第十一話 自己嫌悪
「なんだお前?」
一人飛びぬけて大きい上級生が僕をにらみつけながらせまってきた。
「お前がとっつあんか?」
僕がそう聞くと少しひきつったように
「ちび!口のきき方にきをつけろよ!」
と、いきなり僕をなぐろうとしてきた!
反射的に殴ってきたこぶしをなぐりつけると彼のこぶしはまるで粘土のようにクシャリとつぶれ、とっつあんは
「ぎゃあぁぁ!」と声を上げた。
あっけにとられる子供たちをよそにそのままランドセルのぶらさがっている大きな木を思いっきりなぐると、ずーんという低い音とともにその直径2メートルはあろうかという大木はへし曲がり、ランドセルがおちてきた。
「誰かに言ったら殺すよ。」
と、冷たい目でそのいじめっ子たちに言い放つと僕はランドセルを拾い、石川に手渡した。
「ダイスケくん…君はいったい…?」
石川もあまりのことに泣くのも忘れて、じっとダイスケを見ていた。
「大丈夫?」
僕は石川を立たせると、それ以上何も言わずに引き返した。
このことはきっと問題になるだろう。
悪いことをしたとは思わないが、やはり力の差がありすぎる。
もう施設にもいられないな…
僕は人間じゃないのかも知れない。
僕は何なんだろう?
僕はどこから来たんだろう?
「お前は化け物だ。」
昔みんなにそう言われていたのを思い出した。
本当に化け物なのかも知れない。
僕は僕自信の存在がわからなくなった。
この先もずっとこんな生活が続くんだろうか?
自分自身がばれないように、ずっとビクビクしながら生きていくんだろうか?
世界中に僕の居場所なんかないかもしれない…
そんなことを考えていると、急に目の前が真っ暗になった。
どこをどう歩いているのかもわからないまま僕は黙々と歩いた。
どのくらい歩いたんだろう?
気がつくとそこはこの町が一望できる丘の上にある小さな公園だった。
もうあたりは暗く、町のあかりが静かにたくさん灯っていた。
ふりむくとずっと付いてきていたのか石川がいた。
「ダイスケくん…ずっと黙って先にいっちゃうから、呼んでもずっと返事なかったし…」
「えっと、ありがとう。うれしかった。それだけ言いたくて…」
少しビクビクしながらそういう石川を見て、僕の心は少しだけあたたかくなった。
「僕がこわくないの?」
そう聞くと石川は少し嬉しそうに
「だって、僕を助けてくれたんだもん。ダイスケくんはいい人だよ。」
そう言われて、少し目頭が熱くなった。
「もう暗いし帰ろう。きっとみんな心配してるよ。」
肩のちからが一気に抜けた。
そして僕らは施設に帰ることにした。