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錬装機兵アルク・ミラー  作者: 四次元
陽はいずれ彼方へと消える
92/112

90.落日

 黎明地下基地地下八階。

 道行く通路は極端に狭くなり、部屋の数も明らかに少なくなっている。

 施設そのものも、電気機械の類は照明と空調以外はほとんど見当たらない。数少ない部屋の中にも、地下採掘で出た残土や原始的な土木用具が放置されているだけの、明らかに投げやりな状態であった。


「ユミルの所には……まだ着かないのか……?」


 勇治は錬装化したまま壁に手をつき、息を切らしながらぼやく。その後ろで、額から汗を垂らしながら同様に息を切らしているミューアが背中を押しながら答えた。


「先生の居場所は位置的には地下十階相当のところです。あと二階は下りないと」

「地面掘っても駄目なんだよな……」

「もっと先なんです。直通の通路も無いみたいですし……」


 人二人がやっと通れる程度の通路には、監視カメラはおろか、見張り一ついない。

 深知を通じて天北博士からもたらされた情報を頼りに進んではいるものの、そこまでの距離がとにかく長い。死闘を繰り広げたばかりの勇治や、見た目相応の運動能力しか持っていないミューアにとっては、かなり厳しい道のりであった。


「っと!追いついたわ!二人とも生きてるー!?」


 そんな中、更に後方から胸を揺らしながらメローネがやって来る。

 その声を聞いた瞬間、勇治は力が抜けたように壁に背中をつき、その場に腰を下ろした。


「おっとボウヤ、かなりキてるわねぇ」

「二人で途中の部屋をクリアリングしながら進んでいるんです。この通路だと途端に袋小路になりますから……」

「おまけに、どこもかしこも瓦礫の山だからな……」


 勇治はくたびれていることを隠しもせずに、その場で大きく息をついた。

 一分一秒でも早く主人を救いたいホムンクルスの二人は、一旦彼を置き、先の通路を警戒しながら進んでいく。ここ地下八階は部屋の扉すらも作られていないので、部屋の中を調べるのは簡単だが、毎回これをやりながら進んでいくのは気の滅入る作業であった。


「この地面の砂利……いかにも、つい最近まで作業してましたって感じねー」

「おそらく地下を掘った際の残土を、一輪車なんかを使ってリレー方式で運んでいるんでしょう」

「すっごく非効率ね、何世紀前の話よ?」

「それだけ表沙汰にしたくないんでしょう」


 通路の空調は土埃だらけの剥き出しの配管。労働環境は推して知るべしといったところか。

 おまけにどうも酸素量も少なく、それが一行の道行く足を更に重くさせていた。


「ねぇ……これってもしかして、私達誘いこまれてるんじゃない?」

「それは承知の上です。立場のある人間はこんな劣悪な環境にはいません。他に直通経路がないということは、始めから内部の人間の出入りを想定していないんでしょう」

「だけど、主人マスターを救いに来た私達を、消耗させて始末するには絶好の造りってトコか……」


 そこまで分かっていながら、二人はどんどん先へ進んでいく。

 負傷と疲労と軽い酸素欠乏で意識が朦朧とし始めている勇治は、これが人間と作り物との感覚の違いかと自分を納得させるほかなかった。


「他のみんなは……大丈夫なのか?」


 どうにかして意識を保とうと、勇治はいっぱいいっぱいになりながら尋ねる。

 そんな事情を知ってか知らいでか、メローネは丁寧に現状を話した。


「コースケお兄さんは先に脱出させたわ。リーンは司令室に残って通信で私達のサポート。みっちゃんは今暴れまくってる最中だけど、一応脱出経路の確保をお願いしている」

「そうか……後は自分の心配さえしてりゃいいんだな……」

「ほんと余裕なさそうね」


 そして、地下九階の階段に到着。

 一行の表情が更に曇る。

 そこから先の道は舗装すらされていなかった。

 露出した土壁と、空間を支えるための頼りなさげな木枠。道を僅かに照らすのは白熱電球。地面には周囲から流れてきた水滴が集まり、水溜りが出来ていた。

 これでは基地施設の通路というよりは、もはや坑道。

 写真や映像の中でしか見たことの無い光景が広がっていた。


「……少し急ぐわよっ!」

 

