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鳥になる
僕は鳥になっていた。
──これは夢だ。そんなのは、わかっている。
けれども日々、仕事や家庭などの雑事に追われている身としては、悪くない夢だ。
こうして何事にも縛られず、大空を自由に飛び回れるというのは。
滑空飛行やら、ジグザグ飛行、のんびり優雅に風に身を任す、などと鳥ならではの楽しみを満喫した僕は、電柱に止まり、疲れを癒していた。
と、そこに。
「う、うわああぁっ‼」
……目が覚めた。
鷹に捕らえられ、喰われる寸前に。
──やれやれ。夢で良かった。
「何なの、朝っぱらから⁉ せっかくお互い休日なんだから、今日はゆっくりしようって言ってたじゃない! 大体、あなたときたら──」
いつもの、妻のお小言が始まった。
全く。鳥でも人間の身でも、楽しいだけの人生というものは、ないらしい。