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序文二 飛鷹ひなと羽田尚登  第一節 飛鷹ひな

彼女の名は飛鷹ひな、中学三年生で一五歳、先日第一志望の都立光星騎士科高校に合格し春から高校一年生になる。

身長は伸び盛りの155cm、大きな瞳と可愛らしい顔…

そして一番目を惹くのが肩で切り揃えツーサイドアップにした赤色の髪、


髪を赤く染める事自体は技術的にそれほど困難な事では無い。

一度髪を脱色してその上から染色するだけの話なのだが、これは言うまでも無く髪の毛に強いダメージを与える。

故にトリートメントを怠るとあっという間に光沢や一体感が失われ、後からどう取り繕っても見窄らしく控えめに言って頭の悪さが滲み出た様なヘアスタイルになってしまうのだ。

しかし彼女の髪は自然かつ艶やかな光沢としっとりとした一体感を保っている。

まるで『最初からこんな色でした』と言わんばかりに…

この『紅玉の塊から削り出した』とまで称えられる彼女のルビー色の髪は美容業界でも再現不可能とされながらも、彼女が使っていると噂が立った染色液は店頭から一時姿を消し、通っていると噂された美容室には一時行列が出来る…。

そう…あくまで一時なのだ…だって誰が何を使っても再現出来ないのだから。


「へえ…海の向こうじゃ大変な事になってるんだねぇ…。」

私こと飛鷹ひなはあるホテルの一室でベッドに腰掛けたままスマホの画面に映るニュースを流し読みしていた。

「………………」

そして隣には学生服のままの男の子が一人………。

私の横で寝息を立てている彼の名前は羽田尚登君…神奈川県と静岡県の東半分を今でも経済的支配圏に置くかつての大名羽田家の一人息子…に…つい六時間前になった男の子なのだそうだ。

なんで『そういうお年頃』と呼ぶには少し早い男女がこんな所で二人きりなのか?

と聞かれたらそれは彼が良いとこのお坊ちゃんで私が芸能事務所所属かつ売り出し中のモデルだと言えば察して頂けるかな…と思う…ただ断っておくけど事務所の方も本気で私みたいな小娘を送り込んだ訳では無い。

本当は私の“大”先輩が来る予定だったのだが彼女は一般人、子供でも明らかに人間離れした腕力を持つ騎士のしかも女性の扱い方を知らない男の子のお相手と聞いて敵前逃亡をやらかしてしまったのだ。

私は“大”先輩に貸を作るため、そして良いとこのお坊ちゃんと秘密の関係になれば何か美味しい目が見れる……かも知れない、と二つの理由でこっそり彼女と交代しこの場に座っている。

ただ彼の方はと言えばまず今日の昼前に意識と他にも色々な物が吹き飛ぶレベルの事故に遭って病院に担ぎ込まれ即日退院し普段から彼をよく思っていなかった親戚一同に詰められた後苗字が変わりいきなり心の準備も出来ぬまま彼の『お義父様なのだかお義祖父様なのだか今一つ説明し難い人』にここに放り込まれたのだそうだ。

いきなり私の様な可愛らしい女の子を前にしたのだから仕方が無いとは思うのだが、彼は思いっきり取り乱し、私が気持ちを落ち着かせようとルームサービスを呼んで二人でお腹いっぱいご飯を食べジュースを煽って、ちょっとだけお喋りした後そのまま寝落ちしてしまった。

縦だか横だか分からない程では無いにしても縦方向にしっかり立つようなパンパンの封筒を持ってセッティングされたこの夜にだ。 

私は彼から受け取った封筒を両手で持ちその重さ厚さ硬さを確認する。

縦方向にしっかり立つようなパンパンの封筒…

色々な意味や方法で人が死んだり殺せたりしそうな『重さ』だ。

この業界に三年もいれば封筒に触っただけでお金に込められた気持ちが分かる様になる。

封筒の厚さから彼を思いやる気持ちの厚さ・熱さ…これをくれた人が彼の事をどれほど気遣ってくれているのかが伝わって来る。

それにしても相場は知らないけどこれだけ貰って“大”先輩を寄越すなんて後から訴えられたりしないのだろうか?詐欺とか?

と言うのはひとまず封筒と一緒に隣に置いておいて…

武家の男子とは武功や名誉と同じ位子孫を残す事を求められ、腕が捥げようが首が捥げようが足の間のモノが固くなる限り子作りをせねばならないと聞いた事がある。

女をあてがわれたと言うのはそう言う事の練習をしろと言う意味だろう…私だって保健体育の授業は受けているのだ。

今夜何をせねばならないかぐらい覚悟していたのに…

そういえば別の事務所に居る女の子が将来のため仕事のためと悪夢の様なトンデモナイ夜を過ごし、世を儚んで大ジャンプしようとしているのを友達三人がかりで止めたのは先月の話だったろうか?

それに比べればこんな色々な意味で可愛らしいお坊ちゃんの相手とか何倍もマシと言う物だ。


それにしてもよく見れば本当に可愛らしい…

私より背も低ければ手も足も短く細い…指の長さは指先関節半分くらい短い…もしかしたらウェストも細いかも……一瞬羨ましいと思ったがここまで細いのはいかがなものかなぁ。

普通に考えればこんな体じゃ騎士なんて務まらないだろうに………。

いや………ちょっと待って…

じゃあ何で羽田家はワザワザ彼みたいな子を養子にしたんだろう?

こんなナリでめっちゃ強いとか?

でもそうだとすれば噂ぐらい聞こえて来るはずだよね…

同じ東東京ブロックにいるんだし…

じゃあ昔話に出て来る『マレビト』みたいに何か特別な能力があるとか?


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