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第四話 部屋

そこは建物の二階部分にある小さな一室だった。


これからそこで生活を始めるとは思えないほどの、机とベッドがあるだけの簡素な部屋だ。


荷物らしいものも何一つもっていない僕は、とりあえず窓から外の様子を見た。するとさっきの海がずいぶん遠くに見える。


園長室と同じ布地の白いカーテンがやけにまぶしく感じるその窓からは町が一望でき、あたりは静かで、道行く人のサンダルの音すらよく聞こえ、心地よく感じた。


これから毎日この景色を見るんだ。


そう思うと何か新鮮な気持ちになった。






ここで何をしよう?


今更のようだが、ここまで施設に入ることしか考えてなかった。


ベッドに腰をおろし、ゴロンと横になってしばらく考えた。


園長は学校がどうとか言っていた。


学校へ行くのか?


この僕が?


なんだか変な気分だった。


そもそも学校へは前のルンペンに拾われたとき行かされそうになったことがある。


当時の僕はがんとしてそれを受け入れなかった。


なりは子供だがもう二十歳を超える僕はそこらにいる大人に負けないくらい力が強く、動かないといったらてこでも動かなかった。


学校へ行く理由がわからなかったからだ。


それから30年経ち、今はもう50歳だ。


とはいえ、僕はみなしごとしてここへ来た。


行くなら見た目通り小学校だ。それもせいぜい一年生か二年生からはじめなくてはならない。


正直いやだった。


しかし、ずっと何もしないわけにもいかない。


ここではかまってくれるルンペンもいない。


退屈しのぎにはなるだう。


そう思って僕は、とりあえず学校へは行くことに決めた。


そうと決めたらさっそく園長に言いに行こうと立ち上がった。瞬間、館内にチャイムがながれた。


きたばかりの僕がそれが何を意味するのかわからずにいると、開けっ放しだったドアの前をさっき門の所でじっと僕を見ていた少年が横切った。


彼は僕が部屋にいるのに気がついて戻ってきてこう言った。


「あ、こっちの部屋だったんだ。」


どうやら僕を探していたみたいだ。


「今のチャイムは何?」


僕がそう聞くと彼は


「お昼ごはんだよ。峰さんに呼んできてって言われたんだ。」


そう言って、すこし間があいて


「一緒に行く?」


と、少し頼りなさそな声で僕を誘った。


僕は食堂の場所はもちろん、ここがどこなのかもこの町のことも何も知らない。


とりあえず、彼と一緒にいて色々情報をつかむことが大切だと思い、彼と友達になることにした。


「食堂どこにあるの?」


と、聞くと彼は少しほっとしたような様子で


「こっち。」


と僕を先導した。




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