表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/15

待ち伏せ

 ジュノー博士の言っていたとおり、森は町のすぐ近くにあった。……入り口は。


「どこまで続いているんだ、この森……」


 確かにベスタさんは森が広いと言っていた。でも俺が想像した広さはせいぜい一時間も歩けば中心部にたどり着くぐらいのものだった。だって、町のそばにある森だぞ? そんな大森林が広がっているとは思わないじゃないか。


 なんにせよ、町を出て三時間が過ぎた。未だ大魔法使いマーズの住居は見えてこない。ちゃんと道が続いているおかげで迷わずに済むのは助かるけど。


「ピピピィ!」


 そしてたびたび襲ってくるつのまるである。ほんとどこにでも現れるな、こいつら。新しい魔法の試し撃ちにはもってこいだけどさ。


「こんなのはどうだ?」


 自分の身体を中心に渦を巻くように風を発生させる。その中に風の刃を混ぜることで全てを切り刻む竜巻の完成だ。魔法を避ける敵がけっこういるので、避けられない魔法を考えてみた。


「ピギィ!」


 つのまるを蹴散らしていくのは気分爽快だけど、強敵に効くかはわからないのが難点だな。


「そろそろマーズの家に着いてくれないかな」


 いい加減にうんざりしてきた。さすがにもうそろそろ到着してくれないと、今日中に帰れないぞ。


「死にやがれ、クソガキ!」


 急に道の脇から飛び出してきたのは、町で吹っ飛ばしたガラの悪いトレジャーハンターだった。ククリナイフで斬りつけてきたけど、余裕でかわす。リベンジするつもりのようだけど、特に強くなった様子もないな。


「急いでるんだけど」


 こんなのの相手をしている暇なんてないんだけどな。でも一本道で立ち塞がられたら避けて通れない。一回俺にやられているのに懲りない奴らだな、今度は本当に殺してやろうか……いや、さすがに殺すのは駄目だ。


 ガラが悪いとはいえ相手は人間のトレジャーハンターだ。人間の命を奪ったら、人として大切なものを失ってしまう気がする。


「ウヒョヒョヒョヒョ、アニキを怒らせちまったなぁ!」


 俺の背後にウヒョが現れた。挟み撃ちか、悪くないけど雑魚が増えたところで大した問題ではない。


「へっへっへ、先生お願いします!」


 ん?


「グルルウウオアアア!」


 雄叫びと共に姿を現したのは大きな身体をした狼人間(ワーウルフ)だった。グレーの体毛に覆われた身体は人間の大人のゆうに二倍はある。意外と作りの良いジャケットとズボンを身に着けているけど、買っているのだろうか、作っているのだろうか。少なくともこのサイズの服が既製品で売られている店は見たことがない。それにしても助っ人呼んで「先生!」って、チンピラ仕草が過ぎるだろ。どこから連れてきたのか知らないけど、これモンスターだよね?


「ウヒョヒョヒョヒョ、先生―!」


「グルルウウオアアア!」


 背後から同じような雄叫びが聞こえてきた。えっ、二体いるの? 後ろを見ると、同じような姿の狼人間が出てきた。服の色が違うから見分けはしやすそうだ。前にいる奴は青、後ろにいる奴は赤で統一している。おしゃれ?


「子供相手にこんなことして恥ずかしくないの?」


 俺は心底呆れた顔をしてアニキを見る。モンスターに助っ人を頼むような情けない奴らが遺跡の探索なんかできるのか。


「言ってろ。世の中勝ったもんの勝ちなんだよ!」


「なに当たり前のことを言ってるんだ。頭が悪すぎてなにが言いたいのか自分でわかってないんじゃないのか」


「うるせぇ! 先生やっちまってください!」


「ワフ」


 狼人間は出現時のテンションが収まったのか、小さく吠えると俺に襲い掛かってきた。かなりのスピードだ。


「うおっと!」


 鋭い爪で引っ掻いてきた狼人間の攻撃を、すんでのところでかわす。魔法で強化してたおかげでかわせたけど、相当速いぞこいつ!


「ガフ」


 後ろにいたもう一体の声が聞こえた。と思った時には強い衝撃が後頭部を襲い、俺の顔面が地面に叩きつけられた。シールドのおかげで耐えられたけど、衝撃の強さはあの守護者にやられた時と同じくらいだ。ということはマジで強いなこの先生たち!


 これはまずいな。一体だけならなんとか相手できそうだけど、二体で連携されると対応できない。数の不利をどうにかしないと。


「こんのぉっ」


 自分の身体を中心に炎の渦を作り出す。さっき試した竜巻と犬を倒した炎の合わせ技だ!


「ギャウッ!」


 狼人間たちが悲鳴を上げて離れた隙に、森へ入って木の影に隠れる。とにかく挟み撃ちの状態を解消するのが最優先だ。


「ウヒョヒョヒョヒョ、先生こっちでーす」


 ウヒョが俺の位置を狼人間たちにしらせている。くっ、地味に厄介なサポートをしやがって!


「どっかいけ!」


「ウヒョー!」


 ウヒョに跳び蹴りを食らわせて吹っ飛ばした。邪魔者はさっさと排除しないと……


「ゴフッ」


 空中にいる俺の腹に狼人間のパンチが入った。なすすべもなく飛ばされて大きな木の幹に激突する。強い衝撃を食らい続けて頭がクラクラする。けど敵はこっちの回復を待ってなんかくれない。


「ガルルルル」


 もう一体の狼人間が立ち上がろうとする俺に爪で襲い掛かってきた。俺が飛んでいく方向に先回りしていたのか。二体の連携をどうにかしないとこのままじゃジリ貧だ。


「このっ!」


 地面を転がって爪をかわすと、思いっきり地面を両手で突き押して身体を上に飛び上がらせる。こうなったら木の上に逃げて一旦仕切り直しだ!


「ワオーン」


「なにっ!?」


 いつの間に跳んだのか、また一体の狼人間が俺の飛び上がった更に上から組み合わせた両手を振り下ろして殴りつけてきた。服が赤いからさっき俺にパンチをした方の狼人間だ。なすすべなく地面に叩きつけられてしまった。


「くそっ、どうすりゃいいんだ」


 まずいぞ、本当にまずい。狼人間二体のコンビネーションにはまるで隙がない。頭もクラクラするし、こいつらをどうにかする手立てがまったく思いつかない。


 このままじゃ魔力切れを起こしてそのままなぶり殺しだ。なんとかしなくては……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