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【されされ】〜超ポジ清純ヒロインな和栞さんにしれーっと、美少女に夢を見ない俺の青春が、癒されラブコメにされた件〜  作者: 懸垂(まな板)
第二章「二人だけの勉強会」

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「休三話(本編前日譚):和栞さんは豆を挽きたい」

少々短めですが、初の和栞さん視点です。お楽しみください!!

「カフェインって身体に悪いのかな……?」


 和栞(のどか)は携帯電話を両手に持ち、熱心にネットで情報を調べていた。コーヒーに可能性を感じていたのだ。


 目が覚めやすいと聞くと、家事の強力な味方になってくれそうだった。


 先日の千夏唯依(ちなつ ゆい)との昼食中。


 ちらっと視界に入った他の男子生徒、手元にはコーヒーだった。


 彼も男の子だから、コーヒーとか飲むのかな?と考えてみて、インスタントコーヒーを初めて買ってみた。


 試しに今、自分で飲んでみたけど、苦い。


 すごく、苦い。

 目を見開いた。飲み込む。


 もう一回、挑戦してみる。苦い。


 やっぱり、苦い。


(うう……)


 ピクニックでは選択肢の一つとして一応持って行く。


 自分は紅茶にしておこうと思った。


◇◆◇◆


 母と妹とのティータイムは決まって紅茶を嗜む。


 そういえば父が返ってきたときだけ、母は決まってコーヒーを淹れていた。


 リビングにまで香りが立つから、コーヒーの匂いがすると、父が帰ってくることがわかるので心が躍る香り。


 自分では飲まないけど、嬉しい記憶に結びついている香り。


 ずっと小さい頃、父からひと口貰ったけど「和栞にはまだ早いね」って笑われた。


 不味かったのを覚えている。



(まさか、本当に、コーヒーを飲むなんて思わなかったなぁ)


 先日、初めて料理を振舞って緊張していたが、彼は夢中で食べてくれた。嬉しかった。


 また、コーヒーの香りが、嬉しい記憶と結びついた。



 でも、実家で香った匂いとやっぱり何かが違う。


 単純に、匂いの強さが違う。


 携帯電話を取り出して、和栞は母へ向けてメッセージを送った。


「明日、お昼には帰るね」


◇◆◇◆


 翌日、実家に到着すると、ふわりとフローラルの匂いに包まれる。


「お帰り! のどか~!」


「ただいま。わかったから、ねっ?」


 母から抱きしめられる。実家に帰ってきたって、落ち着く。


 平日に会えなかった分、この連休始めに抱きしめられる力は、いつもより強いような気がした。


◇◆◇◆


「ねえ、お母さん。ちょっと教えて?」


「どうしたの? 何でも言って!」


 ぽんぽんと胸を叩いて鳴らす母は自信満々に答えてくれそうで安心する。


「お母さんって、お父さんが帰ってくるときにコーヒー淹れるよね? この前、自分で買って飲んでみたけど、なにか違うの」


 自分でも、何が違うか上手く言葉にできない。


「ふふっ。それは多分、お豆さんが違うからよ? ちょっとおいで」


 ちょいちょいと手招きする母の手元を見る。


 あまり家で見かけたことのなかった機械。それにレバーのついた木製の容器が一つ。


「うちではコーヒーは飲む前に挽いてるんだよ? 知らなかったでしょ?」


「それだけ?」


「そうよ~。多分、和栞が飲んだコーヒーはインスタントコーヒーでしょ?」


「うん。粉を入れてお湯で溶かすの」


「忙しいときは簡単に作れて助かるけどね? お父さんが帰ってくるときは、このコーヒーミルで豆を挽いて、お湯で蒸らして、淹れるの。喜んでくれるから」


 母の目が優しい。


 両手でコーヒーミルを抱いている姿を見ると、大切に思っているのが伝わった。


 コーヒーもだけど、お父さんを。


◇◆◇◆


 母からの勧め。


 自分が想像していたより、機材はずっと手軽に手に入った。


 コーヒーメーカーは高価なものから、安価なものまで用途により沢山の種類があった。コーヒーミルは連休中に母から譲りうけたので、お湯を注いでくれる簡素なものを選んだ。


 ドリップだけしてくれるもの。


 ドリップって可愛い。ドリップ。


(これからよろしくね)


◇◆◇◆


 豆が手に入ったので早速、コーヒーを淹れてみる。


 手動でミルを回し、豆を挽く。


 まだお湯を注いでいないのにキッチンはコーヒー豆の香りで溢れる。


 あとは、この子が頑張ってくれる。


 頑張って、おいしくしてね。




 飲んでみた。

 苦い。

 今までで、一番苦い。


 勉強する前に作っていたインスタントの時、粉を入れすぎるとこんな味がする、かも。


 手順は確かに正しいはず。でも、失敗してるかも。


 でも、こっちの方が好みかも。


 まだ、お客さんには出せないな。


 難しいなぁ。


◇◆◇◆


 今日は伊織君が家にやってくる。


 朝、コーヒーが上手く淹れられたことが嬉しくって、メッセージした。


 呼び出しです、なんて迷惑じゃなかったかな?

 でも、喜んでくれるといいな。


 放課後、約束に間に合うように家に帰ってきた和栞は、伊織が来るまでの間にコーヒー豆を挽いておく。


 お客さんに秘密で出したい。

 お客さんが来るまでに秘密で準備する。


(おいしくなれ、おいしくなれ。ガリガリ。)


 準備の時間でさえ、想いを馳せて、楽しめた。


 今日から、タンブラー使ってみようかな。


 安売りしてたけど、青色と桃色のペアだって。




 なんだか、ちょっと……恥ずかしいなぁ――


ブックマークと評価をお待ちしております!皆様の応援で、ランクインを目指しています。

声援は執筆の励みになります!コメントも歓迎です。


本作初のヒロイン視点のお話をお届けしました。

ストック投稿中の本編とは別に、実は最近になって加筆した一幕です。二人の日常は弊方も見守る派ですので、ゆっくり過去話も読み返してもらえると嬉しいです。

次回 8/24 8:00 更新予定です。

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