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ミモザ:思いやり

数日後。

ガリーナはニコライを連れて保育園までやってきていた。


保育園の建物は以前の地震で建物の補修工事が入っていたが、それでも開園。

ガリーナはニコライを連れ歩くと言う。


「いい?ニコライ。今日も大人しくしているのよ?今日はママも保育園にいるからね。」


「パプリカー!トウモロコシー!サカナー!」


ニコライは保育園の子供達を見てそう言うと、保育園の子供達はニコライから離れていく。

それを見たガリーナは深く溜息をついた。


「うぅ…やっぱり食べ物に見えちゃうか…」


ニコライは昨夜貰った楽器を振り回して遊んでいる。

ガリーナは眠たいのか、目をこすりながら小さく欠伸をした。


(結局昨夜もこれを鳴らして寝なかったからなぁ…寝不足だぁ。)


 =============================


昼を回り、パーヴェルは物資の収集から帰ってきたところ。

ワレリーと倉庫で物資のメモを行っていると、そこにレギーナがやってきた。

レギーナは飲み物を持ってきていて、それをパーヴェルに渡す。


「お疲れ、パーヴェル。」


「ありがとー」


パーヴェルはそう言うと、物資をワレリーと確認していた。

ワレリーはメモを記しつつもウトウト。

パーヴェルはそれに気づくと、横腹を突っついた。

ワレリーはくすぐったかったのかビクッとパーヴェルから距離を置くと、パーヴェルは言った。


「ワレリー兄様寝不足ですか?」


なぜか疑惑の視線を送ってくるパーヴェル。


「な、なんですかその目は。」


パーヴェルは少し黙る。

ワレリーはまじまじとパーヴェルの目を見ると、少し黙ってから言った。


「私にも水をくれませんか?」


パーヴェルは急に笑顔になると言う。


「勿論ですとも兄様!レギーナ、いいですか?」


「え、…ええ。」


レギーナは一瞬嫌な顔を見せたが、大人しく水を持ってくる為に一度倉庫から出た。

するとパーヴェルは再び表情を崩すとワレリーに言う。


「寝不足とか見るとさあ…ガリーナに手を出したんじゃないかとか思っちゃうんですよねー。」


不機嫌な顔をしつつ、しつこいくらいにワレリーに擦り寄ってくるパーヴェル。

あまりに強く擦り寄る為に摩擦熱が発生し、ワレリーは熱くてパーヴェルを押し退ける。

ワレリーは呆れて溜息をつくと、首を横に振った。


「数日前からニコライも入れて三人で寝ているのですよ。

先日パーヴェルから貰った玩具を与えたら、毎晩うるさくて…」


それを聞いたパーヴェルは大笑い。


「アイツいつも遅くまで叫んでるから!一緒に寝ない方がいいですよ!」


「毎夜縛って寝かせるのは逆に心が痛みますがね。」


ワレリーは落ち着いた様に言うと、パーヴェルは笑ったまま言った。


「悪魔相手に心痛ませなくてもいいですよ兄様!」


パーヴェルは平然と言うので、ワレリーは眉をピクリと動かしてしまう。

それから俯くと思う。


(悪魔は絶対悪という思考の村人に…悪魔の瞳を持ったニコライは悪以外の何者にも見えないのですね…。

ニコライ…本当に哀れです…。)


心からニコライの待遇に哀れみを感じているワレリー。

するとパーヴェルは言った。


「そう言えば兄様、レギーナとはどんな関係なんですか?

たまに求められて避けるの大変なんですからね!」


「相手が恋人気取りなだけです。私は表面だけで…」


とワレリーが言っていると、パーヴェルは怒った顔で言う。


「あああ最低ワレリー兄様!それは流石にレギーナ可哀想だわ!」


「え…」


ワレリーは目を丸くすると、パーヴェルは続けた。


「する事しておいて恋人じゃないって、それって世間で言うクズ人間ってヤツですよ兄様!」


「え…

レギーナがパーヴェルを強く思っていて、哀れに思ってしまいつい…」


ワレリーは慌てた様子で呟くと、パーヴェルはワレリーに詰め寄る。


「断れなかったのか!」


「はい。」


ワレリーはけろっとして言うと、パーヴェルは深く溜息をついた。


「ワレリー兄様!そんな事、月の兎だってやりませんって!

