第五話 昼食
「名前なんていうの?」
彼の後ろをついていきながら、おもむろにそう尋ねた。
すると彼は、振り返りもせずに
「石川。」
とだけ答えた。
無愛想なやつだな…とは思ったがとりあえず僕も
「僕はダイスケ。」
とだけ答えた。
木の廊下を歩く二人のぎゅっぎゅっという足音だけがしばらく続いた。
一階の園長室を右に曲がるといいにおいがしてきた。
それから部屋を三つほど通り過ぎると、大きな部屋があった。
そこには長い机が二つ廊下と平行にならんで部屋の中央にあり、十五人くらいの子供が座っていた。
見ると一番先頭に園長と峰もいた。
中に入ると、みんないっせいに僕のほうを見た。
僕はなんだか気まずい気分になった。
峰はどうしていいか分からない様子の僕に手招きをして前に読んだ。
僕が前にいくと、峰は立ち上がり
「みなさん、みなさんの新しい仲間を紹介します。」
「ダイスケくんです。さ、ダイスケくん自己紹介しなさい。」
そういうと僕のほうをちらっと見た。
いきなりそんなことを言われても、僕に話すことなんか何もない。
というより、僕の本当の自己紹介なんかできるはずがない。
しかたなく僕は
「ダイスケです。6歳です。よろしく」
とだけ言った。
すると園長が
「あら、そしたら石川君と同じじゃね。」
と、またにっこりして僕のほうを見て言った。
ちらっと石川のほうを見ると、
「じゃこっち来て。」
と僕を席に案内した。
「それではみなさん、仲良くしてくださいね!いただきます!」
するとみんな待ちきれなかったように
「いただきます!」
と、いうと同時にガチャガチャとあわただしく食べ始めた。
と、なんとも淡々と事務的にその儀式はおわった。
形だけのもんだな…
そう思うと、さっきギクシャクしてしまったのをひどく後悔した。
食事がはじまると、上級生風の男の子が僕に
「なぁ、お前どっからきたんだ?捨てられたのか?」
と聞いてきた。
「わからない。おかあさんが死んで、いつの間にか一人になってた。」
と答えた。
確かにうそは言ってない。
すると
「ふーん、お前も色々たいへんだったんだろうな。ま、楽しくやろうや!」
と、気さくな感じですんなり受け入れてくれた。
なんとかやっていけそうだな…
そう思った。
しばらくして、はやく食べ終わった人から食器をかたずけて席にぽつぽつ空きが出始めた。
学校の件はまた後で峰がいないときにしよう、ここだとまた峰に色々きかれそうだ。と思い、僕も急いで食べた。
そして食べ終わって食器を片付けて食堂からでると、こんどはさっきの上級生とはちがう二人組みの上級生がいた。
「おい、お前どこいくんだ?」
「俺たちこれから、遊びにいくんだけど一緒にいくか?」
と聞いてきた。
「僕、この町のことなんにもわからないけどいい?」
と聞くと
「ああ、俺らが教えてやるよ!一緒にいこうぜ!」
と僕の手をひっぱっていった。
こんなに普通に人が接してくれたのは、初めての経験だったので僕は正直とまどっていた。