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92話 物騒なお金稼ぎ

 「前方に小規模な艦隊を発見。数は五隻」

 「ちゃっちゃと狩りますか」


 メリアが収監されて身動きできない間、ファーナとルニウは宇宙の各地で暴れていた。

 期間としては短いものの海賊として活動していたこともあって、どこに海賊が潜んでいるのか、どのような場所を拠点としているのか、そういった知識を利用して他の海賊を積極的に襲撃していた。


 「では、いつものように無人戦闘機で推進機関を破壊するので、ルニウは人型の作業用機械で砲台などを無力化してください」

 「沈めたらお金にならないからねー。できる限り無傷で奪ってこそ、お金に引き換えられる」


 海賊を襲撃する際の手順は、まず目的となる星系内に到着したあと、大型船のアルケミアは目立って警戒されるため、あえて小型船で仕掛ける。

 利用するのはヒューケラとオプンティアを半々の割合で。

 お供として、無人戦闘機をいくらか同行させつつ。


 「さてと、ファーナは仕事が早いから、こっちも急がないと」


 人工知能たるファーナによって操られる無人戦闘機。

 それは海賊が迎撃しようとしても、予想できない機動を行うせいで一方的に翻弄されるだけ。

 ルニウが作業用機械で貨物室から出る頃には、海賊の艦隊はすべて推進機関を破壊され、宇宙を漂うだけとなる。

 それでも降伏するつもりはないのか、無傷な砲台からビームが放たれるも、ルニウが丁寧に一つ一つ破壊していくと、諦めたのか通信が入ってくる。


 「……降参する」

 「それじゃ、全員一つの船に移って」


 五隻のうち、一隻だけに船員を集めたあと、残る四隻はファーナの操作する端末とロボットが船同士を繋ぎ、牽引できるようにしてからアルケミアへと運ぶ。

 白い髪をした少女姿の端末は、宇宙船と比べれば場所を取らないため、こうしてまとめて複数を動かすのは、それだけ急いでいることの証左でもあった。


 「安心して。殺しはしない。警察に引き渡すだけ。死刑になるほど悪事を働いてないことを願ってる」

 「ふん、同類のくせによく言うよ」


 ルニウと通信越しに会話する海賊は、どこか吐き捨てるように言う。

 あとは、船ごと警察に引き渡すのだが、これについては適当な宇宙港の近くに置いていくだけで済ませる。

 数時間も漂っていれば、異常に気づいた者が通報するからだ。


 「さーて、次はどう換金するかだけど」

 「それについてはルニウに任せます。わたしでは怪しまれ、場合によっては舐められるので」


 推進機関や砲台部分以外はほぼ無傷な宇宙船を四隻。

 これを換金するとなると、表の世界では足がつくため、どうしても裏の方で処分することになる。

 そうなると、人工知能たるファーナでは難しい場面が出てきてしまう。

 人型をした端末を使って交渉したところで、あまりにも怪しいので取引が成立しないのだ。

 なので、生身の肉体を持った人間であるルニウの大きな出番となる。


 「へーい。ちょっと引き取ってもらいたいものがある」

 「……通信越しでは信用ならん。直接来い」


 各国の様々な場所に存在する、海賊が利用する宇宙港。

 公的には認められていないそこでは、どんな代物であろうとお金に引き換えられる。

 ルニウは宇宙港に入って業者と取引を行うのだが、向けられる視線は決して良いものではない。


 「ちょっと傷んでるけど、普通に動く小型の宇宙船四隻」

 「どこで手に入れたかは問わないがな、噂になってるからしばらく取引を避けたいんだがね」

 「噂って?」

 「水色の髪と目をした女が、海賊を次々と襲撃をしては色々と奪っていく」

 「ほほほー、私も有名になったもんだ」


 噂になったと聞いてルニウは喜ぶ。

 何者でもない状態から、少し抜け出せたために。


 「だから次からは、お前さんが何か持ってきても引き取らない。別の場所を当たってくれ」

 「いやいやいや、こういうところでもないと、まとまったお金にならないでしょ。表の方じゃ、面倒な手続きに安い金額なんだし」

 「あまりお前さんと取引してると、他との取引が駄目になる。ほら、見積もりはこれくらいだ」

 「……もうちょい増やしてくれない?」

 「推進機関や砲台も無傷だったならな」

 「むむむ……仕方ないか」


 提示された金額はやや物足りないものであるが、破壊してしまった部分はどうしようもないので、渋々ながらも受け入れた。

 そして小型船に戻り、そのままアルケミアへ。


 「今回の稼ぎはどのくらい?」

 「まだまだです。やっと桁が一つ増えた程度。このペースだと、三年はかかりますね」

