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エーデルワイス:大切な思い出

ワレリーは暴れ馬に乗って、村外れのナターリヤの家で一度止まる。

馬の動きが止まり、ガリーナはゆっくり上体を起こすとワレリーは言った。


「あなたはおばあ様の家に身を隠しなさい。村の者は私が引きつけます。」


「え、一緒に行くわ!」


ガリーナはそう言ったが、ワレリーは鋭い目を向ける。


「なりません!」


ガリーナは怯むと、ワレリーは続けた。


「あなたはガリーナであり、レギーナではありません。

本当は共に逃げる必要もないのです。

村の者が通り過ぎたら、急いで家に帰りなさい。」


ガリーナは涙をこらえて言う。


「ならワレリーさんだって…!」


しかしワレリーは言い放つ。


「私は悪魔の儀式という禁忌を犯した者なのです。

あなたは早く行きなさい、邪魔です!」


ガリーナは傷ついた顔をすると、静かに馬から降りた。

ワレリーはナターリヤの家を見ると、家からナターリヤが出てくるのを確認して馬を走らせる。

ガリーナは涙をこらえてそれを見ていると、ナターリヤがやってきた。


「ガリーナ、どうしたの?」


ガリーナは声を詰まらせて言う。


「お願い…!匿ってください…!」


異変を感じ、ナターリヤは何も聞かずにガリーナを家に招き入れるのだった。


 =============================


ガリーナはナターリヤの家でゆっくりしていた。

おやつにミルクとパンを貰い、ガリーナはポツンとリビングの椅子に座っていた。

そこにナターリヤは、服を数着持ってくる。


「これ、昔ワレリーやパーヴェルが着てた服。

その服装じゃ帰る時に見つかったら大変でしょう?これを着て帰りなさい。」


「ありがとうございます…」


ガリーナは気分が落ち込んでいるのか、小さな声でお礼を言った。

ナターリヤはガリーナの様子を見て困った顔をすると、隣に座る。

ガリーナはナターリヤを見ると、ナターリヤは穏やかに言った。


「本当に綺麗だねぇ、ガリーナは。」


「そんな…」


ガリーナはそう呟くと、ナターリヤは深く頷くと言う。


「ワレリーとパーヴェルはねぇ、幼い頃は毎日あなたの話をしていたよ?

懐かしいねぇ…」


「え…?」


ガリーナは顔を上げると、ナターリヤは微笑んだ。


「天使がいるんだーって、二人は言っていたわ。

パーヴェルは悪戯っ子だったんだけど、あなたに好かれたくて悪戯を我慢したんだって。

ワレリーは、あなたから希望をもらったんですって。

二人とも、あなたの話をするととっても元気になるの。」


ガリーナは驚いたのか目を見開く。


「パーヴェルくんだけじゃなかったんだ。」


「ええ。二人ともあなたの事が大好きだったのよ。

心が綺麗なあなたにねぇ。」


「そう…だったんだ…」


ガリーナは呟くと、ナターリヤは深く頷いた。


「ワレリーは私に引き取られた当初はあまり元気がなくてね…。

表へ出ずに部屋に篭っている様な子だったのよ。

パーヴェルは色んな事に興味を示したけど、ワレリーだけは新しい環境に馴染めなかったの。」


「え…意外な過去…」


そう言いながら、ガリーナは目を丸くする。


「でも、あなたに会ってからは変わったわ。

村に通う様になって、徐々に元気を取り戻していったの。」


(私に会ってから…?)


ガリーナはふと、ワレリーと始めて出会った時の事を思い出す。



――ガリーナは十歳の誕生日を迎える少し前、一人花畑でしくしくと泣いていた。


(酷いレギーナ…!また意地悪された…!)


涙を流していると、ガリーナはふと近くにいる男の子に気づく。

まだ幼く、ガリーナと同じで花畑の真ん中でしゃがんだまま俯いている男の子。


(迷子かな…?

それともあの子も、悲しい事があったのかな?)


