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S3

バタフライ

作者: 六藤椰子〃

 「あれ、どこに行ったんだっけ」

ふと目覚め、ふとその事を思い出し、()()を探し出す。誰よりも早起きをしなければいけない私にとっては、重要なのだ。生きる上で欠かせないアイテムであり、必要不可欠であるものと言っても過言ではないだろう。

かといって、そこまで悪いと言う訳でもない。仕方ないと諦めて私は仕度を始める。料理の仕方はかつて愛し合った者から習った。今はどうしているのだろうとだけ考える事はあるが、それ以上は深く考えないようにしている。所詮いまや他人の人生だ。他人の人生を考えるほど、私の人生に余裕はないのだ。

ふと窓の外を見る。天気は晴天。自宅の庭にある花に蝶が止まっていた。ひらひらと舞うその姿は、まるで人生のよう。無関係ではあるけれど、バタフライエフェクトとは良く言ったものである。

 すると階段から足音が聞こえてきた。私は急いで視線を台所に戻す。

相手から「お父さん」と声掛けてきて、そのまま無言で私の隣に立って手伝ってくれた。

ひと段落して「もう大丈夫だよ」と言った時にふと思い出し、

「そういえば、私の眼鏡を探し出してきてくれないか?」と続けて尋ねてみた。

すると何を思ったのかいきなり笑い出し、「ここにあるよ」と私自身の額から眼鏡を取って渡してくれた。

私も思わず笑って「こんな所にあったのか、ありがとう」と答えた。私はこの時間を大切にしたいと考えている。

さり気なく横目で窓の外を見ると、もう蝶はいなくなっていた。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 細やかな日常を鮮やかに描いた作品で良かったです。 眼鏡、たまになくなる時がありますよね。そして案外近くにあったり……。
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