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ヤレヤレである。
命の恩人に向かって化け物呼ばわりとは酷い言はれようではないか。何をして化け物なのだと多少なりに落ち込んだが、所詮ここでの自分は異質でしかないとルシアは割り切った。
暴れたせいで右肩の傷パットの表面が蒼色に染まっていたので、手早くパットを剥がし傷の具合を診、炎症・化膿止めのスプレーを吹く。このスプレーはかなり傷に沁みるのだが相手は意識を失っているから幸運な奴だと皮肉る。
意識を取り戻したガイは、強制的に意識が奪われるときのことを思い出し、辺りを窺い傷の痛みに堪えながら何とか体を起こした。
洞窟の中は静寂に包まれ、下火になっている焚き火のわずかな明かりで周りを見回せば自分以外ここにはいなかった。
逃げるなら今しかないと立ち上がろうと試みたが上半身を起こすだけで体力を使い果たしてしまい、結局元の状態に戻ってしまった。そのとき右肩を地面にしたたかに打ちつけ、のたうち回る羽目になってしまった。
「バカか、お前は」
いつ戻ってきたのか、その上かけられた言葉に呆れたような、バカにするような響が含まれている。しかし今はそれどころではない。
あまりの痛さに脂汗が吹き出て息もうまくできない。
「次は傷口を診る」と言うが早いか、肩に手を置くなりベリッという音とともに更なる痛みと、その直ぐあとに嗅いだこともないような匂いの物を吹きかけられ、悲鳴を上げてしまった。その後にヒヤリとするモノを傷口に張られ、止めとばかりにバチンとそこを叩いた。
のた打ち回る程の痛みに苦しんでいるところに追い打ちをかけるようなこの仕打ちは一体なんなのだ。
「これは炎症と化膿を止める成分が含まれている。・・・沁みるだろ」
どこか楽しんでいる含みを感じさせる言葉に腹が立つ。
「痛み止めがいるか?」
いたみどめ?それは何だ?魔物が使う妖術か呪いのたぐいなのか?いやそんなことはどうでもいい。今はこの痛みが、いやそれ以上に腹立たしさで手一杯だ。
そう、今は恐怖よりも怒りのほうが勝っている。
ケガをしていなければ、このどうしようもない痛みがなければ、殴りつけてやるところだ。
右肩を庇うようにうずくまっているガイを容赦なく仰向けにし、口に痛み止めの錠剤を数粒放り込み、続いて鼻を摘まむと飲料水を口に流し込んだ。
鼻と口を塞ぎ強制的に嚥下させた。
「よし、飲んだな。直に楽になる」
無理やりの投与だったので咳き込んでしまい、文句を言いたいのに咳が止らず言えない。やっと収まったので文句を言おうとすれば「痛みがひいただろ?」と聞かれ、そういえばあのひどい痛みがうそのように引いていることに気付いた。
久々です。
短いですが、とりあえず投稿します。