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二年目 五月

 6日


 ルーイがそれなりに処理しておいてくれたとは言え、二ヶ月分の仕事を一週間で片付けるのはなかなか大変だった。ほとんど休憩時間はとれなかったし、睡眠時間も削られがちだ。

 ただ、それで助かっている部分もある。まだリーニ嬢に面と向かって返事を聞く勇気が出ない。



 9日


 なんとなく顔を合わせづらいままここまで来てしまい、今日も話をする機会はなかったのだが、夕刻見かけたリーニ嬢はどこかすっきりとした表情をしていた。彼女の中で何か答えが出たのだろう。見ていてそれがわかってしまった。それがどんな答えなのかはわからないが……


 私もそろそろ覚悟を決めるべきなのだろう。実際、これ以上待つことは出来そうにない。



 10日


 待ち合わせをしていたわけではないのだが、リーニ(こう書くのはまだ慣れない)が来てくれるのではないかという確信はあった。求婚したときと同じ場所、同じ時間に答えをもらうことができた。

 最終的に勇気をくれた、というか余計な緊張を吹き飛ばしてくれたのは羊様だった。おかしな話だが、祝福してくれたように思える。

 とはいえ、未だに実感は湧かないのだが、


 ……夢じゃないよな?



 12日


 各方面からの(割と荒っぽい)祝福を受けているうちに段々実感が湧いてきた。両親に話を通し、リーニの実家にも連絡して、父上が妹君たちにも式に間に合うよう来てもらわなければ。そうなるとルーイと姫君が推す日取りでの挙式は難しい。

 ルーイの希望はどうでもいいが、姫君の希望はリーニのためにもできる限り叶えたい。



 15日


 杞憂だったようだ。メーメエ家一同は本日到着した。

 どうやら例の山道を馬車が通れるようになると同時に出発したらしい。明日はリーニを実家に連れて行く予定になっていたので、私もリーニもその準備であまり時間を割くことが出来なかったのだが、伯爵――義父上が向こうの国王の親書を携えていたこともあり、ルーイと陛下が国賓として遇してくれたようだ。



 16日


 リーニを両親に紹介した。母上は「素直でかわいらしい」と評していたし、父も「良い娘さんだ」と言っていたので、二人とも気に入ってくれたのだろう。リーニなら大丈夫だろうとわかってはいたが、やはりほっとする。

 最近お互いに忙しかったので、行き帰りにのんびり話すことが出来たのも良かった。またしばらくこういう機会を持つのは難しくなるだろう。


 私が父に近況など報告している間、母とリーニはずいぶん仲良く話し込んでいたようだ。帰り道、リーニは私の両親のことをえらく褒めちぎっていた。リーニから見るとあれは理想の夫婦らしい。

 自分の両親のことなのでよくわからないが、仲が良いのは確かだ。それに関しては、私も見習いたいとは思う。


 それはさておき、母とリーニが何を話していたのかは若干気にならないでもない。何か余計なことを吹き込んでいないと良いのだが……。



 18日


 結婚後もしばらくは二人とも城に住むことになるだろうし、結納金もこちらへ来る旅費と滞在費で消えると思われるので、正直嫁入り道具は必要ないと思っていたのだが、メーメエ家は既に用意してきていた。

 それは大変ありがたいのだが、当てが外れたらどうする気だったんだ。自信満々過ぎる……



 21日


 両家の家族とルーイと姫君で話し合った結果、挙式の日程は(当初ルーイと姫君が希望していたとおり)六月十九日に決まった。

 それは良いのだが、そのためのスケジュール調整が既に完璧に終わっているのはなぜだ。リーニにはルーイのアレなところを知らせる必要はないので誤魔化してしまったが、ものすごく作為的なものを感じる。

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