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第九話 四面楚歌

朝目が覚めると、みんな学校に行ったのかあたりはやけに静かだった。


起きると、机の上に真新しいタオルと歯ブラシがあり、横に書置きが置いてあるのに気がついた。






  ダイスケくんへ  

 

 

 えんちょうからいわれて、きのうのことははんせいしています。


 ごめんね。

 

 おかあさんのしゃしんは、ちゃんとかえすのでしんぱいしないでね。


 タオルとはぶらしおいておくのであさごはんのまえに、かおあらってね。

 

 あさごはん、ひとりになっちゃうけど、しょくどうによういしてるのでたべてね。




                          

                             みね








「なんだよそれ…返すならすぐ返してくれよ…」


などとぼやきながら、僕はとりあえず顔を洗いに下の共同洗面所に向かった。


それは食堂の前にあり、長いステンレス製のシンクに四つの蛇口、それに対になるように鏡が四枚はってあるシンプルなものだった。


こどもが使えるようにそうしてあるのだろう随分と背の低いその蛇口を、それでもちょっと背伸びをしてひねり顔をあらった。


鏡は背がたりなくて覗けないけど、昨日あれだけ泣いたしきっとひどい顔してるんだろうな…などと考えながら部屋から持ってきたタオルで顔を拭き、そのまま振りむいて食堂にはいった。


食堂のテーブルには、書置きのとおりぽつんと僕の食事が用意され、その上からハエがたからないように蝿帳はえちょうがかぶせてあった。


誰もいない静けさの中、僕は座ってしばらくその朝ごはんをながめた。


なんだか写真のことが気になって食べるきたしない…


おはしで、さめて少しかたくなった魚をつついいると園長が食堂に入ってきた。



「お行儀わるいねぇ。食べ物をそまつに扱っちゃバチがあたるけんそんなことしちゃいけんよ。」


僕はお説教しようとしてた園長に思わず


「峰はどこに行ったの?」


と聞いた。


園長はすこし面食らった感じだったが


「峰ねーさんって言いんしゃい。」


と、またゆったりとした口調で言った。



ねーさんって年下じゃないか。


と思ったが、「峰ねーさん…どこ?」


と小さな声でと、気まずそうに言い直した。


園長は少しにこりとして、


「今、警察にいっとるけん、昼すぎにはもどろうて。」


「ダイスケくん、写真のこと気にしとるんじゃろ?大丈夫じゃ。警察で写しをとったらすぐ返してくれるけん。」


と近寄ってきて僕の頭をなでた。


しかし、僕にとっては返してもらえるとかそんなことよりも警察に写しが渡ってしまうことのほうが重大だった。


しかし、もうこれは完全に手遅れだ。


警察はきっとルンペンの親戚連中をみつけるに決まってる。



僕はもう、どうしていいかわからなくなってしまった。


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