第七話 写真
いやな予感というのは当たるもので、それはやっぱり僕を窮地におとしいれた。
これからあんなことになるとも知らず、僕は夕食を終え自分の部屋で唯一前の家から持ってきた「ルンペン」の写真をながめていた。
なぜか、これを見ると心がなごむのだ。
ルンペンは写真の中でやさしく微笑み、いつも自分をかばってくれたその頃を伝えてくれる。
その時だった。
コンコン!
と、その時間を切り裂くように僕の部屋のドアをだれかがノックする音が響いた。
「峰です。いるよね?はいるよ?」
と言ってこっちが返事をする間もなく峰は入ってきた。
僕はとっさに写真をズボンの後ろポケットに突っ込んだ。
「ダイスケ君ちょっといい?」
「今日、まさる君ときよし君と一緒にでかけたよね?」
僕はだまっていたが峰はさらに僕に聞いた。
「あの二人ひどいケガして帰ってきたんだけど、何かあった?見てない?聞いても何にもいわないし困ってるの。」
どうやらあの二人だまってたみたいだ。
僕はちょっとほっとして
「知らない。僕が帰るときは何にもなかったよ。」
そう言って、峰のほうを見上げた。
峰は僕の目をじっと見つめて
「本当に何も知らないのね?」と聞いた。
「…うん。」
僕は、ゆっくりうなずいた。
その瞬間!
峰は僕の後ろポケットから写真を抜き取った!
「あ!!」
僕があっけにとられていると、
「これお母さんの写真じゃないの?」
「これでおうち探せるかもしれないよ!」
有無を言わせない峰ペースにすっかりのまれ
「返せ!!」と峰に僕は思わず飛びついた!
しかし、ここではっとした。
このままじゃさっきのにのまいだ。
僕はふっと力をぬいてしまい、簡単にかわされてしまった。
これが裏目にでた。
峰は僕からとった写真を手に
「じゃ、これ借りていくからね。」
と写真をもっていってしまった。
なんてことだ。
何もかも水の泡になってしまう。
結局、峰は僕のことはそんなに疑ってなかったのだ。
それをはやがてんして、僕は自ら厄介ごとを生み出してしまった。
僕はやるせないジレンマを感じながらも、この状況を打開すべく作戦を立てることにした。
せっかく手に入れた帰る場所を失いたくなかった。
今や僕の帰れる場所はここ以外にありえないからだ。