啓蟄
鳥が、空を飛んでいる。
その光景を見ながら、高校2年生の井野嶽幌は、これから来るであろう受験生としての重圧を、どうやってやり過ごそうかと考えていた。
「やってらんねーな、まったく」
「受験?」
双子の姉の桜が、家の目の前に座っている幌に言った。
「そ。まあ、どこに行こうかは、大体決めたから、それ目指して勉強すればいいんだけどね」
幌が赤本を桜に見せた。
「まあ、ぼちぼちと勉強進めているけどね」
「へー、ちゃんと勉強してたんだー」
「そうさ、どこぞのブログばかりしている姉ちゃんとは違うんでね」
桜へ幌が単調な調子で返す。
どうやら図星だったようで、桜は黙った。
「あ、鳥だよ」
桜は話をはぐらかす。
鳥は、どこまでも自由に飛んで行っていた。