幽霊ちゃんと私
真夜中は好き。
うだるような昼間の熱さもようやくおさまり、窓を開けると涼しい風が、部屋の中を通り抜ける。
こんな時間はビールでも飲みながらホラー小説を読むのが、熱さに対する、私の処世術だ。
それに明日は休日だし。夜更かししても、バチは当たらないでしょ。
そうこうしてるうちに、いい感じに酔ってきて、字も追えなくなってきた。
……しょうがない。そろそろ寝るか。
そう思い、本を置いてベッドに入ろうとしたとき。
部屋の隅に何かが……いや、誰かが立ってるのに気づいた。
酔った頭で、それに近づいていく。……髪の長い、女の人だった。
──これは、ひょっとして。
「……う~ら~め、し」
「きゃー! うらめしやだってー!」
相手のセリフを遮って、きゃあきゃあ騒ぐ。
いやー、一生に一度は聞いてみたいセリフのベストテンに入るね、うらめしやなんて!
「え、あ、あの……」
私が怖がらないことに面食らったのか、幽霊? さんは戸惑っている。
「ねえねえ、あなた名前は? 何でウチに来たの? それから──」
「ま、待って下さい! あなた、私が怖くないんですか⁉」
「祟られるようなことしたことないもん! それより折角だし、あなたともっと話がしたいよ。ね、いいでしょ⁉」
「え、えぇ、まぁ……」
幽霊? さん……じゃなくて、幽霊ちゃんは、よく見ると美人だった。
女の子が好きな私としては、正直タイプだ。色も白いし。
いや、幽霊なんだし、それは当然か。
「とにかく自己紹介! 私はね──」
まだ、深夜二時。
幽霊ちゃんと話す時間は、まだまだありそうだった。