 開口一番、メローネが足取りを速める。

 もうここまで来ると、個部屋すら存在しない。先は一本道だ。

 勇治とミューアも力を振り絞って、体を前に進める。

 程なくして工事途中という名の行き止まりがやって来るが、その周囲には、不自然な鉄製の蓋が壁際の隅に置かれていた。

 すぐさまそれを横にのけると、人がようやく入れるくらいの穴がぽっかりと空いていた。


「まさか、地下十階ってのは……」

「中は暗いわ、ボウヤなら見えるでしょ?」

「……結構深いな……いや、中に誰かいる……?」


 メローネはすぐ近くに放置されていたロープを取って、付近の「支え」となっている木製の柱に括りつける。言葉のやり取りもないまま、勇治が真っ先にロープを掴んで穴の中に入り、それに手持ち式の非常懐中電灯を持ったミューアが続く。

 中の空間は六畳ほどの広さではあるが、ちょっとやそっとの身体能力では天井まで届かないくらいに深い。加えて、出入り口がこの穴だけという事は、その用途は用意に想像がつく。


「……やっぱり人だ……おい、大丈夫ですかっ!?」


 アルク・ミラーの暗視モードでその姿の全容は大体分かった。

 目隠しと猿轡に加えて、全身を拘束具で固定されている。

 ミューアが横からライトで照らしたので通常視界に戻すと、股部の色具合から糞尿も垂れ流しという悲惨な光景が目に入ってくる。


「間違いなく先生ですよっ!こんな状態でっ……!」


 ミューアが目隠しと猿轡を剥がすと、勇治もナイフを発現させて拘束具を切り裂いていく。

 中から現れたのは無残にも痩せこけた老婆の姿。一体どれくらいの間、この環境の中で放置されていたのだろうか。

 それでも、微かに息はあった。口から泡と共に流れ出ている。


「先生、お許しくださいっ!錬金術を使わせて貰いますっ!」


 ミューアの懇願するような台詞と共に、紅い石の光が拡散する。

 勇治は少年の微かな躊躇いを感じ、それを理解しつつもその場を見守ろうとした。


「ミューア……」


 擦れるような声が、周囲に気を張り詰めさせ、二人の少年の意識が向かう。


「来て、くれましたか……」

「はっ……はいっ!遅れて申し訳ございません先生!錬金術を使って――」

「もうよいのです……」


 幼顔の少年は賢者の石をかざしたまま茫然としていた。

 ユミルは苦しそうに息をしながら、声を絞り出す。


「もう……私を助ける必要はありません……ここで果てます……」

「待ってくださいっ!僕にも体を治すことくらいは!」

「もう満足に動ける記憶など、とうに残されていないのですよ……」


 勇治もそれは盲点だったというように声を漏らす。

 

「あんた、今までもずっと……自分の体を錬金術で治してきたってことなのか?」

「いくら長き生を得ようと……人が背負える器の大きさは決まっているのです……」

「どれだけ生きてきたんだよ、そんな体で……」


 隣ではミューアが尚も賢者の石をかざし、自らの創造主を治そうと試みている。だが、それも老婆の言うとおり、徒労に過ぎなかった。数分もしないうちに、愕然としたように少年の手が地に着く。


