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止まった世界であなたと  作者: 遠藤まめ
第一章 止まった世界の生き方
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作戦会議

「すずさん…?どこ!?」


万夏が荒い息を忘れて叫ぶ。冬馬もまたその現実に肩を落とし絶望する─


「もういいかな。すず!出てきて大丈夫だよ!暗号は『大天狗伝説はうちわのうら』だ!!」


ことはなく、意味不明なことを言い出した。ついに乱心したか。そう万夏も思ってしまうほどだった。


「この言葉も案外捨てたもんじゃないねぇ。おかえり!」


すずは日菜乃の家の倉庫から当たり前のように出てきていた。


「!?なんですずさんがそこに…?」


それを見た万夏は理解できず状況を飲み込むことに必死になる。


「逃げるって言ってもそんな日菜乃さんの家の前でぼーっと立たせる訳にはいかないよ。あいつの仲間がいるかも知れないからね」


冬馬が万夏の疑問に答える。それは真っ当といえば真っ当であったが疑問が完全に解消されたというわけではない。


「でもいつそんなことを話したの?合言葉の内容も気になるけどさ…」


「万夏が日菜乃さんの家で探してるときにさ、これからどこか行くのは確定していたし、万が一逃げることがあったときに真っ先にお互いの頭に浮かぶ場所をここにしようって。でも外にいるのは危険でしょ?それで簡易的な避難所にここを選んだんだ。勝手に使ってごめん」


「そこまで…冬馬って結構頭の回転早い?」


「すずのときだけだよ。身の危険があってからじゃ頭なんてろくに働かないからね」


恥ずかしげもなくすずのために動いていると言わんばかりのことを話す冬馬に万夏は羨ましくもあり自責の念が募っていくところであった。自分ももっと日菜乃のことを考えなくては…


「それと合言葉の意味はね、僕らもわかんないんだ」


「地元の言い伝え?みたいなものでさ。私もトーマも…てか住んでる人で知らない人はいないってくらいの言葉なんだ。まぁなにを言ってるのかわかってないから需要とかなかったんだけどね」


「だからこそ合言葉にぴったりだったってわけ」


すずと冬馬が息を合わせて説明する。


「へぇ…なんか面白いね。ここらへんで言い伝えなんてろくにないから」


「いやいやUFO落っこちてきてそれはないって」


すずが思わず万夏の言葉にツッコミを入れる。


「まぁそれはそうと…」


冬馬が話題を別のものへと置く。その話題についてはすべての人が理解しているだろう。


「日菜乃さん、いたよ」


「「!!!」」


二人はその言葉に目を輝かせて驚いた。万夏はよほど嬉しかったのか口が自然と緩んでいた。


「さっき、あいつと戦ったときに見たんだ。奥の方にいたよ」


「あぁ…よかった。だからあの時冬馬の動きが止まってたんだね」


先程の冬馬らしくない隙の理由が分かり完全に安心できたかと言われればそうではない。日菜乃が見つかったとすれば大きな疑問が一つ残るのだ。


「あれ?でもなんで日菜乃はついてこなかったんだ…?」


その疑問に冬馬は答えることなくうつむいているだけだった。それはほぼ答えたようなものであるのだが。


「そっか…止まってたんだね…」


動いていれば普通助けが来たとついてくるはずである。万夏の声も聞こえているためなおさら。しかしついてこなかった。ともに逃げることがなかったということは時が止まっていたとしか言いようがないのだ。


「……?ちょっとまって。じゃあなんで日菜乃さんは秘密基地にいたの…?」


しかしすずの言葉により流れは変わった。


「たしかに……日菜乃がすきであんなホコリまみれの場所に行くとは思えないし…」


「……ついさっきまで動いていたけど何者かによって止められた…?」


冬馬の仮説は衝撃を呼ぶものだった。つまりはあの事態になった瞬間止まったわけではなく、秘密基地に避難した後に何者かによって日菜乃の時も止められてしまった、ということになる。その何者かの正体の予想はやはり


「アイツが止めたってことか…」


もしかしたらすべての元凶はあの『何か』によるものなのかもしれない。


「よし、日菜乃さん救出作戦だ。ヤツを倒せば何か変わるかもだし。こうなったら徹底的に助けに行こう」


全てにおいてわからないこの完全に不利な状態で日菜乃の救出を決行すべく作戦会議が始まったのだった。


「まず前提としてヤツには物理攻撃が効かない。さっき横っ腹を殴ったけど反応もないし感覚もなかった。ホコリや反射した光に気が行ってたから目はあるのかもね」


「となると閃光弾みたいな何かがほしいな。何かあったときに逃げられる手段になる。日菜乃の救出もそうだけどみんなの命が最優先だ。」 


「んー…いずれにしても攻撃ができないのはだいぶ痛いよね…。今回の目的はアイツを倒すことでしょ?」


本格的に対策をこうじようとするも根本的なところが解決していないため進まない。


「うーん…どうにか攻撃が通ればなにか変わるかもしれないけど…」


当然ではあるが相手は科学的な説明のつかない未知の相手。まして一発でもくらえば死ぬかもしれないのだ。慎重に確定で倒せるものがなくてはならない。


よく考えろ僕…。なにか大切な部分を見落としてないか、すべてを疑って考えろ…


いくらさっき戦ったとはいえパッと思いつくことは難しい。何か見落としている部分をほんの僅かでもくだらなくてもすくい取ろうとする。なぜ相手は上から来た?なぜ冬馬たちを攻撃してきたのか。なぜあのとき冬馬の顔面めがけて殴ってきたのか─


「それだ!!」


そのとき冬馬の中でとある疑問を説明させてしまう仮説が、ほぼ答えのようなものが一つだけ見つかった。


「やつは()()()()()攻撃が効かないんだ!」


こいつは何を言っているのか、そう言わんばかりの表情を二人は冬馬に向けていた。それもそうだろう、すぐに納得できる答えではない。


「と、トーマ。どういうこと?」


「これは簡単な話だったんだ。アイツが上から来た時地面にぶつかってドーンってなったでしょ?でも僕が殴ったときには触れた感覚すらなかった。それはつまり物体での攻撃は通るってことだよ!」


「たしかに!俺が人形を投げたときもぶつかってたね!」


万夏もその仮説に納得をする。すずもわかったような顔をして


「ってことは剣とかでやっつけるってこと?」


とすこし飛躍しながらも的確なことを言った。


「まぁ剣はぱっと出せないけど金属バットか鉄パイプかそんな感じなら行けるかもね。あとはなるべく肌を出さずに適当な物で防護しよう」


その瞬間、三人にとって最低限の対策を決定できた。攻撃が通るかわからない相手、あくまで仮説に過ぎない一発勝負。一世一代の大ギャンブル。日菜乃を奪還するため、救うための作戦が定まっていったのだった。


「バットなら近所の子が何個か持ってた気がする。防護服は僕の家からそれっぽいもの持ってくる」


「バットはその子から借りるとして防護服はなるべく厚めなのをお願い」


「あ、もしあればガーゼとかハンカチみたいな布も欲しいかも。私なりに出来ることがあればしたいからさ」


「わかった。厚めの服とガーゼやハンカチね。すぐ持ってくる」


「よし。じゃあ後でここに集合しよう」


そうして各々による武器・防具調達などがスタートし本格的に作戦決行へと準備を始めるのだった。

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