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【32 昔話を明るくツッコむ】

・【32 昔話を明るくツッコむ】


「なのっ、実は菜乃、暗い青春時代を過ごしてきたの」

 いや

「急にそんな、どうしたんだよ、菜乃。ジメジメしたスタート切りすぎだろ」

「ううん、別にツッコまなくてもいいの、でも菜乃の昔話を聞いてほしいの、ダメ?」

 いや、まあ、

「とにかく菜乃は自分の意志で昔話を聞いてほしいということか、それなら別にいいけども、自分の意志なら」

「うん、自分が喋りたくて話すの。話を聞いて、時折相槌を打ってくれればいいの」

 そう言ってしっとりとした菜乃。

 いや、

「ゴメン、菜乃。俺、ツッコミの特訓中だからツッコむよ、めちゃくちゃツッコむよ」

「なの……そうしてほしいの……」

 少し瞳を潤ませながら、そう言った菜乃。

 これは悲しい話なのだろうか、いやでも俺はツッコんでやる。

 菜乃を絶対楽しませてやる、そう心に誓った。

「じゃあ話始めるの、菜乃の暗さ、オープンなの」

「いやでもスタートは底無しの明るさだな、オープンって陽の言葉だから、新装開店の言葉だから」

「誰がパチンコ屋なの」

「いや菜乃のツッコミは大丈夫だから、新装開店・イコール・パチンコ屋のJKはちょっと嫌だから」

 菜乃は一息ついてから、語り出した。

「菜乃はなかなか周りと馴染めなかったの、言うなれば良い香りのお花畑に置かれたクサいタバコのカスなの、菜乃は」

「タバコで自分を例えなくていいから、JKがパチンコ屋の次にタバコという語彙の連鎖、かなり嫌だから」

「明るく振る舞おうとしているだけなのに、無視されることもあって。菜乃、鼻眼鏡で登校したの、良くなかったのかな? ズレてたの?」

「それはもうすごいズレだね、そういうボケがウケるのは元々人気のある人だけだよ」

 菜乃は肩をすぼませながら、こう言った。

「実際菜乃は本当にズレているの。明るい挙手をしたくて、クラッカーを仕込んで鳴らしたらヒカれちゃったこともあるの」

「それはもう火薬の匂い含めて良くないね、明るい挙手は大きな声だけで十分だからね」

「そうなの、菜乃の学校で一時期火薬禁止令出たけども、それは菜乃のせいなの」

「まあ学校はそんな禁止令出さなくても、本来火薬禁止だろうけども」

 菜乃は一息ついてから、

「あと匂いで言えば、オナラ騒ぎの時、めちゃくちゃ騒いだらクラスのカースト一位の女子のオナラで、泣かれちゃって、すごいひんしゅくを買ったことがあるの」

「そうだね、めちゃくちゃ騒いでいいことなんてないからね、騒ぐという日本語は良い意味を持っていないからね」

「結局菜乃はカースト上位から無理やり授業中、オナラを三発させられたの」

「でもよく出せたね、それがアメージングだよ、サッカーなら三発快勝って言われるヤツだよ、三発って」

 菜乃は少し照れ臭そうに笑ってから、

「良い下剤があったの」

「いやオナラの音は口と腕で鳴らしなよ、そこのズレがすごいよ、下剤でガチのオナラ鳴らさなくても大丈夫だったよ、きっと」

「多分そうだったの……結果的にちょっと漏れたの……」

「もうそれはJKのトドメだね、JKのウンコ漏れた話は何だかよく分からないけどもトドメだね」

 菜乃は唇を噛んでから、

「だから中学時代は大変だったの」

「いや女子中学生のオナラ騒ぎはかなりダメだよ、小学生の話だと思っていただけに目を丸くしたよ」

「中学生じゃないと下剤なんて買えないの」

「いやまあ中学生もまだ下剤に頼る年齢じゃないけどもね、きっとお父さんの下剤だと思って薬剤師も売ったと思うよ」

 菜乃は少し上のほうを見て、

「そうだったのかなぁ、菜乃の顔見てあの薬剤師は”超下剤”だと思ったんじゃないのかなぁ」

「菜乃は全然下剤顔じゃないよ、普通に可愛いよ」

「菜乃、普通に可愛いと言われちゃったの……嬉しいの……」

「だから鼻眼鏡なんて必要無いよ、菜乃は笑顔を見せてくれるだけでいいんだよ」

 フフッと笑ってから菜乃は俺のほうをしっかり見ながら、こう言った。

「菜乃……ズレている菜乃と一緒にいてくれる? ずっと一緒にいてくれるの……?」

「大丈夫、俺の人生はもっとズレ始めたから。何なら菜乃のズレと俺のズレがちょうどいい方向に噛み合って、最高の形になるかもな」「最高の形って何なの……?」

「まあ普通に考えて一ミリのズレも無い、完璧な曲線のハートマークじゃないか?」

 と言ったところでシューカが俺と菜乃の間に物理的に割って入ってきて、

「このままキスするヤツやん! もうアカン! 止めさせてもらうわ!」

 いや

「キスはしないわ、こんなオヤヤッサンのいるところでしないわ、この人、怖いもん」

 するとオヤヤッサンがデカい声で、

「でもオヤヤッサンのおかげで怪奇が出てないでぇい! オヤヤッサンは基本的に怪奇から嫌われているでぇい!」

 いや!

「やっぱりそうなんかい! 薄々感じていたけども!」

「そして悟志少年は怪奇から好かれているでぇい、アツアツでぇい」

「いや俺は菜乃からだけ好かれたいんだよ!」

 とツッコんだところで、菜乃は顔を真っ赤にしながら、

「なの……恥ずかしいの……」

 と言ったが、それに対してすぐさまシューカが、

「今さらやねん! ずっとハズいねん! 自分ら!」

 そんな感じで俺たち四人は喋り合った。

 正直楽しかった。

 もし全放映状態を手にし、ツッコミの練習をしなくても良くなったとしても、またこの四人で集まってワイワイ遊びたいなとは思った。


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