「駄目、なのか?」

「な、何も、残っていない……あるのは知識だけ……!」 

「くっそ!」


 勇治は苛立ちを隠すことなく胸倉を掴むようにユミルの体を起こし、耳の遠い老人を相手にするかのような怒鳴り声で問い質した。


「俺がこいつらと一緒にここに来たのは、あの明理さんを何とかするためなんだよ!あの人は一体何なんだっ!?あんたが分かっていることだけでも教えてくれよ!」

「……イレギュラー……いや、オーパーツ……」

「何っ!?」

「……私と、同じ力を、使っている……」

「錬金術のことか!?」

「……あれは……存在してはならない……倒さなくては……」

「どうすれば!」

「私の、知識を……ミューアへ……」


 驚愕する少年へ向けて、老婆は震える左手を持ち上げた。

 その中指には、指輪と宝石の様にはめ込まれた賢者の石。


「ミューア……あなたは最も人間に近く創っている……探求のためでしたが……今、私の意志を継げるのはあなたしかいない……私の錬金術を……」

「せ、先生……僕はホムンクルスですよ……!?」

「大丈夫……あなたは人間になれる……ヒトの方から近づいている……」

「そんな……」


 ユミルの手が戸惑うミューアの手を掴むと、無数の光の象形文字が、手から手へ、体から体へと伝わっていく。仲間が最後の力を主人公へと託す、まるでどこかのアニメで見たような光景。

 この場合は伝えているのは知識であるが、これが人間同士でやれれば、と勇治は思った。

 しかし、所詮は人間。個々の力では限界があるのだと、ユミルという現実がそこにあった。


「あなたならきっと……頼みましたよ……あ、あの女を……止め……て……」

「先生っ……!」


 光の象形文字の流れが止まり、老婆の首がゆっくりとうなだれる。その表情は安らかとは言いがたかったが、力を全て出し切ったかのごとく顔全体が既に青白さを帯びていた。


「ミューア、マスターは……?」

「永眠なされました……僕達の力が及ばなかったばかりに……もう少し、早ければ……」


 これには、流石のメローネも絶句する。

 勇治はユミルの骸をそっと地面に下ろすと、彼女の両手を腹の上で重ね、その上で手を合わせた。

 人としての最低限の礼儀というものであったが、それでもやはり、どうにもやるせない思いを抑えることは出来ない。


「ここまで来て、か……ミューア、あの人に対抗できる方法は何かありそうか?」


 ミューアは苦々しそうに首を横に振る。


「情報量が多すぎて……まだ……」

「そうか……だけど、せっかくなんだ。なんでもいい。いい案があったら頼む」

「もう少し……時間をください……」


 少年はもう少しとは言うものの、どう見ても途方に暮れている様子だ。

 勇治はこれ以上尋ねるのは無駄だと判断し、メローネの方へ向かって意見をするようにした。


「ここで悩んでいても仕方ない。一先ずはここから脱出、を――?」


 入り口からの光が一瞬揺れたかと思うと、すぐさま視界が暗転する。

 勇治は正気を保つように首を振ると、すぐに暗視モードに切り替えて、周囲を確認した。

 ミューアは多少混乱しているが無事のようだ。

 上の方は――。


「やられたわ……やっぱり罠だったみたいね……」


 上からメローネの声が響くと、勇治は慌てて土牢の中から飛び出す。

 坑道の白熱電球は全て消えており、その先には絶望的なまでの土石が立ち塞がっていた。

 

「閉じ込める気かっ!」

「それだけじゃないみたいよっ!」


 メローネが何かを察知したかのように、勇治の体を押して再び土牢の中に突き落とす。

 間髪入れずに、次なる爆発音と共に天井が一気に落下してきたのだ。

 メローネも滑り込むように同じ穴の中に入ると、今度こそ行き場を塞ぐように瓦礫の栓が形成されていった。


「最悪……ね……ここもいずれは崩れるかも……」


 勇治は舌打ちしながら、周囲の壁を調べてみる。

 それも数分程度で諦めがつくほどの結果であった。

 土の柔らかい部分や隠し扉が都合よくあるほど、世の中は甘くない。

 何もしないよりは、と、ナイフで壁を掘ってみるが、すぐに固い岩盤にぶち当たり、行き詰ってしまう。ヒートマチェットは金属系の装甲には強いが、岩に対しての効果は無いに等しい。

