act.3
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伝統の幻想ブン屋――という名前を自称し始めたのはいつの頃からだったか。
そんなことを、本当にたまに、思い出す時がある。
思い出すというよりも思い返す、と言ったところがより近いかもしれない。
白狼天狗のように忠義を糧と――生き甲斐とできない私には、今のように自由な行動、特に、単独行動を基準とする新聞記者という今の肩書きを、大層性にあっているな、と思い返えすのだ。
彼らのように絆で、仲間意識での連携はきっとできないだろう。
私はいつだって、風のように。
自由なその在り方で、好きに報道する。
これこそが私、伝統の幻想ブン屋――射命丸文の性質なのだ。
性質が悪い、ともよく言われるが。
そんな私が。
新聞記者として私が、今回の件に触れたのは、とある一人の少女の依頼からだった。
霧雨魔理沙。
道具屋(を経営しているものの営業してはいない様子)で生活している、普通の魔法使い。
普通とは言い難い面――動かない大図書館やカリスマ吸血鬼の妹、人形遣いなどという常人ではありえない交友関係を持っているという時点で普通、という枠組みからはみ出ているかと思うが。
まあ。そんなことは、とりあえず、いい。
彼女から、依頼されたことで、事件に関与したのだ。
依頼内容は単純明快。
人捜しだ――もっとも、その相手が相手なのだが。
博麗霊夢。
博麗の巫女にして博麗結界の管理人。
そんな彼女が。
行方不明。
そんなことがかつてないことだ。
そして、私は感じた。
新たな異変の香りを。
そして、今。
アリス・マーガトロイド。
霧雨魔理沙。
本来友人関係で友好的な関係を築いているはずの――人形遣いと普通の魔法使いが。
戦闘をしている。
『弾幕ごっこ』ではなく。
『戦闘』を行っているのだ。




