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封印処分の魔術師と魔法少女に憧れる弟子  作者: 杉乃 葵
Episode 1: 未成熟なるものの無意識
11/25

1-08.5-1:『魔法少女の休息(その1)』

 今回は、ちょっと中休み的に短く刻みます。

 一晩の真琴小都の日常です。

 ストーリーは繋がっています。

 お母さんにストローと折り紙を買ってきてもらった。

 ストローを2本繋げてセロテープで留めて、黄色の折り紙2枚を、厚紙と一緒に星形に切ってストローに先にくっつけると出来上がりぃ。


 じゃじゃーんっ!


 自作簡易魔法ステッキィィ!


 これでわたしは無敵だわ。


「そんなもの作る為に買いに行かせたの? 小都」


「えへへ。だってこれがないと、わたし安心出来ないの」


 はぁ、っと溜息を落とすお母さん。いやいやお母さん、わたし魔法少女ごっこしてるんじゃないからね? ステッキがあるのとないのとで魔法のノリが全然違うんですのよ、ほんと。


 これでいつまたアイツが来ても大丈夫……よ。


 いつも使っている本格仕様のステッキは、夜のパトロール行く時だけに使ってるので普段は押し入れにしまっている。持ち歩き用の指示棒型ステッキは、多分学校の保健室で落としたんだ。退院したら取りに行こう。

 あ、駄目だ。誰かが見つけたらきっと捨てられる。師匠に取って来てもらおう、そうしよう。


(わたしのステッキ、保健室にあるかもなので持ってきて〜)


 送信っと。


 スマホのメッセージアプリで師匠にお願い完了!


「小都、なんか楽しそうね」


「ん? そう? 普通よ、普通」


 うん、普通。いつも通りだ。

 今日は師匠が拗ねたりするから、ちょっと変な感じになっちゃったけど。


 これがわたしの普通なの。


「じゃあお母さんは、家に帰るから。小都、独りで大丈夫よね?」


「あ、うん。大丈夫、大丈夫。子供じゃないし」


「あんたのそれ、まったく説得力ないけど。まあ、いいわ。何かあったら、すぐ電話して」


「はーい」


「明日の検査の時間に、また来るから」


 明日の検査で異常が無いようなら退院とのことだ。まあ、異常がないのは確定済だけどね。


 夜また何かあるのかな? また何か襲って来るかな?

 でも今のわたしは違うのだっ! ステッキも準備したのでいつでも来いなの。ぶっ倒してやるんだからっ!

 いつでも倒せるように枕元にステッキをセット。何度かステッキをさっと取る練習を繰り返す。

 よし、完璧!


 師匠が側にいないのが不安だけど、師匠も独りだし、師匠も大丈夫かなぁ?


 師匠には、何かあったら病院抜け出して駆け付けるからっ! って言ってあるし。

 それに独りで勝手に危ないことしないように、わたしが退院する迄は調査しちゃだめぇって言ってあるし。

 勝手に調査に行ったりしたら魔法少女の姿で四六時中まとわり付いてやるって言ったら、青褪めてたから大丈夫。

 師匠は大人しくしてるはず。


 師匠、ちゃんと大人しくしてるかなぁ。


 病院って暇だなぁ。もう後は寝るしかすることないし。


 ポチポチポチ (ひま〜) 送信っと。


 ……


 師匠、お返事くれない。


 わたしは寂しいと死んじゃうんだよぉ〜。ししょぉ〜の人殺しぃ〜。


 うーん。智奈はまだ調子良くないだろうか、パス。華澄に送っちゃお~。


 ポチポチポチ (ひま〜) 送信っと。


 ピロン (うざい)


 はやっ! そしてひどっ。


 う~退屈じゃぁ~。四人部屋だけど、たまたまわたし独りしか入院していないので誰もいない。

 まあ、何かが襲ってきたときには都合がいいけどね。思いっきり闘えるし。


 なんで病院の消灯時間って九時半なんだろう。早すぎる。わたしいつも寝るの零時だよ。零時。三時間も早いよ。寝れる訳ないじゃん。


 ……って思ってたのに。




「小都、起きて。いつまで寝てるの?」


 ほえ? あらら、わたしいつの間に寝たん? もう朝? 朝になってるよ。


「早目に来ておいてよかったわ。あんたが起きないからって、電話もらって来たのよ。もうすぐ検査始まるから、早く支度しなさい」


「ふぁ~い。そっか。検査するから朝ごはんないんだった」


 しかし、わたしいつの間に寝たんだろう。襲われてたら危なかったな。

 いや、きっとわたしに恐れをなして襲って来なかったのね。ふふふ。


 

 

 検査の結果は異常なし。

 わたしは思わずガッツポーズをキメた。

 よっし! これで十年は戦える!

 

 無事に退院が決まった。


 次回は、『魔術師の休息(その1)』です。

 こちらも短く刻む予定です。魔術師 風見道真の日常的な感じで一晩の物語です。

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