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止まった世界であなたと  作者: 遠藤まめ
第一章 止まった世界の生き方
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仲違い

「へ?」


「だから時をうご…」


「い、いやちょっと!ちょっと待って…?」


冬馬の突然の発言に戸惑いを隠せない万夏と日菜乃は目を見開いて二人を見つめる。当然冬馬とすずの表情には迷いのない覚悟が見てわかっていた。


「な、なんでか聞いても良いですか?」


日菜乃が冷静を装いながら冬馬に聞く。冬馬は表情を変えることなく続ける。


「自分勝手な理由だよ」


そう一言で言い終わらせた。日菜乃は追及することができず黙る。


「本当にどうしたの?冬馬らしくないよ…」


「僕はこういう人間だよ。最初っからね」


きっぱりと言い切る冬馬と事情が分からず戸惑う万夏と日菜乃。


「でもこのまま止まった世界にしておくのは良くないよ。止まったみんなを助けなきゃ…!」


「それだよ。今後の方針を決めたときから思いが違ってたのかもね」


冬馬は少し微笑むようにして話す。


「僕たちは元の世界で幸せに暮らせない。この止まった世界を自分勝手に満喫したいんだ。万夏たちも楽しもうよ」


「そんなのいいわけないよ…!」


冬馬は万夏が迷っているのを察する。その隙をうまく利用しようとする。


「でも恋人と二人きりでずっといられるんだよ?」


「それはっ…」


「ほらね、結局自分勝手になっちゃうんだよ。ね、このままを楽しもう?」


「………」


とうとう万夏は黙り込む。その沈黙に冬馬は安心感を覚える。


「そうだ!4人でダブルデートでもしようよ!せっかく仲良くなったんだしさ」


冬馬はすでにこの止まった世界を満喫しようと新たな提案を始める。万夏は未だ黙り込み、うつむいたままである。


「そうとなればちょっと秘密基地で準備してるね」


そういうとすずと共に秘密基地へと歩き出す─


「……これはどういうつもり?」


─ことを万夏は許さなかった。冬馬の手首を万夏が力強く握っていた。その力は凄まじく、引き離すことができない。


「……だめだ。やっぱりそんなのはだめだ」


そう言うと万夏の力はなお強くなっていく。その痛みと予想外の展開に冬馬は苛立っていく。


「あっそ。離してよ」


「そう簡単に離すわけにも行かないでしょ」


お互いの目には闘志が宿る。その気迫とただならぬ予感にすずと日菜乃は仲介に入ろうとする。


「ま、まぁまぁ。ちょっとトーマも熱くなりすぎだよ」


「そうだよ万夏もちょっと落ち着いて…」


その声を聞き万夏の力が緩む。すかさず冬馬はそれを振りほどく。重たく殴り合いをはじめてもおかしくないような空気で包まれる。しかし殴り合いが始まることなどなくその場は終わった。



「トーマもちょっとやり過ぎ!もっと穏便にすませてよ」


「ごめんごめん。ちょっと熱くなりすぎちゃった」


その後、秘密基地入口付近の外で二人は話をしていた。


「私は口論をしてほしくてトーマにあんな事を言ったんじゃないんだよ!」


「それは…」


「言い訳無用!」


「はーい…」


すずに長々と説教を食らい冬馬も反論せずにいた。しばらくして怒り疲れたのか眠りについたすずを確認した冬馬は秘密基地内にお姫様抱っこで運び、薄汚れた毛布を掛ける。その寝顔に愛おしさを思いつつまた外へ歩き出す。



空の景色も変わらず夕日に照らされていて眠気も来なくなる。秘密基地の敷地を出て一人の散歩をし始めようとすると


「殺すタイミングでも伺ってんの?」


奥にいる“人間”に話しかける。能力の開花に伴い自然と発達した感覚や身体能力がその存在を示していた。その場合付近で動いている人間なんて


「バレちゃったか…」


万夏しかいないものではあるが。笑みを見せる万夏に冷たく冬馬は見つめる。


「なんのつもり?」


「さっきは日菜乃たちが近くにいて中途半端に終わっちゃったからね」


「殴り合いでも始めようってか?」


そういったのは他でもないゲニウスだった。


「さっきまでどこにいたんだ?」


「ずーっとここにいたぜ?オマエらの喧嘩も見てた」


「ゲニウスからも言ってくれよ。冬馬がこのまま止まった世界でいようなんて…」


「ん?なんか勘違いしてるみてーだがオレが主である冬馬の主張を否定するわけないだろ」


そう万夏の言葉を冷たく一蹴し続ける。


「第一止まった世界でいようってことの何が悪い?別に戻す必要なんてね―だろ。それにこの世界のほうがオレたちも生きやすいしな」


「そんなこといったって…」


口ごもる万夏にゲニウスはため息をつき口を開く。


「ま、これを言うと冬馬に対する口答えになっちまうが勝手に助けといて今度は急に止まった世界で生きていきますなんてホントに自分勝手だよな」


ゲニウスはやれやれと言いながら腕を組む。


「そんなことはわかってる。それでも僕はすずと…」


「もうめんどくせーし喧嘩しちまえよ。殴り合って分かる気持ちってのもあんじゃね―の?」


ゲニウスは面倒くさそうにそう言う。その突然さと言葉の内容に二人は驚く。


「いや、さっきまでバチバチだったくせに何今さらビビってんの。あーだこーだ言ったところでいつまで経っても解決には向かわねーぞ。ならぶん殴ってお互いにその意志の固さを見せつけ合えよ。まさか殴り合う勇気はないけど望むだけ望みますなんて適当言わねぇだろ?」


ゲニウスは二人を嘲笑するように話す。二人の拳に力は入るもののお互いに助け合って止まった世界で生き抜いてきた身、その力を振るうまでには行かなかった。


「そーゆーこった。オマエらは所詮口でしか語れねーってんだ。行動で示せよ行動で」


ゲニウスは不機嫌にそういうとその場を後にした。


残された二人は沈黙の中夕日に照らされやがて一言も話すことなく秘密基地へと歩いていったのだった。


静かな寝息を立てるすずを見つめる。安心しきり、よくわからない寝言を言いながら寝ているすずに愛らしさを覚える。

冬馬はこの安らかな表情を守る決意を固めすずの隣で横になった。

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