2
「はー……」
自分の家の部屋で布団にくるまって、落ち込んだ。
何やってんだろ、私。冬馬はずっと何も変わってないのに。冬馬は顔で人を判断する人間じゃないってわかってるのに。
だけど、それでもやっぱり、なんで私なんか? 他にもいいところなんてないのに。今日ああならなくても、不安で、どっちみち同じようなことをやらかしたよな。
何にしても、どうしよう……。いいタイミングだから、身を引こうかな。
それから数日間、あーだこーだと似た思考を巡らせた。
そして夜、寝た体勢からガバッと起き上がった。
やだ。やっぱり冬馬と別れたくない!
私は彼の住むアパートへ走っていった。
「冬馬……」
ゆっくりドアを開け、恐る恐る中をうかがうと、普通まだ眠る時間ではなかったが、ベッドで横になっている姿が目に入った。
私は静かに足を踏み入れ、いつものように片付けを始めた。今日は罪滅ぼしのような気持ちだった。
「ねえ」
その最中、今まで冬馬から聞いたことのない低い声をかけられた。
「え」
私はビクつきながら振り返った。
「それ、捨てちゃ駄目だって言ったよね?」
「え? ああ……」
私は、片手にゴミ袋、そしてもう一方の手に持っていたのはガムのボトルだった。
「ごめんなさい」
「ゴミじゃないってのは、感触でわかると思うけど」
「ああ」
確かに、中にまだ入っていた。
あれ? でも、ガムじゃないような……。
「いい使い道、思いついたんだ。それ、プレゼント。開けてごらん」
「プレゼント……?」
私は言われた通り、そのふたを開けた。
「え……」
そこには指輪が入っていた。小さいけれど宝石がついた、そこそこ値が張る感じのものだ。
「俺、実はこっそり別のバイトもやってたんだ、それを買うために。幸子を驚かせたかったからさ」
「……でも、なんで? 私、もうすぐ誕生日でも何でもないのに」
「誕生日間際なんかだとバレるだろ。それに、記念日とか俺そんなに気にしない。ちょっと前に指輪を目にする機会があって、幸子にあげたいなと思ったんだよ」
……。
「ごめんな、俺が気持ちを伝えないから、不安にさせちゃって。でも、あんまり好き好き言うほうが嘘くさくない?」
私が勝手に騒いだだけなのに、怠け者とか女たらしだなんて言ったのに……。
「指輪ありがとう。それに、こっちこそごめんなさい……グスッ」
「いいよ、いいよ。泣かないの。そうそう、この前言ったように、好きなのに理由なんてないけど、幸子のそういう感受性が強いとこ、俺好きかも。高校のとき、行事や何かで感動するようなことがあると、すぐそうやって泣いてたよね? 違うクラスだったけど、俺、何度か見てさ。可愛く見せるための涙じゃなくて、そうやって顔をクシャクシャにして。いいなって思った覚えがあるよ」
私の彼氏はだらしない。
だけど、最高な人だ。この人に嫌われないように、私は私らしく堂々と、そして魅力的になれるように一生懸命生きよう。
そう誓った。