 更には空気も段々と薄くなっているようで、勇治も少し掘っては息切れを繰り返すという状態まで追い込まれていく。


「マスターも死んじゃったし、私らは別にいいんだけどさ。ボウヤはそうもいかないわよねー」

「だったら何か手伝ってくれよっ!リーンや深知たちにも助けは送れないのか!?」

「色々電波系統もからっきしなのよココ……」


 メローネは完全に諦めモードに入っているようであり、後ろからぼやくのみ。

 一方、ミューアは先程から何か思索する様に目を閉じ、両膝をついた状態でずっと黙り込んでいる。

 勇治もこの状態で頼れるのはこいつしかないと無闇に声を出すのを止めた。

 しかし、声も動きも止めると、やって来るのは暗い絶望感。


「駄目だ……何も使えそうにない……」


 そして最後の絶望ダメ押しとばかりにミューアの呟きが聞こえてきた瞬間、勇治の目の前に大きな土の塊が落ちてくる。

 とうとうここの天井も崩れるのかと身構える面々であったが、土の塊が落ちてくるのは一箇所のみ。それも何かが擦れるような音が上から響いてくる。

 まさか、という気持ちに答える様に、暗闇の空間の中に一筋の光が走った。


「やったぁっ!本当に繋がったわっ!」

「うっそ、リーンなのっ!?」

「みんなー、何とか無事そうねー。私らじゃ穴広げるの大変だから下からも掘ってよー」

「届かないんだってば!」

 

 地獄に仏はこのことだとばかりに勇治は息を吹き返し、天井に空いた五百円ほどの穴を確認する。すぐにその穴から荒縄が垂らされると、それを掴んで壁を駆け上がり、天井の穴周りにナイフを何度も打ち付け、固い土を崩していく。そこから先は、疲れも呼吸も忘れて無我夢中での作業であった。

 ものの十数分で、穴は人一人通れる大きさまで広がり、勇治はようやく外の世界へと顔を出す。


「今度ばかりは本当に駄目かと思ったけど……助かった……」

「ま、貸しにはしとくわよ。コイツのおかげでもあるんだけど」

「こいつって……」


 汗を拭うリーンの隣に、彼女と同じくらいの背丈の見慣れぬ影があった。

 ミューアやユミルと同じく、真っ白なローブに身を包んだ人物。

 彼等と違うのは、頭全体をフードですっぽり覆っており、僅かに覗かせる目の一部しか顔形を確認できないところだ。


「まさかこの子が、最後の、ルクシィって子か?」

「コイツ、ここでずーっとチマチマ穴掘ってたのよ」


 よく見ると、その人物の手には園芸用の小さなスコップが握られており、ローブの袖や下半身は泥で酷く汚れている。その様子を見て事情を察した勇治は、礼を述べながら少女に頭を下げる。

 少女も小さく頷いた。

 無口な子とは聞いていたので、それ以上の会話はない。

 リーンの話によると、今いる部屋は地下八階のとある一角。

 行きに使っていた道には繋がっていないため、コースから外れていたところだった。

 実際、直でユミルの囚われていた土牢に繋がっていたわけではない。侵入者を頭上から瓦礫で押し潰すために、地面に爆薬が仕掛けられていた部屋であった。

 それをいち早く察知したルクシィが、爆破装置を解除した後、少女の細腕でえっちらおっちらと穴を掘っていたわけだ。


「んなことはどうでもいいっつうの。で、マスターは?」


 呑気に尋ねてくるリーンに、勇治は思わず声を詰まらせてしまう。

 しかも答えを出す前に、ルクシィは無言のままロープを伝って降りていってしまったのだ。

 もったいぶっても結果は同じだと、勇治は顎だけでリーンにも下に行くように促す。すぐに下の穴から悲鳴やら喚き声やらが響いてくるが、そんな感傷に浸っている暇も今はないのだ。

