表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/5

三話

次にお父様が行った場所は、広場だった。


広場といっても、森の高いところにあるただ広い場所。


近所のお兄ちゃんから聞いた話だと、遊び場のほかに、飛行訓練の場所だと聞いたことがあった。


その話は本当だったらしい。


「さあ、フィル。ここの端っこに立ってご覧。」


お父様が言うので、そっとはしっこに立った。


びゅうびゅう風が吹いて、飛ばされそう。


「おとうさま、どうするの?」


こてり、と首をかしげてお父様に聞く。


「翼を羽ばたかせるんだ。大丈夫。フィルならやれるよ。」


私の不安を感じ取ったのかお父様はゆっくりと頷きながら、言った。


ええい!!


女は度胸だって、近所のお姉ちゃんが言ってたもん!!


翼を思いっきり羽ばたかせてみる。


風でバランスを崩しながらも、体勢を立て直しながら、一生懸命に翼を羽ばたかせた。


そのとき。


急に、風で体が揺れた。


いや、違う!!


これは、私の体が揺れてるんじゃない!!


地面が揺れてるんだ!!


「なッ!?こんな時に地震か!?」


お父様が叫ぶ。


お父様が叫ぶってことは、びっくりするぐらい見たことがない。


これは危険なものだと本能的に感じた。


ガラガラッ!!


足元が急に崩れた。


「おとうさま!!」


私は、声を張り上げた。


お父様の焦った顔がチラリと見える。


私はハッとした。


お父様は王様。


私のことだけを見ててはいけない。


お父様は、群れ全体の心配をしなきゃいけないんだ。


私のことは、二の次にして。


「わたしはだいじょうぶ!!みんなのあんぜんかくにんを、ゆうせんして!!」


そう気付いたら、叫んでた。


森にすごい速さで落っこちていく。


私は、翼を広げていた。


それも無意識に。


翼をひろげたら、落ちる速さがゆっくりになった気がして、翼を羽ばたかせてみる。


目に見えて落ちる速さはゆっくりになった。


これなら大丈夫かも。


おもいっきり、翼を羽ばたかせた。


ふわり、となんとも言えない浮遊感が襲う。


「とんだ!?」


私は空を飛んでいた。


空をゆるりと飛んだ。


風が気持ちいい。


お父様たちは、こんな気持ちで空を飛んでるんだね。


緊急事態だとは分かっているのに、高鳴る鼓動を押さえることが出来ない。


地面にゆっくりと近づいて、どすん、と大きな音をたてて、着地した。


ここは、どこだろう?


私は、きょろきょろと辺りを見回す。


見渡しても場所がわからない。


木に登って見たら、分かるかな?


私は、ヒョイヒョイと木に登り、辺りを見回した。


広場は崖の上の方にあって、広場自体を見ることは、もうできない。


王族の住処である大木も見えなかった。


私は、仕方がないと誰にも言ったことのない奥の手を使うことにした。


「せいれいさん!!私のよびごえにこたえたまえ!!」


私は万物に宿ると言われる精霊に呼びかけた。


『あ!!フィルダーゼだ、久しぶり~』


『ほんとだね~。いままで何で呼んでくれなかったの?』


精霊さんは、そう私に話しかけてくる。


王族の書庫で読んだものには、精霊はいかなる者でさえ精霊に選ばれなければ、話すことはおろか姿さえ見ることは出来ない、と書いてあった。


精霊さんにそのことを尋ねてみたことがある。


『それはね~秘密~!』と精霊さんが言っていたのを覚えている。


「うん、ひさしぶり。さっきのはなあに?」


私がそう聞くと、一匹?の精霊さんが進み出てきた。


『さっきのは、地震。ときどきおこるの。気にしないで。大きくなれば分かるから。……それで、なんの用かしら?』


薄いレースを纏った精霊さん、シルフィーネが聞いてくる。


「ごしんぼくに連れてってほしいの。帰り道がわからなくて。」


私が頼むと、すぐに了承の返事がかえってくる。


ちなみに私が精霊さんの前で大木をご神木というのは、この森であの木は神聖な木だと教えてもらったから。


そして、私と精霊さんの冒険は始まった。


……精霊さんには冒険にならないけど。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