ルームメイトの次の寝言が気になる。
全寮制の高校に入学した俺は、一年間ルームメイトと部屋を共有することになった。
ルームメイトとは、同じゲームにハマっていたこともあってすぐに打ち解けられた。
消灯前に、ゲームでマルチプレイをしてから寝るのが俺達二人のルーチンだ。
そんなある日の夜。
今日は高難度のボス戦攻略だったんだけど、後少しのところで俺が倒されてしまい、ゲームオーバー。
また明日挑戦しよう、と再戦を誓ってから寝床に入ったのだが……
「(眠れない……)」
クリア出来なかった悔しさのせいか、なかなか寝付けない。
寝ようと思っても、「あぁすれば良かった」「こうすればまだいけた」と今日のボス戦のことばかり考えてしまう。
この反省を明日に活かそう、と思いながらもなんとか眠りにつこうとした時。
「国歌、斉唱……」
「……え?」
国歌斉唱!?
隣で寝ているはずのルームメイトが突然、国歌斉唱を号令した。
思わず振り返ってみれば、ルームメイトは目を閉じて緩やかに呼吸している――ちゃんと寝ている。
「(なんだ、寝言か)」
驚かすなよ、と内心でツッコミを入れていると。
「ぐふふふふふ、よいではないかよいではないか……」
「!?」
国歌斉唱を号令したと思ったら、急に悪代官になった!?
きっと、夢の中で悪代官に異世界転生したんだろうな、しかもコッテコテの。
「ここは俺に任せて、先に行け……」
設定変わった!?
しかも死亡フラグ立てちゃってるよ……多分百年くらい経ったら伝説になってそう。
「君との婚約を、破棄する、君を愛することは、ない……」
あ、また設定変わった。
次は婚約破棄、しかも「君を愛することはない」もセットだ。
「いえーい彼氏君、見てるー?今から君の彼女、NTRまーす……」
今度はNTR配信系DQNか……バリエーション豊富だな。
しかも妙にパリピってるのがまたウザい。ってかこれ、寝言だよな?
「数が多い方が勝つんじゃねぇ、戦いが強い方が勝つんだ……」
おっ、次はシリアスな戦記モノか。
なんだか次の寝言を言うのが楽しみになってきたな、ワクワクするぜ。
……
…………
………………
あれ?
おい、次の寝言はどうしたんだよ、気になって眠れないだろ。
………………
…………
……
結局、ルームメイトが次に発する寝言が気になり過ぎたせいで、明け方近くまで眠れなかった。
……あれ?そもそも最初、なんで眠れなかったんだっけ?