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痛みの音色  作者: 蛇口
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7/21

act.2

   7


 立ち込める硝煙の中、二人の魔法使いは動かない。

 私も。

 魔理沙も。

 徐々に晴れ行く煙の中に、小さな影がゆらりとゆらめく。

 結果から言うと、私に害と呼べるほどの被弾はなかった。

 後手的になってしまったものの、防御陣の魔法が上手く作動してくれたようで、こちらに飛んできた残弾は防ぐことができたのであるが――それもそもはず。そもそも防御陣を用いる必要性がまるでなかった、と言わされてしまうほどに、驚くほど魔力弾は通過してこなかった。

 上海、という壁を乗り越えられずに。

 実際に、私と魔理沙――魔理沙が放った魔力弾、距離にして眼前二メートルという短い空間に、障壁ともいえる代物があったとするがごとく。

 私の致命傷を狙うようなものに至っては、絶滅していた。

 その行為の主――上海。



「バッカジャネーノ」



 既に本日何度目かさえもう忘れてしまったような、いつもの口癖を耳にして安堵する。

 なんだ、軽口が叩けるくらいには負傷していないんだ――そんな幻想を抱いてしまった。

 もしかすると、私の願望が、希望的観測が生み出してしまった幻聴だったのかもしれない。


 上海の両腕は焦げ落ち。

 片足は膝から下がなく。

 金紗に瞬いていた髪はズタボロにちじれ。

 顔の半分は。

 そこになかった。



「上海!?」

「……ケッ、……コンナノ、ヘデモ、ネエ……ゼ」

「ごめんね、上海!! 私が見誤ったせいで!!」

「…………」

「ごめん、ごめんなさ――」

「バッカジャネーノ」

「……上海?」

「マモルコトハ……アタリマエ、ダゼ……」

「……!! そうね、そう、よね……!あなたは私の人形だものね、当たり前、なんだからね……!」



「蓬莱、こちらへ」

 言葉を交わさず、蓬莱人形は大怪我を負っ上海を連れ、撤退する。

 生憎と私の人形たちは多機能ではない。

 人形が人形を修復する、なんて機能性はもともと構成していない。

 家事や戦闘でさえ、指示を与え、役割を与えて行わせているだけなのだ。

 だから。

 だからこそ。





「ごめんなさい、魔理沙」

「……なんのことだ?」

「これから先、加減はできないわ。だから」

「だから?」

「うっかり殺しても、許してね」





 早急に、勝つために最速で最高で最適な判断を。

 早々に、終わらせる優美に優雅に悠久の勝利を。


 左手に抱えていた魔導書を消す。

 消すといっても、一時的に本棚に片づけるのと同義の行為だ。

 そして、両腕とも動かせる状態を確保。

 始めよう。

 戦いを。




「上海型人形――、Vier(フィーア)」

「……!!おいおい、数で攻める気か」

「今度は四体同時よ、どこまであなたに堪えられるかしら?」

「上等っ、こちとら負けられないぜ!」



 指元に填めた指輪――傀儡の糸をまとめている指輪。

 何度も操作し、魔理沙に行動パターンを読ませないようにしつつ、攻撃を繰り返していく。

 時には一体のみで。

 最大四体同時に。

 


「ほらっ!!後ろががら空きじゃない!!」

「くっ!?」

「いけいけいけいけぇぇぇぇえええええええええええええ!!」

「……!ちょっと、こ、こいつは、ヤバいぜ!?」


 いくつかの法則を交えながら、高速に空中を自在に動き回る人形たち。

 態勢を整わせないため、連続したラッシュで魔理沙を襲い続ける。

 それは一つの舞踊のようで。

 そして一種の武闘だった。




「……くぁあ、くっそ、仕方ない!使いますか!」

 魔理沙は構える、彼女の最大火力を担っている、あの主砲を。

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