全く~、兄様たまに倫理観ぶっ壊れてるんだから。

普通は断るべきですよ!」


「断ってしまえば、レギーナの希望を全て奪う事になります。

レギーナの心の支えは、家族でもなくパーヴェルただ一人なのですから。」


「ほほう、つ、ま、り!」


パーヴェルはそう言ってワレリーの顔に自分の顔を近づける。


「責任取ってくれるって事ですよね?ワレリー兄様?」


ワレリーはその剣幕に驚いていたが、そう言われるとワレリーも強く出た。


「勿論です。」


するとパーヴェルはすぐに顔を綻ばせて喜ぶ。


「じゃあ早く取り替えっこしましょー!」


「事態が収まってからですね。」


「はー!?こっちはもうガリーナと過ごしたくて過ごしたくてしょーがないのによー!」


「辛抱なさい。」


ワレリーはやれやれとしてそう言うと、パーヴェルは頭を抱え込んで叫んでいた。

そしてバインダーを構えると、ワレリーは欠伸をして続きをメモしていた。


「どーしたの。」


レギーナがやってくると、二人は違和感のある反応をする。

パーヴェルは満面の笑みになると言った。


「何でもないですよー。ちょっと世間話に花が咲いたってかー」


パーヴェルはそう言うと、嘘は苦手なのか微妙な顔を見せる。

ワレリーはそんなパーヴェルに視線を送りつつ満面の笑みを見せると、レギーナから水を貰った。


「あ、ありがとうございます。いただきますね。」


レギーナは二人の顔をまじまじと見つめると、ふと呟く。


「二人ともおんなじ顔、本当によく似てるわね。」


その言葉にワレリーは水を喉に詰まらせてしまい、目をかっ開いて吹き零した。

水はバインダーに落ち、メモした紙が濡れる。


「あ!兄様!」


ワレリーは気づいてハンカチで口元を拭かずに紙を拭くと、パーヴェルは笑った。

レギーナは嫌な顔をする。


「汚い。」


「申し訳ありません…」


 =======


その日も夜になってワレリーは家に帰った。

家に帰るとリビングからガリーナの楽しげな歌声と、ニコライにあげた楽器の音が聞こえる。

ワレリーはそれに温かみを感じて微笑むと、リビングに向かった。


「ただいま、ガリーナにニコライ。」


ガリーナはニコライと一緒にいて、ワレリーに気づくと笑顔を向けてくれる。


「お帰りなさい、ワレリーさん。」


「二人で何をしていたのですか?」


ワレリーは聞くと、ガリーナは笑って言った。


「聞いて!今度保育園で、子供達がダンスを踊るの!

その練習!ね、ニコライ!」


ガリーナはニコライに振り向くと、ニコライは楽器を鳴らす。


「あーー!」


「こうやって…」


ガリーナは踊りの振り付けを覚えているのか、歌いながら踊りだした。


「おーはな おーはな さーいた さーいた

くーるる ひーらら はーなーびーらーがーまーうー」


しかし踊っているのはガリーナだけで、ニコライは踊っていない。

それを見たガリーナは困った顔を浮かべる。


「ニコライ…どうやったら踊ってくれるかしら…。」


ワレリーは笑ってしまうと、二人の元へやってきた。


「私達が踊れば、ニコライも真似して覚えるでしょう。」


それを聞いたガリーナは目を光らせる。


「そうね…!一緒に踊りましょう!」


ワレリーは頷くと、ニコライの前で一緒に踊りだす。

ワレリーは歌を一度聞いただけであったが、振り付けまでちゃんと覚えていた。


「凄い!ワレリーさん全部覚えちゃったんだ!」


「短いので…」


ワレリーは微笑むと、ガリーナは楽しそうに踊る。

しかしニコライは楽器を振って声を上げるだけだった。

ガリーナはそれを見ると眉を困らせる。


「やっぱ踊らない…」


「すぐには覚えないでしょう」


ワレリーは苦笑して言うと、ニコライは両腕を上げて言った。


「ごはんー!マーマ!」


それを聞いたガリーナは、気づいた様な顔をしてキッチンへ急ぐ。


「そうそう!今日は家族三人で食べようって思って、夕食我慢してたの!」


ワレリーは驚いた顔をすると言った。


「そんな事しなくても、先に食べればいいでしょう。」


「ダーメ!」


ガリーナは嬉しそうにそう言うと、ニコライは席に着く。

ガリーナは準備し終えると席に着き、ニコライにスプーンを持たせた。

ニコライは楽器を机に置いてスプーンを貰うと、ガリーナは笑顔。


そんな二人を見て、ワレリーは自然と笑みがこぼれ、胸に手を当てた。

幸せを感じている、そんな表情。


そしてワレリーは席に着くと、三人で食事を始めるのであった。






挿絵(By みてみん)

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