 勇治も、もう一度下に下りて、残された者達に向かって檄を飛ばす。


「お前等……まさかここで終わりって訳じゃないよな?」

「ユージさん……?」

「俺だって、この婆さんには色々言いたいことがあったんだ……だけど、こうなってしまった以上どうしようもない。だから……お前達に責任を取ってもらうしかないんだ」

「あららぁ~……急に厳しくなったわねボウヤ~……」


 メローネが皮肉な声を出した途端、勇治の手から銃が展開され、場の空気が一気に変わった。

 やる気のない皮肉を言った張本人も、露骨に表情に陰りが出来ていた。

 彼女に銃が突きつけられているのではない、銃口の数センチ先にあるのはミューアの頭だ。


「元を言えば、お前等がこの国に来て変な力をバラ撒かなければ、こんなことにはならなかったんだ。俺は、その事については許してなんかいない……」

「アタシらが助けなきゃアンタだってとっくに死んでた癖に……」

「譲歩してんだよ……こっちも」


 銃はすぐに元の鞘……というか砂に還ったが、空いた手は流れるかのように、ミューアの頭の上へとのしかかる。


「この世の中を……いや、せめて、明理さんを何とかするまで、付き合ってもらうぞ」

「でも、先生がいなければ、僕らはどうしようも……」

「仕切り直しだ。一先ずは戻ってから考えよう」


 勇治の随分と無理に前向きな考えに、ミューアも小さく賛成する。

 メローネとリーンもそれ以上、反対の言葉は出ない。

 この点については、勇治は自分の思ったとおりだと確信した。

 敵に気づかれぬうちにと、勇治から先にロープを伝って再び上の部屋へと上がっていく。それにリーン、メローネと続く。

 腕力に自信のなかったミューアは最後に上げて貰おうと下から声を掛けるが、自分の後ろにじっと蹲る影を見て、思わずロープを握る手が弱まる。


「ルクシィ、どうしたんだよ?君も一緒に……」

「……」

「ルクシィ?」


 白ずくめの少女は答えない。

 自らの主人……創造主の亡骸の手を取ったまま、じっとその場から動くことはない。

 声も表情も分からないので、ミューアは仕方なしに少女の手を掴んだ。


「ルクシィ、先生はもう死んだんだ。もう、診なくていいんだよ。」

「……」

「もう、いいんだよ」

「……私の存在は、主人マスターと共に……」


 ミューアは目を見開いて驚いた。

 それくらい、彼女が喋るのは珍しいことだったのだ。

 しかしミューアは更に両手でルクシィの手を握り、真剣な面持ちで話しかけた。


「ルクシィ、僕らは先生から死を共にしろなんて命令は受けていない。後を頼むと言われたんだ」

「……」

「君も、一緒に来るんだ」


 ルクシィはそれでも、自ら離れようとはしなかった。

 しかし、非力なミューアでも少し強引に引っ張れば抵抗できないほどのか弱さでもあった。

 結局、二人して上へと上げられ、一行はそのまま脱出経路へと一直線。待ち構えていた兵士達はもはや勇治の敵ではない。死を恐れて見張りに逃げている者など、案山子同然であった。

 非常階段を上る最中で深知とも交信が取れ、互いに脱出状況を確認する。

 後は地上で合流するだけだ。


 ――約七時間の作戦時間をもって、黎明地下基地の襲撃は終了した。


 得られた物は大きく、敵方にも甚大な損害を与えたはずだ。

 しかし、要とも言うべきものを逃し、勇治の脳裏には釈然としないものが残っていた。

 それでも、睡眠が取れる環境にたどり着くまでは、多くは考えられない。

 今はとにかく、休息が欲しい。

 そうでなければ、頭はこれ以上働かない。

 数々の疑念や違和感を抱えたまま、勇治の脳裏は白く染まっていった。


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