欲望の果て
誰もいない廊下に立ち、俺は荒い息遣いで女子トイレのドアを見つめていた。
「もう、我慢できない!」
苦悩したが限界だ。欲望を抑えきれない!
左右に目を遣り、近づいてくる足音や声がない事を確認した。ここは二階だ。窓の外から目撃される心配は無い。
音を立てないよう注意しながら、ドアを押し開け踏み込んだ。
男子トイレと大差ない広さ。特に華やかな雰囲気などは無い無機質な空間。
体育館が集められた棟の女子トイレ。バレーボール部やバスケットボールボールにバドミントン部女子部員の、汗を流し躍動する筋肉を意図せず思い浮かべてしまった・・・・・・
荒い息遣いまま、俺は一直線に手前の個室に突進した。
開いたドアの中には洋式便器と、ペーパーホルダーに白い蓋の開いたピンク色のプラスティック製汚物入れが一つ。中には何も入っていない。
「違う」
欲望と失望に誰かが入ってくる恐怖が混ざり、脚が震えてきた。あと個室は二つしかない。
次の個室を覗く。
「くそっ!!」
ここも空だ!最後の一つに希望を託す。
最後の個室を覗く。洋式便器の傍に置かれた汚物入れの蓋は開き、中に何かが入っているのが見えた。
「あった!あったぞ!」
興奮と歓喜が身を包む。このまま個室に籠りたいところだか、ここではリスクが高すぎる。
声に出さず、心中喝采を叫んだ俺は手を伸ばすと・・・・・
ペーパーホルダーからトイレットペーパーのロールをもぎ取り、一目散に廊下へ駆け出して並びに設けられた男子トイレに飛び込んだ。
女子トイレのドアは静かに押し開けたが、男子トイレのドアには肩から体当たりだ。
もはや欲望に猶予は無い。早く満たすのだ!
個室に飛び込んで、ドアを閉めるより先にズボンと下着を下ろし腰掛けた。
ドアを閉めたり施錠するのは、腰掛けても出来る!
急に襲われた腹痛からやっとの事で解放されながら、俺は考えていた。
「なぜ学校の男子トイレから、トイレットペーパーが消えてしまうのか」と。
女子トイレに侵入するリスク・恥・ロールを奪った事に対する罪の意識を抱けないまま、俺は欲望を満たしていた。