ガリーナは涙を拭いて、その男の子に近づいた。


「どうしたの?」


男の子は赤い刃物を持っており、ガリーナに向けそうになるが止まる。

それからゆっくりガリーナを見ると、男の子は怯えた目を見せていた。


「大丈夫?見かけない子だから、迷子かな?」


ガリーナはそう言って微笑むと、男の子は喋ってくれない。

ガリーナは花を一つ摘むと、男の子に渡した。


「綺麗でしょ!村の自慢のお花畑なんだ。

ねえ、お母さん探そう?お姉さんも一緒に探すから。」


男の子は花を貰うと、ガリーナは続いて手を伸ばす。

男の子に手を伸ばすガリーナを見ると、男の子は言った。


「なぜ…私は…あなたの仲間じゃないのに…」


ガリーナは首を傾げてしまうと、笑顔を向ける。


「例え他人でも、優しくするのは当たり前だよ!この村の決まりなの!素敵でしょ!」


それを聞いた男の子は呟く。


「村の…決まり…?」


「うん!」


男の子は、ガリーナの笑顔に緊張を解されたのか手を繋いでくれた。――



ガリーナはそんな過去を思い出していた。


(あの後、ナターリヤさんがパーヴェルくんと近くを歩いてたからすぐ見つかったんだよね…。

私、何かしたっけ。)


ガリーナは深く考え込むと、ナターリヤは微笑む。

すると外からノックが聞こえるので、ナターリヤは席を立った。

ガリーナはそれに気づかず考え事を続けていると、ナターリヤの声が玄関から聞こえる。


「レギーナ?そんな子はこちらに来ていません。」


更に、男性の声も聞こえた。


「ここらに逃げたのは確かなんだ!中を見せるくらいいいだろ?」


ガリーナは血の気が引く感覚がする。


(村の人だ…!)


「乙女の家に勝手に入るの!?」


ナターリヤは強く出ると、村人達は弱る。

すると村人達は農具を構えた。


「例えばあさんでも容赦しないぞ!

お前はあのパーヴェルの祖母なんだからな!」


「そうかい。」


ナターリヤはそう呟くと、近くに置いてあった杖を手に取って勇ましく構える。


「だったらこっちも本気で行くよッ!」


ガリーナは危機感を覚えた。


(このままじゃナターリヤさんが…!関係のない人まで巻き込んじゃう…!)


ガリーナはリビングを歩き回り、何か方法はないか考える。

すると、ナターリヤが持ってきた服が目に付いた。


(そうだ…!)


そしてナターリヤの方では、なんと村人の方が圧倒されている。

村人は流石に何の罪も背負っていないナターリヤを襲えないのか、どうやら手を抜いている様子だった。

とうとうナターリヤの気迫に負けて言う。


「わかった。でも家の中は見せて欲しい。

お願いだよナターリヤさん、息子さんの無実晴らしたいだろ…?」


ナターリヤは黙ると、頷く。


「ちょっと待ってなさい。」


そうして中に入るので、村人は少しの間だけ待った。


ナターリヤは小走りでガリーナの元に向かうと、ガリーナはナターリヤに言う。


「ナターリヤさん、ハサミないですか?」


「え?…あるけど。」


ナターリヤは近くの戸棚からハサミを取ると、ガリーナは自分の髪にハサミを入れようとした。

それをナターリヤは止める。


「いくらそんな事しなくても…!私がちゃんと言ってあげるから…!」


「でも、今度はナターリヤさんが怪しまれるわ…!嫌なのそれだけは…!

もう誰かを巻き込んじゃダメなの…!」


ガリーナは目に涙を溜めると、ナターリヤは反論をやめた。

すると、ナターリヤはハサミを持った手を持つ。


「私が切ってあげましょう。どのくらいがいいかしら?」


ガリーナはそれを聞いて優しく微笑むと、ゆっくり目を閉じた。


「できるだけ短く…ワレリーさんより短く切ってください…」


ナターリヤは躊躇った様子を見せるが言う。


「わかったわ。」



家の外にいた村人。

村人の一人は言った。


「なぁ?この間にレギーナが逃がされてるとかじゃないよな?隠すとかさぁ?」


「ん、ナターリヤさんには悪いが、無言で入らせてもらうか?」


「おう!」


村人はそう言って無断で家に乗り込むと、リビングを覗く。


するとリビングには金髪の美少年がいた。

あまりの美しさに一同は息を呑むと、ナターリヤは村人に言う。


「待ってくれって言っただろう?」


美少年は部屋の片付けをしていると、村人は気が引けて言った。


「すいません。ちょっと見たらすぐ出るんで…。」


ナターリヤは村人を軽く睨むので、村人は比較的早く家を出るのであった。






挿絵(By みてみん)

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