【28 遼子】
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・【28 遼子】
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家の前に着くと、そこには遼子がいた。
俺を見るなり、怒鳴り声を上げてきた。
「ハイ、クソのリア充! 死ね!」
「死ねって、単刀直入過ぎるだろ、というか俺はオマエにそんなこと言われる筋合いはない」
「アンタが好きな子って私じゃないんだっ? すぐに彼女作っちゃってさ! キモっ!」
「いやだって遼子は俺の彼女になんないだろ」
俺は遼子の前を素通りして、そのまま家へ入ろうとすると、遼子が俺の首根っこを掴んできた。
首根っこ掴むの、みんな好きだな。
「そりゃアンタの彼女にはなんないし! でも断らせなさい! ゴメンナサイ! キモイ男子は無理なんで!」
俺は遼子の手を払って、ある程度は睨みながらこう言った。
「もう好き勝手言えばいいさ、俺も勝手に生きるから」
遼子はそれ以上俺に対して、何か言ってくることは無かった。
そのまま黙りこくって、歯をギリギリ言わせているようだった。
何が悔しいんだ?
俺のほうが悔しいよ。
信じていた幼馴染に、あんな裏切られ方したんだから。
家に着くと、すぐさまチャイムが鳴った。
ヤバイ連中が訪問してきたのか、いやヤバイ連中ならチャイムを鳴らさないか、じゃあ単純に変わった人か、と思いながら一応玄関のドアを開けると、そこには遼子が立っていた。
「未練は無いのかよ! 私に未練は無いのかよ!」
何だよコイツと思った。
あぁ、そういうことも全部言わないといけないわけね。
「無いよ、一切無い、俺もオマエのこと嫌いだから大丈夫」
「何でよ! 私がアンタを嫌う道理は合ってもアンタが私を嫌う道理は無いだろ!」
「その言葉をそのままそっくりオマエに言ってあげるよ」
「私はあるよ! だってアンタのオカズになってオナニーされていたんだから!」
何だよ、ハッキリそういうこと言うなよ、鬱になるだろ。
でも事実だしな、まあじゃあこうしよう。
「そのあとの言われようがあったら嫌いになるに決まっているだろ」
「ドMであれよ! それもオカズにしてもいいぞ! 別に!」
「どう思われたいんだよ、全然訳分かんねぇよ、もう帰れ、つまんない、オマエはずっと滑ってる」
「そういうイジリやめろよ! つまんないとか滑ってるとかそういうの一番良くないからな!」
何が一番良くないだよ、どう考えても、どう考えても。
「こんな話をしに来るヤツが一番良くないだろ!」
「何だよ! すぐに彼女作って! キモイヤツがリア充になんなよ! クソ!」
「……何だよオマエ、もしかすると嫉妬してんの? いやでも何に嫉妬してんの?」
と俺が言ったその時だった。
すぐさま遼子から玄関のドアを閉め、ドア越しにデカい声で、
「何も嫉妬してねぇよ! クソ! 死ね! 死ね! 死ねぇぇえええええええええ!」
と叫んできた。
いやまあ閉まったならもういいやと思って、すぐさま鍵を締めると、
「鍵の音聞かせてんじゃねぇよ!」
という声と、玄関のドアを蹴る音が聞こえてきた。
いや勝手に聞いたのはオマエだろ、と思いつつ、俺は自分の部屋へ戻って行った。