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封印処分の魔術師と魔法少女に憧れる弟子  作者: 杉乃 葵
Episode 1: 未成熟なるものの無意識
17/25

1-13:『魔法少女の闘い(前編)』

 永らくお待たせ致しました。

 まだ『Re:CREATORS』は、七周目で、十週に満たないのでありますが、これ以上お待たせする訳にはいかない為、更新致します。

 また、今回のパートは長くなりそうだったので、前編後編の二部構成にします。

 いままでは、魔法少女パートと魔術師パートの交互構成でしたが、次回は引き続き魔法少女パートの予定です。

 朝、登校してきた智奈の様子をじっと観察する。

 何か変わった所は、ないだろうか? おかしな状態になってはいないだろうか?


 智奈の状態を知っている人は極めて少ない。わたしに師匠、そしておそらく華澄。後は事件の犯人ぐらいだ。智奈本人がどこまで把握しているかは怪しいし、そんな智奈から事情を聞き出したであろう保健室の先生も、どこまで理解しているかわからない。


 事情を知っている人間として、智奈の友だちとして、彼女はわたしが護るんだ。魔法少女の名に掛けて!


「小都、あんた何ずっとこっち見てるのよ。何か用?」


 最近は師匠を締め上げて、もとい、お願いして魔法修行に勤しんでいる。だからきっと何か出来るはず。

 智奈に植え付けられた種を取り出す。前みたいに失敗なんかしないんだから。


「智奈、心配いらないよ。あなたはわたしが絶対護るからねっ!」


 智奈の手をぎゅっと掴んで精一杯励ます。彼女もきっとこれで心強いはず。今まで不安に押し潰されながら、独りで悩んでいたんだよね。何も出来なくてゴメンね。これからは魔法少女こまちちゃんが護ってあげるからね!


「華澄、どうしよう? 小都がまた、とち狂った。なんとかして頂戴。あんたの方が付き合い長いでしょ?」


「無理よ。それが小都だもの。昔からずっとそうだから、もう未来永劫この子はそのままよ」


 あれ? わたし、智奈を励ましたかっただけなのに。

 わたしがずっと狂ってるとかっ! 二人共ひどいよぅ。


 でもでも、それでもわたし魔法少女こまちちゃんはめげずに平和の為に頑張るのです。

 誰にも知られずに平和を護るとか、それっぽいよね!


「小都、貴女また変なこと考えてるみたいね。そんな顔してるわ。バカの考え休むに似たりよ」


 わたしのこと、バカ呼ばわりとか酷くない? 華澄の愛のムチが痛いよぉ。長年ずっとこの愛のムチを受け続けてきたせいか、最近は快感に変わって来ているようで怖い。決して、わたしはそんな趣味はない。ないと信じたい。華澄は間違いなくSだけど、わたしはMじゃない。Mじゃないぞぉー。

 はっ! もしかしてこれは、華澄による調教というやつなのだろうか……


 そんなおバカなことを考えていたとき、華澄の背後に違和感があった。

 何か異常なモノが、在ってはならないモノがわたしの眼に映り込んでいる。

 そのせいか、中々何が映っているのか理解が追いつかない。いや、解っているけど心が理解したがっていないのだ。


「小都? どうかしたの? あほ面に磨きが掛かっているわよ」


 華澄のムチに反応することも出来ないぐらいに、わたしは動揺していた。

 此処は3階の教室。

 香澄の後ろは窓。窓の向こうは外。


 その窓の向こう側にアイツが浮いている。


 そう、濃紺のゴスロリ幼女だ。

 

「華澄っ! 後ろ!」


 わたしが指差した窓に振り返った華澄と、窓の外のそいつが見つめ合う。

 華澄が負けることはないと思うけど、わたしも急いで携帯用魔法ステッキを取り出して臨戦態勢をとる。


 華澄は見つめていた窓から目を離し、こちらに振り向いた。そして驚くことを平然と言ったのだ。


「後ろがどうかした? 何もないけど?」


 え? まじ? 見えないの? こいつ見えない奴なの? 召喚獣とはまた違う感じなんだけど。

 召喚獣は魔法を修めた者でも、もやっとした感じに見える。でもこいつは、ちゃんとした実体にしか見えない。

 普通の人には見えないにしても、華澄が見えない筈はないのだ。だって華澄はきっとイレズーレの一人だから。


 振り向いてゴスロリ幼女とまともに向き合った筈なのに、微塵も動揺を見せず、本当に何も見えなかったように振る舞っている。そういうことなのだろうか? そうだとしたらなんて強靭な精神力なんだろう。


 真相がどうあれ、華澄は闘う意志はないのは先程のコメントで明らかだ。ここはわたしがやるしかない。


『オネエチャン アソバナイ?』


 その声は、言葉ではなく、脳の芯に直接流れ込んできた。


 こいつの話は、師匠から聞いている。師匠が前に遭遇して術を掛けられたって言ってた。

 何だっけか? 邪眼とか言ってたっけ? 

 対処法は、相手の眼を見ないこと。そして声を聴かないこと。返事をしないこと。

 確かそうだった筈。


 そうと解っていても、ゴスロリ幼女から眼が離せない。頭で必死にアイツを見ないようにと命令しているのに、身体はぴくりとも動かない。これもアイツの術なのかわからないけど、どうしても眼がアイツに行ってしまう。


「小都、何をぼんやりしているの? そろそろ授業が始まるわよ。席に着きなさい」


 華澄が立ち上がり、その身体がわたしの視線をゴスロリ幼女から塞いだ。


 華澄、ナイスアシスト!


 身体の自由が効くようになった。

 とはいえ、わたしお得意の結界発動しちゃうと、智奈をきっと巻き込む。

 普通の人は大丈夫なんだけど、今の智奈だと身体の一部が影響を受けちゃうだろうし。


 どうしよ〜


「みんな席に着け。授業始めるぞ」


 げっ、先生来た。

 

 華澄ぃ〜、どうしよ〜?


 華澄は、素知らぬ顔で席に着いていた。


 いやあんた、直ぐ隣の窓の外にゴスロリ幼女が浮いてるのに、よく平然としてられるよねっ!


 かくなる上は伝家の宝刀!


「先生っ! トイレ行って来ますっ!」


 脱兎の如く、教室を飛び出す。

 後ろで先生の苦言やらクラスメイトの笑い声が聴こえたが、黙殺黙殺。


 ブォン——風を切り裂く音と共に、右腕に激痛が走る。


 えっ? なに?


 その瞬間、足がもつれて廊下に倒れ込んだ。


 転ぶなんて随分久しぶりだ。いつ転んだのか思い出せないぐらい。

 上体を起こして痛む右腕を確認する。

 目立った原因らしきものは何もなかった。何一つ変わらない。いつものわたしの右腕ちゃん。


 それにしても、いったいなにが……


 視線を巡らす。誰かが——何かが——わたしを狙っている?


 走って来た教室に続く廊下を見ると、そこに鎌を持ったゴスロリ幼女が立っていた。




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