表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/9

最後の噂

−−朝だ。


 今日は朝から昼過ぎまで、商業施設に入っているコスメ店のバイトだ。


 横を見るとまだ同居人は寝ている。


 相変わらず呑気なやつだ。


 バイトが終わったら、この施設のフードコートで一緒に昼ご飯を食べる約束をしていた。


 冷蔵庫のスムージーを飲み干し、顔を洗って化粧水を塗る。


 いつもの朝だ。




 店は正直、暇だった。


 明日発売の新商品があるから、什器を組み立ててテスターを並べる。


 あとは午後番に引き継ぐだけ。


 平日の午前中なんてそんなものだ。




 昼過ぎ、バイトが終わってLINEを送ると、同居人はもうフードコートにいるらしい。


 待ち合わせ場所に行くと、スマホに夢中になっていた。


「お疲れ。何食べる?」


 フードコートを一周して、石焼ハンバーグに決めた。


 前から美味しそうな匂いが気になっていた店だ。


 注文してアラームを受け取り、席に座る。


 すると同居人が言った。


「待ってる間さ、面白い記事見つけた」


 嫌な予感がした。


「ここの心霊スポット特集」


「ここって、この施設?」


「そう。昔火葬場だったらしい」


 ニヤニヤしながら写真を見せてくる。


 施設をつなぐ橋。


 施設近くの人工湖。


 映画館のトイレ。


 ゲーセンのプリクラ。


 そしてフードコート。


「夜中に清掃員が上半身だけの男を見たんだって」


 指で席を指す。


「その席、」


「ここなの?」


「って噂」


 正直、気味が悪い。


「あともう一つあってさ、さっきそこの写真撮ってきたやつで…」


 画面をスライドする。


 通路の写真。


「やめてよ。もういい」


 その瞬間。


 ビービービー。


 アラームが鳴った。


 ハンバーグが出来たらしい。


 それで同居人の怪談話は終わった。


 ハンバーグは美味しかった。


 本当に美味しかった。


 あの話さえ聞かなければ、また来るのに。


 そう思いながらその日は家へと帰った。




 翌日。


 私は遅番だった。


 新商品が好調で、閉店間際まで接客が続く。


 店を出たのは九時半過ぎ。


 施設の通路には誰も歩いていない。


 駅へ向かって歩いていると−−


 後ろから声がした。


「ねぇ」


 子どもの声。


「なんで僕のことは聞いてくれないの?」


 背中が凍る。


 振り返る。


 誰もいない。


 その瞬間、思い出した。


 同居人が最後に見せようとしていた写真。


 通路の写真。


 ここだったのだ。


 私は走った。




 家に帰ると同居人が言った。


「おかえり」


 息を整えながら言う。


「昨日のやつ……最後の話」


「ああ、あそこの通路?」


 スマホを操作する。


「男の子に話しかけられるけど、振り返ると誰もいないってやつ」


 突然声を上げた。


「うぇっ」


「どうしたの」


 スマホをこちらに向ける。


 昨日撮った通路の写真。


 奥に。


 白い男の子が、こちらを見て微笑んでいる。


「写ってるじゃん……」


 同居人が言う。


「これ、昨日は写ってなかったのに」


 そう言って写真を拡大した。


 その瞬間。


 同居人の手が止まった。


「……あれ?」


「どうしたの」


「これ」


 画面を指差す。


「この写真さ」


「なんで」


「撮った覚えのない位置から撮れてるんだ?」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