1話
私は、フィルダーゼ。
竜の国の王女なの。
歳は35。
竜の成体が150歳だから、まだまだ大人にはなれないんだ。
私はもう大人だと思うんだけどどうして大人じゃないのかな?
飛べるようになったら、大人なのかな?
お父様はまだいっぱい遊んでいいからねって言ってるから、私は言ったことないんだけど。
私は、お父様のお言葉に甘えて友達といっぱい遊んでるよ!
ヴァルキーラの森を冒険してるんだ。
まだ知らないところがいっぱいあるからね。
でもお父様は森の外に出るなって言うんだよ。
どうしてかな?
森に朝の光が差し込む気持ちいい朝。
私は青みがかった綺麗な私自慢の銀の鱗を朝日にキラキラ反射させてそれを眺める。
青みがかった銀の鱗は始祖様から受け継がれた王族特有の鱗なんだよ。
今日はね、なんと!!
お父様が直々に飛行訓練させてくれるんだよ!
興奮して早く起きちゃった。
お父様は王様だけど、王様みたいな仕事はなくて、群れのボスみたいなお仕事してるんだ。
まあ、王様ってのは名ばかりで、実際は群れのボスなんだけど。
だから、仲間の竜たちをガイテキから守ってるんだ。
お父様、かっこいいんだよ!
私はお父様より小さい体でとことこお父様の寝てるところまで歩いて行った。
「おとうさま。おきて、おきて。」
私はユサユサと、お父様を揺さぶった。
「う、う~ん。もう少し。」
そんなお父様の寝惚けた声がその場に響いた。
「いや!おとうさま、飛び方おしえてくれるって。」
私はウルウルと涙を目に溜めて言う。
お父様はよくこれに引っかかるんだ。
「……よし、わかった。さあ、起きたぞ。」
その言葉に私はやった、と飛び跳ねる。
その後の、ふぁぁぁぁぁ、という大きいあくびは見なかったことにする。
だって、かっこ悪いからね。
私は前をゆったりと歩くお父様に早足で付いていく。
お父様について行ってしばらくすると、私たち王族の住処の大木の上へ出た。
朝日がヴァルキーラの森全体を照らした。
「おとうさま?」
「いいかい、フィル。」
お父様が私の愛称を呼ぶ。
フィルは愛称なんだ。
私はお父様の言葉をじっと待った。
「私たち竜がなぜヴァルキーラの森に来たのかは知っているね?」
お父様の言葉は疑問じゃない。
確認だと、お父様から教わった。
「うん。人間たちにハクガイされてここまで、にげてきたんでしょ。」
「そうだ。もともと私たち竜は森の外で暮らしてきたんだよ。始祖様の代からずっと。私たち竜は、始祖様と同じ様に人間や他の生き物たちに恵みを分け与えて生きてきた。それで、人間たちは傲慢になってしまった。自分たちが特別だと、思うようになっていったんだ。」
「わるいことなの?自分がトクベツだって思うこと。私だってオウゾクだから、トクベツでしょ?」
「そうだね。でも、フィルは特別な王族だからって友達を傷つけたり、命令したりするかい?」
「しないよ。するわけないよ。だって、皆がいるから私はオウゾクでいられて、くらしていけるんだもん。………それに、友達傷つけちゃったら友達いなくなってあそべないもん。」
「そうか。でも、人間たちは私たち竜を傷つけ殺していった。だから、これ以上同胞を失う事のないように私たちのご先祖様がここへ皆を導いたんだよ。そして、私たち竜だけの国を創った。それが竜の国、ヴァルキーラだ。フィルはそのヴァルキーラの女王となるべき子だ。それを忘れてはいけないよ。だからね、森の外へ出てはいけないんだ。森の中でも危険は潜んでいるのに、森の外はもっと危ないからね。わかったかい?」
「もりの中もあぶないの?」
「もちろんだよ。毒蛇だって森の中に住んでる。噛まれたら死んでしまうよ?」
「そうなの?こわい。」
「だから、遊んでる時も気を付けるんだよ。」
「わかった!!」
「いい子だね。じゃあ、フィル。飛行訓練をしようか。」
「やったぁ!!」
気付けば、日も徐々に高くなっていっている。
あくまでも、ゆっくりと歩くお父様に私はぴょんぴょんと飛び跳ねながらついていった。