 「あー、三年か。さすがにそれだけ続けてたら、警戒もされて効率は悪くなるし、並行して稼げる手段を探すべきかな」


 海賊稼業というのは、普通に働くよりは稼げるものの、それでも資産家などには及ばない。

 監獄惑星タルタロスから、メリアを出すためには膨大な金額が必要。

 だが、一般人ができる範囲ではできることに限りがある。


 「そうだ。稼いだお金を投資に使うのはどう?」

 「短期間ではこれといった成果を出すのは難しいです。長期間するなら稼げますが、メリア様が出てくる方が早いです」

 「そうなると、もう一つの手段としては、ソフィアという帝国の公爵に助けを求めるってのも手かな」

 「それは……」


 ソフィア・フォン・アスカニア。

 元々は伯爵であったが、公爵位を相続することになった少女。

 叔父であるエルマーに命を狙われるも、彼女のことをメリアと共に送り届けたことから、ファーナとしてはとても印象深い人物。

 助けた恩があるので、助けを求めればほぼ確実に手を貸してくれるだろう。


 「確かにそれもいいでしょう。活動の場所を変えるついでに、彼女のところに向かいます」

 「これで解決、はさすがに気が早いか」


 今いるのは共和国の保有する星系の一つ。

 定期的に場所を変えることで、海賊相手に好き勝手に稼いでいるわけだ。

 次の方針が決まったあと、帝国へと移動するのだが、途中で海賊を見つけたので襲撃をする。

 しかし、その海賊は一切の迎撃をせず早々に降伏すると、通信をしてきた。


 「待った待った。こちらの負けでいい。攻撃はやめてくれ」

 「ずいぶんと殊勝なことだけど、貰うものは貰うから」

 「ふーむ。代わりに情報で手打ちにしないかい? 水色の髪をした襲撃者さんよ。節操のない各地での襲撃は耳に入ってる。それすなわち、即金が必要であるわけだ」

 「わざわざそんなことを言うってことは、お金儲けの話をしてくれるってこと?」


 襲われて色々と奪われるよりは、それを防ぐために儲け話をするというのは、いくらか理解できる。

 そのため、ファーナは攻撃を中断し、ルニウは通信越しにさらに尋ねた。


 「正直言ってどれだけ儲かるかはわからない」

 「ふーん」

 「待て待て待て。戦闘機を動かすな。話は最後まで聞くべきだ」

 「なら続きをどうぞ」

 「俺たちは色んな惑星に行って、価値の出そうなガラクタを物好きに売るという仕事をしている。まあ、たまに強奪する時もあるが」

 「早く本題に移って」

 「急かすな。それでちょいと目をつけたところがある。帝国のタルタロスって惑星だ。そこには、大昔のお偉いさんの財宝とかが眠ってるらしくてな」


 極寒の惑星たるタルタロス。

 そこには大昔、帝国の皇帝が訪れたことがあった。

 どういう目的かは不明なものの、重要なのは皇帝が様々なアクセサリーを持ち込んでいたということ。

 急いでいたのかアクセサリーを輸送するために航空機を使用したものの、吹雪のせいか墜落してしまい、当時の皇帝は回収させるよりも新しく作らせる方を選んだ。

 そのため、今でも地表のどこかに、皇帝が利用するようなアクセサリーが眠っているという説明がなされた。


 「うーん……タルタロスって監獄惑星とか呼ばれてるし、気軽に行けるものなの?」

 「あそこの長官殿とは、ある程度の話をつけてある。業者に扮することで、安全に地表を調べることができるってわけだ」

 「どれくらい儲かりそう?」

 「大昔の皇帝が利用するような代物だ。今では作られてない骨董品ともなれば、宇宙船の一つや二つは余裕だろう。なんなら、資源衛星もいけるかもしれん。もしかすると、小銭程度にしかならない可能性もある」

 「……とりあえず、その話には乗ってみる」

 「そうかい。それはよかった」


 命拾いしたことで安堵する海賊であり、通信は一度切れる。


 「いいのですか?」

 「儲け話ついでに、メリアさんに何か差し入れでもしようかなって。ちなみに、ファーナにはソフィアという公爵様に助けを求めることと、今まで通りに海賊への襲撃をやってほしい。アルケミアには大量に入るでしょ? 定期的に私は戻るから、その時にまとめて売る感じで」

 「わかりました。怪しげな儲け話とはいえ、こちらに損はありません。とはいえ、いざという時がある可能性に備えて、わたしの動かす端末を同行させます」

 「便利だよね。実質的に、一つの意思と複数の肉体なわけだから。同時に色々できる」


 話が済んだあとは、アルケミアと小型船で二手に別れた。

 片方は襲撃と救援を求めるため。

 もう片方は、怪しげな儲け話への協力。そのついでにメリアに会うことも含まれている。

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