョロキョロと見回す不審者、もとい茶黄だった。
「やべぇ。ありゃ警察の面構えだ。逃げるか。」
大慌てで撤収の準備を始めたが、
「この辺でいいかー。」
と、鉄腕の中からシートを引っ張り出して敷き、妙な生き物のミイラを並べた。
「あ、やべぇくねぇわ。同業者だこれ。」
「安いよ安いよー!伝説のカッパのミイラと人魚のミイラだよー!」
(何か怪しげなもん売り始めたなー。)
そこへ、友隣がとてとて歩いてきた。
「へいお嬢ちゃん!ミイラ、欲しくない?」
「おばさん、これ偽物だよー。継ぎ目があるよ。」
「は?なーに生娘が調子にのっとんじゃ!もう怒った!こちとら怒髪天じゃ!サンドイッチにしてやる!」
友隣を押し倒し、巨大なサンドイッチ用のパンで挟んでいる。
「止めろー!子供を苛めるなー!」
惚莇が茶黄を傘で叩いた。
「あーあ、結局おばさんはこんな扱いなのね。はいはい。いいですよーだ。」
急に無気力になってとぼとぼと去っていった。
「ありがとうお姉ちゃん!」
「どういたしまして。」
「お礼にお仕事お手伝いするよ。」
こうして、二人はセクサ伝電を販売し、ネオン街には一家に一台の時代が来たのであった。