表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/11

PROLOGUE

ルンペンとはボロをまとってうろつく浮浪者、乞食をいう。


その語源はドイツ語の「LUMPEN」でボロの布切れを意味し、かのマルクスが極貧層をルンペンプロレタリアートと呼んだことなどにより日本でもそう呼ばれるようになった。


 町が光に包まれて何もかもが真っ白になった。


気がつくと、なんにもない地平線と瓦礫ばかりの場所で僕は泣いていた。


なぜそんなことを覚えているのかわからない。


まだ赤ん坊の時の記憶だ。


ここで、初めて僕は僕以外のまともに生きている人を見た。


目の前にいたのはいわゆる浮浪者だった。彼は僕の育ての親になった。


人は彼をルンペンと呼んだ。だから僕も彼の名前はルンペンだと思っていた。


ルンペンは口がきけなかった。


彼に育てられた僕も言葉を覚えず、しだいに人里を離れて暮らすようになった。


たまに彼は食料を盗みにいった。


それ以外は蛙や虫の幼虫を食べていた。


それが当たり前だと思っていた。


そんな生活が二十年も続いた。


それでも僕はやっと立って歩けるくらいの赤ん坊のままだった。


それが変だとも思わなかった。


そんなある日ルンペンは死んだ。


僕はルンペンを食べた。


そして僕は一人になった。


そのとき僕は新しいルンペンが必要だと思った。


そして、人里までいくことにした。


新しいルンペンはすぐに見つかった。


今度は女のルンペンだった。


そして、僕に「ダイスケ」という名前をつけた。


このルンペンはこぎれいで、ちゃんと家に住んでいた。


ここで初めて僕は言葉というものを覚えた。


ルンペンという言葉の意味も知った。


でも僕はその女のことをルンペンと呼びつづけた。


成長しない僕を哀れんだのか、それでもその女は優しかった。


そして何でも優しく教えてくれた。


その頃からだろうか、僕は自分が何者なのかいつも考えるようになった。


それから三十年このルンペンに育ててもらった。


すると、ようやく普通でいうと5、6歳くらいの子供にまで成長できた。


だけど、そのルンペンもその頃死んでしまった。


不思議と今度は食べようとは思わなかった。


初めて悲しいという感情を理解した。


周りの人たちは成長しない僕を気味悪がって、誰も僕を引き取ろうとはしなかったので僕はまた、新しいルンペンを探して旅に出ることにした。

















評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