第八十四話「和栞さんが提案してきたゲーム(前編)」
最新話の執筆が調子いいので、ゲリラ更新!!!
短めですが、お砂糖盛られます……。前編後編にてお届けします!
メニューを眺めた和栞。
「全部美味しそう……」
このカフェでは主に洋食を提供しているようだ。
目を奪われる洒落た雰囲気の写真がメニュー表に並んでいる。
「伊織くん。何食べましょうか?」
「ピザとかどう?」
「いいねっ!シェアして食べようっ?」
「うん」
「デザートも食べたいですよねぇ?」
「君の好きなの頼みなよ。俺も少し食べたい」
「じゃあこれにします! 可愛いし!」
食べ物を美味しそうという感想ではなく、可愛いという感想で注文しようとしている彼女。
自分には無い感覚で、メニューを選んでくれた。
多分、一人で何か食べようとなっても絶対に選ばないもの。
それだけで普段体験することのない選択肢や和栞とのデートを、伊織は特別なものに感じていた。
二人でテーブルに着き、ここからの景色を程よく堪能できていたころ。
注文したメニューを店員が運んできた。
景色を見ながら、彼女の笑顔を見ながら。
こんなに食事を共にする相手が変わるだけで、食事が楽しくなるのかと感慨深くなる。
腹は満たされ、後はゆっくりケーキを頂くのみ。
スフレになっているケーキ。
ゴロゴロと数種類のベリー、生クリームが乗っていて、可愛らしい一皿。
彼女が匙をつける前に何か考え事をしている。
また、カロリーが気になる……とか言い出すのかなと思っていると皿から視線を上げた彼女はなんだかモジモジしている。
「伊織くん?」
「ん? カロリーでも気になる?」
「それは……今日はいいのですけどね?」
「うん」
「わたしとゲームしませんか?」
「今から?」
「そう。今から!」
彼女の突然の宣言に身構えてしまったが、このフロアの静かな雰囲気に沿うようなゲームであれば、頭脳戦といったところだろうか?
「何のゲームするの?」
「王様ゲームですっ!」
マズい。
何か企んでいるときの顔に彼女の顔が変わった。
「ルールは?」
企画させればピカイチの彼女だ。
伊織に少しばかり、焦りと期待が混じる。
「今からとあるゲームをして、勝った方が一つ。相手から何でも言うことを聞いてもらえるゲームです!」
「どうやって?」
「これを使いますっ」
彼女は一口もつけていないケーキを指差す。
「それを?」
「それをですね……。お互いに匙をもって相手に食べさせてあげます!」
「んっ!?」
「最後に、相手に食べさせてあげられなくなった方の負けです!」
「本当に言ってる?」
「恥ずかしさを捨てて、私と“あーん対決”ですっ!」
よく出来た店員が配膳の中にスプーンを二本用意してくれている。
それは助かったが、本題はそこじゃない。
今から、お互いにケーキを相手に食べさせ合うらしい。
あーん対決らしい……。
「ここは公共の場だってこと忘れちゃった?」
恥ずかしげもなく、高らかに宣言してくれた彼女には申し訳ないが、流石に少し想像しただけでも、頬が熱くなってくる。
「同時に恋人の聖地でもあるし……誰も見てないですって!」
珍しく彼女が強引に事を勧めてくる。
自分と君はまだ恋人じゃないじゃないかと思ったが、彼女の考えたゲームを否定して白紙に戻してしまうのはなんだか勿体ない気がした。
伊織が一瞬の気の迷いを整理していると、和栞は更に追い打ちをかける。
「なんでも言うことを一つ叶えてくれるんですよ? 魅力的じゃないですか?」
「なんでもねぇ……」
彼女に今の自分が求める事とは何だろうか?
好意的な感情をじだんだ踏めてしまうようになった今、彼女に求めることだ。よく考えて口にしたい願いも出てくるかもしれない。
「私の身体一つで叶えられることですからね?」
「お金もかからないやつね? 前みたいな」
「そう! よくわかってますねっ」
幼気に闘志を燃やしている和栞。
ここはひとつ。
なんでも願いを叶えてもらえる権利獲得のためにも伊織は、これから身に降り注ぐ羞恥に似た行為を一旦忘れ、和栞の誘いに乗ってみる事にした。
「ぜってぇ、まけねぇ」
「わたしだって負けませんからねっ。じゃあ、スタートです!!」
伊織はどうすれば目の前の美少女を打ち負かすことができるか、真剣に考え始めた。
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(作者は二人がいきなりイチャイチャし始めて戸惑っています。。是非、このゲームの必勝法を、読者の皆様も考えてみてくださいね)
次回、明日朝6:40に更新します!朝から糖分過多、ご注意!




