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翌朝、あれほど降っていた雨はうその様に上がり、天は雲ひとつなくザンザンと太陽が照り付けていた。早朝にもかかわらず気温は高く湿度も高い。この時間帯でこれだけの高温多湿度で不快感が募る。この先どれだけ温度が上昇するか皆目見当がつかない。


若き長は屈強な若者を20人連れ、塀の外にいた。と言うのも、昨夜ルシアが当身をした者の一人が意識を戻し後姿を目撃していたのだ。そして目の前で忽然と姿を消すところも。

男はルシアを魔物だと思い込み、この国に古くから言い伝えられている黒い魔女だと騒ぎ出したのだ。


≪闇の空を火の玉落ちるとき、暗黒の扉開き、魔界の女王目覚め、人々を死へ誘わん≫


はじめは誰も信じなかったが、あの日、暗黒の夜空を赤い星が未開の地へと吸い込まれ、その後火柱が上がり地を大きく揺らした。そしてその数日後からあの惨事が起きたのだ。

はるか昔から言伝えられる伝承が本当であれば、今起きている奇怪な死人は黒い魔女の仕業と不安と猜疑心がいつしか確信へとすりかわっていた。

何か手を打たなければ近い将来ここは死滅してしまう。長は真偽を確かめるため赤い星が落ちた場所を調べるため森を越えた先の未開の地へむけて足を踏み出したのだ。


ルシアは枝が密集した樹の陰から総勢21名の隊列を見ていた。

手には槍、背には剣を背負っている。

服装は下半身を幅50cmほどの布、あるいは皮をなめしたもので股間を保護するように

巻き、両切れ端は前部と臀部を隠すように垂れている。

腕と足には皮をなめした防御用の籠手と脛当てがはめられている。


(あれがリーダーか・・・)


先頭を行く若者に目を向ける。赤銅色の肌に青深緑色の長髪を後ろで三つ編みにし、額には銀の細いサークレット。これは他の男たちにもあり、昨夜調べた妊婦の額にもあった。

長身で精悍な美丈夫。古代期にしては綺麗過ぎる顔と骨格にルシアはいささか疑問に思った。そればかりか、この惑星の原生種の多岐類であることに違和感を感じていた。

人型。人の顔を持つ鳥類。人型で頭は魚、全身鱗の人魚。人狼にドラゴン、そして不定形人アメーバー。進化の過程で枝分かれし、それぞれの環境にあった進化していくことは分かる。しかしこの惑星はおかしい。科学者ではないが何かが変だということは分かった。


彼らが何処へ何しに行くのか、狩に行くには何か決意と悲壮感が漂っていた。

ルシアは規律違反とわかっていながら純粋な好奇心から後を追った。やがて道らしいものがなくなり目の前を鬱そうと覆い茂る木々の壁に突き当たった。

ここから先は未開の地である。

先頭に立つ若き長は背に負った剣を手に持ち構えるとおもむろに行く手を阻むものを切り開いていった。

すでに太陽は真上にまで昇り、気温はかなり上昇し、木々が密集しているため風の通りが悪く耐えがたい暑さになっていた。そこへ道を切り開くという力仕事に彼らの体力は急速に消耗し、限界はあっという間に来てしまった。

長はみなを休ませ、腰に携えた皮袋の水を口に含み大きく息を吐いた。今のところ猛禽類に遭遇していないのは幸運だった。しかしこれから日は傾き始める。もう少ししたら野営の準備をしなければならないなと、長は木の幹に背を預け、なにかが起きてもすぐに行動が起こせるように剣を手放さないでいた。


(今日中には無理か・・・)


じっと様子を伺ってきたルシアは苦笑した。彼らは呼吸するのにも肩を大きく上下させるほど体力を使い果たしてしまっているようだ。それに対して彼女は汗ひとつ掻くこともなく熱さも不快さも無縁といった風情で佇んでいた。

彼女の装着しているスーツは体感温度調整が出来、能力でも体感温度を自在に調整しているので、熱くもなければ寒くもないのだ。


(目指すはあそこか・・・)


ここまでの行程から行き先は不時着地点であることは想定できた。

現地点からおよそ20Km先。しかし道を切り開くのにこうも手間がかかっては、2日、あるいは3日かかるだろうか、彼らが着いた時、そこには何もかもが焼け、地表が剥き出しになっているだけだろう。

ルシアは改めて先頭を切って道をひり開く年若い青年に興味を覚えた。

猿人の犠牲者は不時着から1、2日後にはあの集落の中で出ているのだろう。何かの因果関係がないか調べるための行動だと推測できる。それにしても、行動を起こすこと自体異例ではないのだろうか。

歴史的な統計は知らないが、仮に神と銘付けるが、そういったものに祈りを捧げ災いが遠のくのをひたすら祈り待ち望むのではないのだろうか。それとも信仰となるものがまだ存在しないのか。

日はまだ高い。しかし気温はさらに上がっている。

鬱蒼とした木々から覗く空に雲が覆い始めていた。雨がやってくるのだろう。

ルシアは回収作業の進み具合を見るために彼らを後にした。





ほぼ回収が完了し、後は猿人を片付けるだけだ。捕食がある以上、潜伏先は間違いなくあの塀の中のどこか。今夜もう一度潜入し決着をつけてしまおうと考えていた時、背後の草むらがガサガサと音を立てて揺れた。

風はない、明らかに何かがそこに潜んでいる。

ルシアはそれが何であるのか探るため内耳に仕込まれた通信機で宇宙そらに待機している母船のメイン・コンピューター、レイに探るよう命令した。

常に彼女の半径10m圏内をセキュリティしているので、すぐに返事が返ってきた。


『レベル3、回避又ハ排除シテクダサイ』

「解かった」


ルシアは戦いやすいように更地の中央に歩を進ませるとやおら振り向きざまソードガンを射出した。

青白い熱エネルギーの帯が草むらに潜むものへと打ち込まれ、その直後に凄まじい雄叫びとともに巨大な四足の物体が飛び出してきた。

それは虎によく似ているが倍の大きさがあり、それでありながら恐ろしいほどの俊歩だ。


「殺られるか!!」


飛び掛らんと前足を上げたその瞬間無防備な腹めがけて足蹴りを食らわせ、その反動を利用して空中に飛び退り、一回転して着地した。

腹を強かに蹴り上げられた猛獣は目を見開き鋭く長い牙をむき出すと再び襲い掛かってきた。ルシアは長居は無用と、止めを刺すために猛獣に向かって加速する。そして2体がぶつかる寸前、彼女は聞き足を軸に回し蹴りをそれの側面に打ち込み、一瞬の隙を着いて目にも留まらぬ速さで今度は顎を蹴り上げ、ルシアはそのままバク転すると跳躍を着け高々とジャンプする。

一瞬の速度が猛獣の目には付いていけれず、目の前から消えたように錯覚を及ぼし首を左右に振った。ルシアは落下の加速と能力を合わせ、その上頭部へ両手の拳を叩き込んだ。"バキッ〟と、鈍い音が耳に響き両拳からが頭蓋骨が砕け脳みそのグニャりとした感触が伝わり、微かに不快を口元に現しそこから数m離れた地点まで後ろ向きに飛び退った。

猛獣の頭部からは噴水のように血を吹き上げその巨体を崩した。


「こんなものまで居るのだな」


ルシアは倒したそれから目を離し、手の側部に付いた血糊を見つめながら一人語散った。

2話を予約掲載にしておいたのに・・・できてなかったのでいますぐ掲載で再度投降です。もし重複するようでしたら即削除しますが、次の話も予約掲載にしてあるんですよね・・・。

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