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一年目 十一月

 1日


 どうも今日はミス・メーメエに元気がない様子だった。私で力になれればと思うのだが、どうしたら良いのか皆目見当もつかない。いずれ話してもらえたときに力になれれば良いのだが、ミス・メーメエに元気がない時はとにかく会話が弾まないということが今日判明してしまった。このような状態では、彼女を元気づけることなど不可能だろう。己の会話能力の低さが呪わしい。


[今後するべきこと]

・会話能力の向上を図る


 しかし、これはどう考えても自分のためだ。私はミス・メーメエともっと話していたいのだ。



 3日


 どういう成り行きなのか、ミス・メーメエから多くの質問を受けた。家族のこと、結婚の予定、彼女の国へ行ってみたいかどうか。すべて正直に答えた。彼女の悩みとどう関係しているかは定かでないが、役に立てたなら良いと思う。

 しかし、結婚とは……。ミス・メーメエには結婚の予定があるのだろうか。そう考えると複雑な気分だ。自分自身に予定がなく、ろくな返答が出来なかったのも気にかかる。

 もしもミス・メーメエが誰かと結婚するのだとしたら、私はそれを祝福出来るのだろうか。あまり考えたくはないが、出来そうもない、ような気がする。



 14日


 妙に皆に親切にされる日だった。特に思い当たる節もないので困惑しているが、ルーイの言うところによればたまにあることだから気にする必要はないとのことだ。ルーイの言を信用して良いのかどうかは迷うところだが、今のところは放っておくしかないのだろう。誰に聞いても笑ってはぐらかされるので、他に手の打ちようもない。

 夕刻、羊様を城外へ送り出しているときにやって来たミス・メーメエだけはいつも通りだった。正直かなりほっとした。



 19日


 羊様の冬毛もだいぶ生えそろってきた。もう冬がすぐ側まで来ている。今年も騎士団の皆で気を引き締める時期が来たということだ。年末は実家に戻り、家族団欒の時を過ごす者も多いが、それだけに気持ちに緩みが出がちだ。私も含め、気をつけていかねばならない。



 26日


 ミス・メーメエの様子が妙だ。にこやかにしないのかと聞かれたが、私はこの通りなのですぐには難しい。ルーイに言われたとおり、表情筋を鍛えようとはしているのだが。

 笑ってくれ、とも頼まれたが、そう言われると逆に表情が強張ってしまう。自分でももう少し表情を出していきたいとは思うのだが、なかなか一朝一夕にどうにかできるものでもない。やはり引き続き表情筋を鍛えるしか手はないのだろう。


[今後するべきこと]

・引き続き表情筋を鍛える



 30日


 ミス・メーメエは今日は随分と疲れていたようだ。羊様を牧場に帰している間中、眉間にしわが寄っていた。こんな時に慰めの言葉一つかけられない自分を情けなく思う。ただ、彼女は別れの際に私に礼を言ってくれた。黙っていることしか出来なくとも、彼女の気を紛らわせる程度の役には立てているのだろうか。そうであれば嬉しい。

 ミス・メーメエはもうだいぶこの国の文化や風習にも慣れ、仕事で戸惑うことも少なくなっている。最早私が手助けできることはほとんどないのだろう。だからこそ最近考える。何か他に、彼女のために出来ることはないのだろうかと。

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